番外編??+3:都合の良い善意
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予定は大幅に狂ってしまった。
ニューヨークに着いたら、まずアキラと共にヒカル・クリス・エド・ジェシカと合流し、昼食。大きな公園で一休みしてから有名な銅像を見に行く筈だった。スターク社の見学もジェシカとワスプと一緒に行く買い物も、そしてロールシャッハとの再会も、全てがオジャンだ。
「むぐぐ…」
ヘリキャリアを降りる瞬間を狙われていたとは。デッドプールは夢主を捕まえた直後、瞬間移動を多用しその場から姿を消した。
こいつの目的はわかっている。だが、まだ殺されてはいない。
「はぁーい到着~」
彼の所有する数ある隠れ家の一つへ連れてこられた。
広くて明るいが掃除の行き届いていない古いアパートの一室。窓際のソファに降ろされ、猿ぐつわの布と足首をまとめていた縄を外される。
「デッドプールの別荘へようこそー!女の子を自分の部屋に連れて来たのって初めてだから緊張する~、キャッ」
嘘だろう。夢主は今、どこぞの女が忘れていったであろう派手な下着を尻に敷いている。傭兵は白々しく脇と股を閉め照れてみせた。
「私を連れて来たのって……任務のためですか?」
「話が早ーい、さっすが夢主ちゃん。たしかにそうだけどー、俺ちゃん、子供を殺したことは無いし殺す予定も無いの」
「でも、前に私を…こ、殺すって…」
「やっだぁ、ジョークに決まってんじゃ~ん!」
デッドプールはすぐ隣に腰をかけ、指でツンと額をつついてくる。いまいち信用できない。夢主はソファの端まで逃げた。
「んな警戒しなくてもイイじゃん…」
「……」
強く逞しく、そして危険な彼に惹かれていることは確かだが、生死が関わればそんな劣情は二の次だ。
「約束する。殺しはしないし、捕って喰いやしない。ただ、依頼主には証拠を持ってかなきゃならないのさ」
「証拠…?」
夢主は立ち上がり、肩をすくめて後ずさる。背後には分厚い壁と、人一人がやっとくぐり抜けられそうな小さい縦スライド式の窓しかない。
「ターゲットを殺しましたよーっていう証拠をね。だから……死んだ人間は死んだことにしなきゃならない」
「やっぱり…!」
夢主は縛られたままの手で何とか窓を開け脱出を試みるが、すぐに首根っこを引っ張られ、自由の利かない体をしっかりと抱き留められる。
「嫌ぁ!」
「そう死に急ぎなさんな、暮らし方を変えるだけだから。そうすりゃ夢主ちゃんは晴れて生きることを許されるって訳」
「暮らし方…?」
「変えるのは名前、住居、国籍、外見っと」
傭兵は慣れた手付きで刀を取り出し、女の子の後ろ髪を大雑把に刈り取ってしまった。
「!?」
「んで、お次は……いや、それより奴に話通しておかないと。電話するからちょーっと静かにしてて」
そう言うとデッドプールは夢主をあっさり解放し、据え置き電話の受話器を手に取る。
勝手に髪を切られたことはショックだ。後頭部が妙に軽い。ハゲてるかもしれない。
だが、そんなことよりも先に聞いておきたいことがある。
「待って!」
ダイヤルを押そうとした指が止まった。
「あの…もしかして…」
この男は、まさかターゲットである自分のことを
「助けてくれるんですか?」
「ああ。守ってやるさ」
「……」
初めて聞いたかも知れない。彼の、単純だが、だからこそ真っ直ぐな言葉。
「だからちょっとイイ子にしててくれよ……だろ?……知るかよ、数年経てばそんなの関係無ぇ!」
「私…今までデッドプールさんのこと誤解していました。アベンジャーズを全員倒すなんて言っておきながら急にぶつぶつ言い出して帰っちゃうし、平気でクリスくんを殴るし、人を殺めることに抵抗が無いし」
「うんうん、嘘吐きで暴力者でネジぶっ飛んでる。だけど?」
デッドプールは持っていた受話器をマイクに見立てて突き出し、イメージの良い言葉を催促してくる。
「だけど…子供を大事にするから…根っこは良い人……なんですよね?」
「要らない!そこ疑問符要らない!」
マイクのお次は、その受話器でペチペチと頬を往復ビンタし始める。大して怒っていないのか、力はほとんど込められていない。
「あうっ、すみっ、ませんっ」
「そんなクズに謝ることは無い」
