番外編??+5:都合の良い4人
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「全く、夢主のことはS.H.I.E.L.D.が守ってくれるって話じゃなかったっけ?なんで日本に遊びに来た僕が救出してんの?」
「それは、私の体からバイオコードの悪い反応が特に見つからなかったらしくて、保護の対象じゃなくなったとか…」
「丁寧な説明どうも」
ヴィランの目的である夢主はスパイダーマンに抱えられ、大きなビルが建ち並ぶ市街地の中を結構なスピードで飛び回っていた。今、人気の無い路地へと無事に降ろされる。
「S.H.I.E.L.D.が特別扱いしてくれないってことは、彼等にとって君はいわゆる一般市民のくくりなのかな」
「そうみたいです。たまにこうして襲われますけど…」
大通りの方から、アキラにしょっちゅう会いに来るスーパーヒーローがヴィランと戦っている騒音が聞こえる。
「仮にもバイオコードを宿していた重要人物なんだから、もっと丁重に扱ってほしいもんだね」
「一応、護衛はしていただいています。ノバくんは降ろされちゃったけど、扮装したS.H.I.E.L.D.隊員の方に」
街でよく見かけるようになったスーツ姿の大人達については何も心配していなかった。ヘリキャリアを降りる際、フューリー長官から一通りの説明を受けたからだ。特別な戦力は割いてくれないものの、人手をかけ夢主の動向に目を光らせているらしい。
「良いこと教えてあげる。それ護衛じゃなくて監視って言うんだよ。実際君はピンチじゃないか」
スパイダーマンの言う通り。彼等はこちらに視線はくれるが、いざというとき助けに来てくれない。
悪党をおびき寄せるためにわざと泳がされている気もするが、まさか公的機関に限ってそんな手段に出るなんてことは無いだろう。そうであってほしい。
「ん?あれ?もしかしてイメチェンした?前会った時と比べて随分スッキリしてるじゃん」
相変わらず、この青年と喋っていると話題が目まぐるしく変わっていく。
髪型を変える羽目になったそもそもの犯人は、このスパイダーマンを敬愛して止まない某傭兵である。殺し屋から身を隠すためだとか言って、乙女の後ろ髪を問答無用で切り落としてしまったのだ。整えた今は、アベンジャーズのワスプよりも短いかもしれない。
「ええと…これは」
「おっと!残念だけど、今は君とファッション談義をしている暇は無いんだ。ここまで来れば安全だから、くれぐれも動き回ったりしちゃ駄目だよ。じゃ!」
「あ、待っ…」
スパイダーマンは相手に有無を言わさずビルの側面を軽やかに這い上がり、たまに爆発音が鳴り響く向こう側へと跳んで行ってしまった。
「待っ…て…」
行き場の無い腕と共に視線を落とす。まだ膝が震え続けている原因は、高所で風を切って移動した余韻だけに限らない。
今後も先程のような、ヴィランに追われる生活が続くのだろうか。この先ずっと、生身の人間が、独りで耐えなければならないのか。
「……」
この世界にはヒーローが多数存在するが、どの英雄も仕事を終えればさっさと立ち去ってしまう。彼等には次の戦いが待っているため極々当たり前の対応なのだが、どうにも、あっさりしている。
「待って、くれない…よね」
出来ることならもう一度S.H.I.E.L.D.の保護監視下に入りたいが、それは叶わない。国際諜報機関には他にも護るべき人やものがある。護衛の優先順位が低くなった夢主は半ば追い出されたようなものだ。
一般の警察も機能してはいるが、彼等が現場に駆けつけた頃には既にスーパーヒーローが悪者退治を終えた後だった、なんてことも。やはり強いヴィランに対抗できるのは秀でたヒーローだ。
「……さん……ロールシャッハさん…」
大分前から寂しくなってしまった手首をそっと掴む。
ロールシャッハはもう自分のパートナーではない。もし彼の目の前で襲われるようなことがあれば無論助けてくれるだろう。だが、ニューヨークに在住する彼が自分のためにわざわざ日本へ出向いてきて救いに来るなんてことは、あり得ない。
今日は運良くスパイダーマンが近くを通りかかったため助かったが、こんなラッキーが毎度続くとは限らない。と、すれば。
「どう、すれば」
自分の身は自分で守るなんてたくましいことは不可能だ。ならば、危険をいち早く察知し逃げるか、助けを求めるかしか。
今度はいつ、どこで襲われるのか。寝ている間に襲われたら抵抗しようがない。出歩いている間も気を抜けないが、もし家を突き止められたら?
