番外編??+5:都合の良い4人
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サムは今、オレンジ色の程良く硬い背もたれへ頭と肘を預け、話し相手に自分の意見を押し付けているところだ。
「そ!結局俺が護るのが一番効率良いんですよ。そこんところ、考え直しといてくださいね」
『だがノバ。いや、サム・アレキサンダー。君は一度夢主とトラブ』
「あっれー?もしもーし?なんだか電波の調子が悪いみたいっす。スタークさんの別荘でもそういうことあるんだなー」
国際諜報機関の長官はまだ何か言い続けていたが、青年は既に端末を顔から離してしまっているためその忠告は届きようがない。
サムと夢主は、とりあえずの避難所として日本のアベンジャーズ基地に身を寄せていた。バイオコードを宿した子供達とかつて共同生活していた家でもあり、2人は慣れ親しんだこの建物内で仲間の到着を待っている。
「サムくん」
リビングの入口から控えめに声を掛けてきた少女は、泣き腫らした目元以外にも頬を微かに赤く染めていた。
「何?入って来なよ、遠慮せずに」
と言ってやっても、相手は数歩近付いただけ。同じ空間に入るのが居まずくてたまらないのか、視線を泳がせ手いじりを止めようとしない。
「昨日は、その…ごめんなさい」
「良いって。ヒーローは民衆を守るのが仕事ですから!身体的にも、精神的にも」
苦い表情の夢主とは対照的に、サムは自分の頭の後ろに大きく腕を回し手を組んだ。
「あの、それでね!昨日のことは忘れてほしいの!あんな…」
昨日、べそを掻きながら忙しいヒーローを足止めしたこと。我が儘を抑えきれず剥き出しにしたこと。そして何より、形振り構わず積極的に唇を重ねたこと。
「あんな、こと…」
言っている内に己の痴態を鮮明に思い出してしまい、夢主は段々と口ごもり目を伏せる。あんな自分、出来ることなら記憶から消してしまいたいしさっさと忘れ去られたい。
「私、どうかしてて……だから」
「悪いけど、嫌だ」
冗談で彼女を追い詰めた彼は要求をお詫びとして受け入れるかと思いきや、あっさり突き返した。
「え?」
「夢主の弱味につけ込んだことは謝る。けど、あんなに激しく求めてきておいて忘れろはないっしょ。昨日なんか俺あの後…」
続きを口にしたら間違いなく嫌われる。年頃の男子はこの場において最低な単語を発する寸前で飲み込んだ。
「なんでもない」
「あの後?まさか皆に言いふらしたの!?」
「いやいや、そんなことしないって!」
「じゃあ何?」
「えっとー、言いふらしちゃいないけど、まあその、とにかく!これからはキス無しで何秒でも居てあげるけど、好きな子の恥ずかしいことはぜ~んぶ覚えとくから」
「!」
意地の悪い男子は満面の笑みを見せると脇に置いていた紺色のヘルメットを被り、逃げるように天井近くまで浮き上がった。
「そんなっ、ちょっ……それに、好…って…!」
「なぁに?今更驚くこと?」
「ちょっと、待ってよ!」
「待ったなぁ~い!」
「だ、だって、困るよそんなの!」
「大丈夫大丈夫、皆には黙っとくから」
何ひとつ大丈夫じゃない。忘れてもらわなければ意味が無いのだ。
「そうじゃなくて…!」
大して言い返せないまま彼はリビングルームを後にし、あっという間に廊下の奥へ飛んで行ってしまった。追いかけても個室の窓から外へ逃げられるのがオチだろう。
夢主は緩やかなカーブを描いた通路の真ん中でただ立ち尽くしていた。
「そ!結局俺が護るのが一番効率良いんですよ。そこんところ、考え直しといてくださいね」
『だがノバ。いや、サム・アレキサンダー。君は一度夢主とトラブ』
「あっれー?もしもーし?なんだか電波の調子が悪いみたいっす。スタークさんの別荘でもそういうことあるんだなー」
国際諜報機関の長官はまだ何か言い続けていたが、青年は既に端末を顔から離してしまっているためその忠告は届きようがない。
サムと夢主は、とりあえずの避難所として日本のアベンジャーズ基地に身を寄せていた。バイオコードを宿した子供達とかつて共同生活していた家でもあり、2人は慣れ親しんだこの建物内で仲間の到着を待っている。
「サムくん」
リビングの入口から控えめに声を掛けてきた少女は、泣き腫らした目元以外にも頬を微かに赤く染めていた。
「何?入って来なよ、遠慮せずに」
と言ってやっても、相手は数歩近付いただけ。同じ空間に入るのが居まずくてたまらないのか、視線を泳がせ手いじりを止めようとしない。
「昨日は、その…ごめんなさい」
「良いって。ヒーローは民衆を守るのが仕事ですから!身体的にも、精神的にも」
苦い表情の夢主とは対照的に、サムは自分の頭の後ろに大きく腕を回し手を組んだ。
「あの、それでね!昨日のことは忘れてほしいの!あんな…」
昨日、べそを掻きながら忙しいヒーローを足止めしたこと。我が儘を抑えきれず剥き出しにしたこと。そして何より、形振り構わず積極的に唇を重ねたこと。
「あんな、こと…」
言っている内に己の痴態を鮮明に思い出してしまい、夢主は段々と口ごもり目を伏せる。あんな自分、出来ることなら記憶から消してしまいたいしさっさと忘れ去られたい。
「私、どうかしてて……だから」
「悪いけど、嫌だ」
冗談で彼女を追い詰めた彼は要求をお詫びとして受け入れるかと思いきや、あっさり突き返した。
「え?」
「夢主の弱味につけ込んだことは謝る。けど、あんなに激しく求めてきておいて忘れろはないっしょ。昨日なんか俺あの後…」
続きを口にしたら間違いなく嫌われる。年頃の男子はこの場において最低な単語を発する寸前で飲み込んだ。
「なんでもない」
「あの後?まさか皆に言いふらしたの!?」
「いやいや、そんなことしないって!」
「じゃあ何?」
「えっとー、言いふらしちゃいないけど、まあその、とにかく!これからはキス無しで何秒でも居てあげるけど、好きな子の恥ずかしいことはぜ~んぶ覚えとくから」
「!」
意地の悪い男子は満面の笑みを見せると脇に置いていた紺色のヘルメットを被り、逃げるように天井近くまで浮き上がった。
「そんなっ、ちょっ……それに、好…って…!」
「なぁに?今更驚くこと?」
「ちょっと、待ってよ!」
「待ったなぁ~い!」
「だ、だって、困るよそんなの!」
「大丈夫大丈夫、皆には黙っとくから」
何ひとつ大丈夫じゃない。忘れてもらわなければ意味が無いのだ。
「そうじゃなくて…!」
大して言い返せないまま彼はリビングルームを後にし、あっという間に廊下の奥へ飛んで行ってしまった。追いかけても個室の窓から外へ逃げられるのがオチだろう。
夢主は緩やかなカーブを描いた通路の真ん中でただ立ち尽くしていた。