少しだけ、このおかしなヒーローと仲良くなれたのかもしれない。そんな手応えを勝手に感じていた時、部屋の外から3人目が会話に加わる。その声は妙にしゃがれていた。
ニューヨークに着いたら、まずアキラと共にヒカル・クリス・エド・ジェシカと合流し、昼食。大きな公園で一休みしてから有名な銅像を見に行く筈だった。スターク社の見学もジェシカとワスプと一緒に行く買い物も、そしてロールシャッハとの再会も、全てがオジャンだ。
「むぐぐ…」
ヘリキャリアを降りる瞬間を狙われていたとは。デッドプールは夢主を捕まえた直後、瞬間移動を多用しその場から姿を消した。
こいつの目的はわかっている。だが、まだ殺されてはいない。
「はぁーい到着~」
彼の所有する数ある隠れ家の一つへ連れてこられた。
広くて明るいが掃除の行き届いていない古いアパートの一室。窓際のソファに降ろされ、猿ぐつわの布と足首をまとめていた縄を外される。
「デッドプールの別荘へようこそー!女の子を自分の部屋に連れて来たのって初めてだから緊張する~、キャッ」
嘘だろう。夢主は今、どこぞの女が忘れていったであろう派手な下着を尻に敷いている。傭兵は白々しく脇と股を閉め照れてみせた。
「私を連れて来たのって……任務のためですか?」
「話が早ーい、さっすが夢主ちゃん。たしかにそうだけどー、俺ちゃん、子供を殺したことは無いし殺す予定も無いの」
「でも、前に私を…こ、殺すって…」
「やっだぁ、ジョークに決まってんじゃ~ん!」
デッドプールはすぐ隣に腰をかけ、指でツンと額をつついてくる。いまいち信用できない。夢主はソファの端まで逃げた。
「んな警戒しなくてもイイじゃん…」
「……」
強く逞しく、そして危険な彼に惹かれていることは確かだが、生死が関わればそんな劣情は二の次だ。
「約束する。殺しはしないし、捕って喰いやしない。ただ、依頼主には証拠を持ってかなきゃならないのさ」
「証拠…?」
夢主は立ち上がり、肩をすくめて後ずさる。背後には分厚い壁と、人一人がやっとくぐり抜けられそうな小さい縦スライド式の窓しかない。
「ターゲットを殺しましたよーっていう証拠をね。だから……死んだ人間は死んだことにしなきゃならない」
「やっぱり…!」
夢主は縛られたままの手で何とか窓を開け脱出を試みるが、すぐに首根っこを引っ張られ、自由の利かない体をしっかりと抱き留められる。
「嫌ぁ!」
「そう死に急ぎなさんな、暮らし方を変えるだけだから。そうすりゃ夢主ちゃんは晴れて生きることを許されるって訳」
「暮らし方…?」
「変えるのは名前、住居、国籍、外見っと」
傭兵は慣れた手付きで刀を取り出し、女の子の後ろ髪を大雑把に刈り取ってしまった。
「!?」
「んで、お次は……いや、それより奴に話通しておかないと。電話するからちょーっと静かにしてて」
そう言うとデッドプールは夢主をあっさり解放し、据え置き電話の受話器を手に取る。
勝手に髪を切られたことはショックだ。後頭部が妙に軽い。ハゲてるかもしれない。
だが、そんなことよりも先に聞いておきたいことがある。
「待って!」
ダイヤルを押そうとした指が止まった。
「あの…もしかして…」
この男は、まさかターゲットである自分のことを
「助けてくれるんですか?」
「ああ。守ってやるさ」
「……」
初めて聞いたかも知れない。彼の、単純だが、だからこそ真っ直ぐな言葉。
「だからちょっとイイ子にしててくれよ……だろ?……知るかよ、数年経てばそんなの関係無ぇ!」
「私…今までデッドプールさんのこと誤解していました。アベンジャーズを全員倒すなんて言っておきながら急にぶつぶつ言い出して帰っちゃうし、平気でクリスくんを殴るし、人を殺めることに抵抗が無いし」
「うんうん、嘘吐きで暴力者でネジぶっ飛んでる。だけど?」
デッドプールは持っていた受話器をマイクに見立てて突き出し、イメージの良い言葉を催促してくる。
「だけど…子供を大事にするから…根っこは良い人……なんですよね?」
「要らない!そこ疑問符要らない!」
マイクのお次は、その受話器でペチペチと頬を往復ビンタし始める。大して怒っていないのか、力はほとんど込められていない。
「あうっ、すみっ、ませんっ」
「そんなクズに謝ることは無い」
少しだけ、このおかしなヒーローと仲良くなれたのかもしれない。そんな手応えを勝手に感じていた時、部屋の外から3人目が会話に加わる。その声は妙にしゃがれていた。