「……」
いつの日か、悪者の餌食になってしまう時が来るのだろうか。
独りで居ると思考が暗い方へと転がっていく一方だ。
「誰か…」
夢主は手の震えをもう片方の震える手で抑えながら、その場で膝を突き腰を落とした。
「それは、私の体からバイオコードの悪い反応が特に見つからなかったらしくて、保護の対象じゃなくなったとか…」
「丁寧な説明どうも」
ヴィランの目的である夢主はスパイダーマンに抱えられ、大きなビルが建ち並ぶ市街地の中を結構なスピードで飛び回っていた。今、人気の無い路地へと無事に降ろされる。
「S.H.I.E.L.D.が特別扱いしてくれないってことは、彼等にとって君はいわゆる一般市民のくくりなのかな」
「そうみたいです。たまにこうして襲われますけど…」
大通りの方から、アキラにしょっちゅう会いに来るスーパーヒーローがヴィランと戦っている騒音が聞こえる。
「仮にもバイオコードを宿していた重要人物なんだから、もっと丁重に扱ってほしいもんだね」
「一応、護衛はしていただいています。ノバくんは降ろされちゃったけど、扮装したS.H.I.E.L.D.隊員の方に」
街でよく見かけるようになったスーツ姿の大人達については何も心配していなかった。ヘリキャリアを降りる際、フューリー長官から一通りの説明を受けたからだ。特別な戦力は割いてくれないものの、人手をかけ夢主の動向に目を光らせているらしい。
「良いこと教えてあげる。それ護衛じゃなくて監視って言うんだよ。実際君はピンチじゃないか」
スパイダーマンの言う通り。彼等はこちらに視線はくれるが、いざというとき助けに来てくれない。
悪党をおびき寄せるためにわざと泳がされている気もするが、まさか公的機関に限ってそんな手段に出るなんてことは無いだろう。そうであってほしい。
「ん?あれ?もしかしてイメチェンした?前会った時と比べて随分スッキリしてるじゃん」
相変わらず、この青年と喋っていると話題が目まぐるしく変わっていく。
髪型を変える羽目になったそもそもの犯人は、このスパイダーマンを敬愛して止まない某傭兵である。殺し屋から身を隠すためだとか言って、乙女の後ろ髪を問答無用で切り落としてしまったのだ。整えた今は、アベンジャーズのワスプよりも短いかもしれない。
「ええと…これは」
「おっと!残念だけど、今は君とファッション談義をしている暇は無いんだ。ここまで来れば安全だから、くれぐれも動き回ったりしちゃ駄目だよ。じゃ!」
「あ、待っ…」
スパイダーマンは相手に有無を言わさずビルの側面を軽やかに這い上がり、たまに爆発音が鳴り響く向こう側へと跳んで行ってしまった。
「待っ…て…」
行き場の無い腕と共に視線を落とす。まだ膝が震え続けている原因は、高所で風を切って移動した余韻だけに限らない。
今後も先程のような、ヴィランに追われる生活が続くのだろうか。この先ずっと、生身の人間が、独りで耐えなければならないのか。
「……」
この世界にはヒーローが多数存在するが、どの英雄も仕事を終えればさっさと立ち去ってしまう。彼等には次の戦いが待っているため極々当たり前の対応なのだが、どうにも、あっさりしている。
「待って、くれない…よね」
出来ることならもう一度S.H.I.E.L.D.の保護監視下に入りたいが、それは叶わない。国際諜報機関には他にも護るべき人やものがある。護衛の優先順位が低くなった夢主は半ば追い出されたようなものだ。
一般の警察も機能してはいるが、彼等が現場に駆けつけた頃には既にスーパーヒーローが悪者退治を終えた後だった、なんてことも。やはり強いヴィランに対抗できるのは秀でたヒーローだ。
「……さん……ロールシャッハさん…」
大分前から寂しくなってしまった手首をそっと掴む。
ロールシャッハはもう自分のパートナーではない。もし彼の目の前で襲われるようなことがあれば無論助けてくれるだろう。だが、ニューヨークに在住する彼が自分のためにわざわざ日本へ出向いてきて救いに来るなんてことは、あり得ない。
今日は運良くスパイダーマンが近くを通りかかったため助かったが、こんなラッキーが毎度続くとは限らない。と、すれば。
「どう、すれば」
自分の身は自分で守るなんてたくましいことは不可能だ。ならば、危険をいち早く察知し逃げるか、助けを求めるかしか。
今度はいつ、どこで襲われるのか。寝ている間に襲われたら抵抗しようがない。出歩いている間も気を抜けないが、もし家を突き止められたら?
「……」
いつの日か、悪者の餌食になってしまう時が来るのだろうか。
独りで居ると思考が暗い方へと転がっていく一方だ。
「誰か…」
夢主は手の震えをもう片方の震える手で抑えながら、その場で膝を突き腰を落とした。