「今言ってた相談って、ノバのこと？」

恋愛相談の内容を掘り下げている場合ではないことくらい、ブラック・ウィドウは重々承知していた。が、ヘリキャリアに搭乗する２人を見かけた際、両者、特に夢主の様子がどこかおかしかったのをハッキリと覚えている。

「…はい」

彼の名前を出した途端、先程までの威勢はどこへやら、急にしおらしくなってしまった。

今後も面倒を見る相手だ、厄介事にはさっさと整理をつけておいてほしい。

「直接話した方が上手くいくことだってあるわよ」

それに、彼女が今こんな話題を夢主に振ったのは、当人が間もなく駆けつけると気付いたからでもある。ブラック・ウィドウが力なく指をさした方向から噂のヒーローが血相を変えて飛んできた。

「夢主！」

その爽やかな声には私情込みの焦りがうかがえる。

「無事か！？」
「ん、平気…」

目の前にノバが着地すると、夢主はスカートの切れ目をまとめて握り顔を伏せる。

「そうか…」

態度は素っ気ないものの怪我一つ無い彼女に安心し、サムは緊張で固まっていた口元を緩ませた。

「俺達先輩の心配はしてくれねぇのか？冷たい新入りだな！」
「よぉプレイボーイ！あっ、兎は嫌いなんだっけ？めんごめんご～」

ホークアイとデッドプールは戦いの手を休ませることなく、青年にそれぞれ茶々を入れる。

「ハッ、謝ること無いぜ。あんた達みたいなお優しい大人よりよっぽど好きさ！」

自分に向けられた訳ではないが、彼から発せられた“好き”という単語を間近で聞いた夢主は萎縮した。