番外編??+5:都合の良い4人
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彼を少しでも信用しようと思った私が馬鹿だった。サム・アレキサンダーは底抜けに明るく、根拠は無くとも彼の発言に救われることが幾度かあった。が、態度も軽ければ口も軽い。結局は、夢主にとって都合の悪いことの方が多いかもしれない。
急に飛び出してきてしまったため手持ちが無い彼女は、ただフラフラと道の端を歩き続けていた。ふと空を見上げれば爽やかな朝日は何処へやら、既に片方の空はどんよりとした紺色に染まりつつある。
「あ、れ……ここって…」
人通りのない住宅街。偶然にも夢主は、かつて悪党の手に落ちたあの場所まで来てしまっていた。
「久し振りだな」
どこか聞き覚えのある声に振り向くと、派手な仮面を付けた男3人がすぐ傍の曲がり角から姿を現した。
「!」
この世で1、2を争う程嫌いな天敵に、運悪く独りで居るタイミングで鉢合わせてしまった。そもそも、何故この者達が日本に居るのか。
「貴方の知り合いですか?」
「姪っ子か何かか?」
「よく見ろ」
上半身裸に丈の短いジャケットを羽織っただけの男が暗がりの中の夢主へ近付いてくる。
逃げようにも大人複数対子供。味方やヒーローが居ない中、この男達から単独で逃げ切れそうにない。それ以前に、足がすくんで動けない。
「んん~?……あーっ!お前、ロールシャッハのオマケじゃねえか!つーかこの場所もなんか見覚えあるぞ!」
「確かこの辺りで、ロールシャッハのディスクと共にこいつを回収した筈だ」
「そうでしたか、なるほど。思えばここから始まった訳ですね、貴女の不幸は」
「……」
不幸。彼の言う通り、ほぼ1年前ここで捕らえられたが故に誘拐され、監禁され、酷い目に遭わされてしまった。だが、今こそが一番どん底な気もする。
尊敬するヒーローとは違う男性にあっさりファーストキスを奪われ、その人物へ自分から無遠慮にキスしたことも仲間に知られてしまった。いずれロールシャッハの耳にも入るだろう。
最悪だ。主に、社会的に。
加えて、悪い大人達に絡まれている。この後何処かへ強制的に連れて行かれるのだろうか。彼はまた、あの時と同じく困難を乗り越え助けに来てくれるのだろうか?
こんな自分を。
「え?何お前、泣いてんの?」
涙を見られまいと顔を背けるが、声の大きい黄金ベネチアンマスクはしつこく覗き込んでくる。
「ハハッ、ビビっちまったのか~?」
「どうぞ」
優しい声でハンカチを差し出されるが、勿論信用なんてできる筈無いのでその厚意は完全無視してやった。
「うっわ~生意気だな。また痛い目に遭いてぇか?ぁあ!?」
「まあまあ、そう凄むものじゃありませんよ」
ジョエルは一回りも年下の相手に睨みをきかせる。
が、2人の腹の虫が仲良くほぼ同時に主張したことで、しばしの間両者の思考は停止した。
「……」
「……かあ~っ、ダメだ。腹減るとなーんもやる気しねぇ。止めだ止め!」
子供を脅す気も利用する気も失せた悪党は自分の頭の後ろで両手を組み、まだ微かに残っている夕焼けの方を向き天を仰いだ。
「近くに安そうなレストランならあります。まあ、私の足元にも及ばない腕前でしょうが」
「ここから徒歩5分もしないな」
「よっしゃそこにしよ!」
3人は利用価値のありそうな子供をあっさりスルーしてぞろぞろ歩き出す。
見逃してもらえたのだろうか。というより、そもそも物騒なことに巻き込んでやろうとする気配は最初から感じられなかった。まるで顔見知りのヤンキーに軽く声を掛けられた程度の感覚だ。
早速先頭を切っていた男性はふと立ち止まり、自分と同じく腹を空かせている者の方へ振り向いた。
「お前も来る?」
急に飛び出してきてしまったため手持ちが無い彼女は、ただフラフラと道の端を歩き続けていた。ふと空を見上げれば爽やかな朝日は何処へやら、既に片方の空はどんよりとした紺色に染まりつつある。
「あ、れ……ここって…」
人通りのない住宅街。偶然にも夢主は、かつて悪党の手に落ちたあの場所まで来てしまっていた。
「久し振りだな」
どこか聞き覚えのある声に振り向くと、派手な仮面を付けた男3人がすぐ傍の曲がり角から姿を現した。
「!」
この世で1、2を争う程嫌いな天敵に、運悪く独りで居るタイミングで鉢合わせてしまった。そもそも、何故この者達が日本に居るのか。
「貴方の知り合いですか?」
「姪っ子か何かか?」
「よく見ろ」
上半身裸に丈の短いジャケットを羽織っただけの男が暗がりの中の夢主へ近付いてくる。
逃げようにも大人複数対子供。味方やヒーローが居ない中、この男達から単独で逃げ切れそうにない。それ以前に、足がすくんで動けない。
「んん~?……あーっ!お前、ロールシャッハのオマケじゃねえか!つーかこの場所もなんか見覚えあるぞ!」
「確かこの辺りで、ロールシャッハのディスクと共にこいつを回収した筈だ」
「そうでしたか、なるほど。思えばここから始まった訳ですね、貴女の不幸は」
「……」
不幸。彼の言う通り、ほぼ1年前ここで捕らえられたが故に誘拐され、監禁され、酷い目に遭わされてしまった。だが、今こそが一番どん底な気もする。
尊敬するヒーローとは違う男性にあっさりファーストキスを奪われ、その人物へ自分から無遠慮にキスしたことも仲間に知られてしまった。いずれロールシャッハの耳にも入るだろう。
最悪だ。主に、社会的に。
加えて、悪い大人達に絡まれている。この後何処かへ強制的に連れて行かれるのだろうか。彼はまた、あの時と同じく困難を乗り越え助けに来てくれるのだろうか?
こんな自分を。
「え?何お前、泣いてんの?」
涙を見られまいと顔を背けるが、声の大きい黄金ベネチアンマスクはしつこく覗き込んでくる。
「ハハッ、ビビっちまったのか~?」
「どうぞ」
優しい声でハンカチを差し出されるが、勿論信用なんてできる筈無いのでその厚意は完全無視してやった。
「うっわ~生意気だな。また痛い目に遭いてぇか?ぁあ!?」
「まあまあ、そう凄むものじゃありませんよ」
ジョエルは一回りも年下の相手に睨みをきかせる。
が、2人の腹の虫が仲良くほぼ同時に主張したことで、しばしの間両者の思考は停止した。
「……」
「……かあ~っ、ダメだ。腹減るとなーんもやる気しねぇ。止めだ止め!」
子供を脅す気も利用する気も失せた悪党は自分の頭の後ろで両手を組み、まだ微かに残っている夕焼けの方を向き天を仰いだ。
「近くに安そうなレストランならあります。まあ、私の足元にも及ばない腕前でしょうが」
「ここから徒歩5分もしないな」
「よっしゃそこにしよ!」
3人は利用価値のありそうな子供をあっさりスルーしてぞろぞろ歩き出す。
見逃してもらえたのだろうか。というより、そもそも物騒なことに巻き込んでやろうとする気配は最初から感じられなかった。まるで顔見知りのヤンキーに軽く声を掛けられた程度の感覚だ。
早速先頭を切っていた男性はふと立ち止まり、自分と同じく腹を空かせている者の方へ振り向いた。
「お前も来る?」