番外編??:都合の良いパシリ
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が、彼は無言のままベンチから立ち上がり、数歩進んでくるっと振り返った。
「俺に追いついたらあげる」
「…はい?」
サムは得意気にその封筒を口元に持ってきてウインクした。意味が分からない。
「よーい、スタート!」
「ま、待って…!」
「待ったなぁーい!」
封筒は高く掲げられたまま、夢主の元からどんどん離れていく。
「サム選手速い速~い!……あれ?」
夢主はベンチから立ち上がったものの、そこから一歩も動かずに口を開けぽかんとしていた。
「夢主?ごめん、からかい過ぎた。機嫌直してよ」
「……」
サムは駆け足で戻ってきたが彼女からの返事は無し。怒鳴るでも睨むでもなく、ただただどこか一点を見つめ続けている。
「おーい?……な、なんか反応してくれないとさすがの俺でもツッコめないんだけど…」
「あ…ごめん……ロールシャッハさんと別れたときのこと、思い出しちゃって…」
走る気力も無い彼女は、独りでベンチに座っていた時と同じく悲しそうに笑った。
「待ってって言っても、全然待ってくれなかったから…ロールシャッハさん」
夢主は目の前から遠ざかっていく特別な封筒に、かつてのパートナーの姿を重ねていた。
どんなに想いを投げかけても、彼は歩みを止めなかった。どんなに一生懸命走ったとしても、サムの速い足に追いつくことはない。
「ロールシャッハ、さん……会いたい…」
止めきれない気持ちが零れ出してしまう。目を閉じ鼻頭が赤くなっていく女の子に焦った青年は、やっと素直に封筒を手渡した。
「…ありがと」
「ほんっと好きなんだな、ロールシャッハのこと」
涙目の夢主は自分の情けない顔を受け取ったそれで隠したが、一回だけしっかりと頷いた。
「はぁ~、じゃ。俺はちゃんと届けたから。また明日」
おつかいを無事終えたサムは振り返り、軽く手を振りながら歩き出す。
「なぁっ!?」
背後からの突然の奇声に内心わくわくしながらサムは舞い戻ってきた。
「何何?血しぶきでも付いてた?」
その場で立ち尽くす夢主は目を見開き、深刻な表情のまま訴えた。
「英語だっ…!」
「そりゃ当然でしょ」
しかもまだ習っていない単語だらけだ。身だしなみや普段の女性への態度に反して実は詩的な彼のことだ、文中には比喩や洒落た言い回し、皮肉等がふんだんに織り交ぜられているのだろう。
とてもじゃないが、彼女だけの力で翻訳することは不可能だ。
「ノバくん、あの…!」
夢主はこの場に居合わせる中で一番の適任者へ切望の眼差しを向けた。
「いっ!?お、俺は手紙届けたから!もうお願いは聞いたっしょ!?じゃっ!」
「そんなぁ~!」
青年はノバ・フォースより授かった力を駆使し全力で中庭から逃げ出した。あの2人の仲を取り持つために、これ以上偉大な力を使い込むなんてまっぴら御免だからだ。
彼女が彼に返事を出そう、ましてや彼と文通しようだなんて考え出さないことを、ノバは風を切りながら切に願った。
「俺に追いついたらあげる」
「…はい?」
サムは得意気にその封筒を口元に持ってきてウインクした。意味が分からない。
「よーい、スタート!」
「ま、待って…!」
「待ったなぁーい!」
封筒は高く掲げられたまま、夢主の元からどんどん離れていく。
「サム選手速い速~い!……あれ?」
夢主はベンチから立ち上がったものの、そこから一歩も動かずに口を開けぽかんとしていた。
「夢主?ごめん、からかい過ぎた。機嫌直してよ」
「……」
サムは駆け足で戻ってきたが彼女からの返事は無し。怒鳴るでも睨むでもなく、ただただどこか一点を見つめ続けている。
「おーい?……な、なんか反応してくれないとさすがの俺でもツッコめないんだけど…」
「あ…ごめん……ロールシャッハさんと別れたときのこと、思い出しちゃって…」
走る気力も無い彼女は、独りでベンチに座っていた時と同じく悲しそうに笑った。
「待ってって言っても、全然待ってくれなかったから…ロールシャッハさん」
夢主は目の前から遠ざかっていく特別な封筒に、かつてのパートナーの姿を重ねていた。
どんなに想いを投げかけても、彼は歩みを止めなかった。どんなに一生懸命走ったとしても、サムの速い足に追いつくことはない。
「ロールシャッハ、さん……会いたい…」
止めきれない気持ちが零れ出してしまう。目を閉じ鼻頭が赤くなっていく女の子に焦った青年は、やっと素直に封筒を手渡した。
「…ありがと」
「ほんっと好きなんだな、ロールシャッハのこと」
涙目の夢主は自分の情けない顔を受け取ったそれで隠したが、一回だけしっかりと頷いた。
「はぁ~、じゃ。俺はちゃんと届けたから。また明日」
おつかいを無事終えたサムは振り返り、軽く手を振りながら歩き出す。
「なぁっ!?」
背後からの突然の奇声に内心わくわくしながらサムは舞い戻ってきた。
「何何?血しぶきでも付いてた?」
その場で立ち尽くす夢主は目を見開き、深刻な表情のまま訴えた。
「英語だっ…!」
「そりゃ当然でしょ」
しかもまだ習っていない単語だらけだ。身だしなみや普段の女性への態度に反して実は詩的な彼のことだ、文中には比喩や洒落た言い回し、皮肉等がふんだんに織り交ぜられているのだろう。
とてもじゃないが、彼女だけの力で翻訳することは不可能だ。
「ノバくん、あの…!」
夢主はこの場に居合わせる中で一番の適任者へ切望の眼差しを向けた。
「いっ!?お、俺は手紙届けたから!もうお願いは聞いたっしょ!?じゃっ!」
「そんなぁ~!」
青年はノバ・フォースより授かった力を駆使し全力で中庭から逃げ出した。あの2人の仲を取り持つために、これ以上偉大な力を使い込むなんてまっぴら御免だからだ。
彼女が彼に返事を出そう、ましてや彼と文通しようだなんて考え出さないことを、ノバは風を切りながら切に願った。