俺の感覚から言えば、あと数秒で午後一の講義が始まる。後ろのドアから勢いよく駆け込んだ。

「よっしゃあギリギリセー……フじゃない」

振り向いたのは、いつも楽しくやってる友達だけじゃなくて教室に居る学生全員。と、教科書片手に黒板の前で突っ立っている先生も。

「おいサム、また遅刻かよ」

遅れた理由は、ついさっきまでヴィランの相手をしてたから。スーパーヒーローノバとして悪と闘ってることは、今話しかけてきた友達含め学校の皆には秘密。

「お前出席足りるの？」
「サムくん気ぃ抜きすぎ～」

受講態度が悪いお友達へしっかり者としてツッコんでるところ悪いけど、気楽なのはみんなの方。今日の奴はちょっと手強かった。

「度重なる重役出勤とは…感心しないな、サム」

勿論、ヴィランとの闘いが大変とかフューリー長官が人使い荒いとか、この先生には関係無い。

「確かに俺、重役かも。こないだのテスト１位だったし！」

清々しく放たれた冗談によって教室中が控えめな笑いに包まれる。アメリカじゃバカ受けだったんだけどな、日本だからか反応はイマイチ。先生も仕方がない奴だなと呆れ半分、大目に見てくれてるっぽい。

「お疲れ様」

そんな中、斜め後ろの方から声をかけられる。振り向いて目が合うと彼女は少しだけ微笑んだ。

目立たなすぎて、そこに座ってたことにすら気付かなかった。