第四部:都合の良い男
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「子供を一人、助け出したい」
ロールシャッハは要件をしっかり伝え切ったつもりだが、かなり端的な言葉に収まってしまった。
「えーと…」
「……」
これだけを聞かされた側はどう答えて良いのかわからないし、聞かせた側はそれ以上話そうとしない。ほんの少し、何も進まない時間が過ぎた。
「…子供を?」
「そ!子供を助ける。これが、この方々からアベンジャーズへの依頼ってワケ!」
ピーターに続き、ナイトオウルが相棒の主張に補足していく。
「僕はロールシャッハから聞いただけなんだけれど、ある子供が悪者の船に監禁されているんだ。勿論、アベンジャーズに任せきりにするつもりは無い。我々と一緒に、その子供を救出してほしいんだ」
相方のフォローに満足したのか、ロールシャッハは「フム」と短くうなった。
「そうなの…」
「それは……由々しき事態だな…」
はっきり口に出さずとも、アベンジャーズ全員が何とも言い難い違和感を拭えないでいる。
ヒーローとの交流に消極的で、テレビを始め表舞台に露見することを嫌い、影で悪党やヴィランその他気に食わない人間を容赦なく叩きのめすロールシャッハ。そんな彼なら、さっさと自分一人で事件を解決しに向かうのではないか?何故わざわざメジャーなヒーローを頼りに来たのか?
当然の疑問だ、ソーやワスプ達は重い腰を簡単に上げようとしない。子供達も個人差はあるものの、それぞれのパートナーの緊張を感じ取っていた。
「なるほどな、で?」
空気を変えるかのように、アイアンマンは少々きつめの口調で質問し始めた。
「その犯人の居場所は?」
「わからん」
「その子供の名前は?」
「知らない」
「どんな子なんだ?」
「一般人だった」
「手がかり少なっ!」
アキラが思わず口を挟んでしまう。投げやりとも捉えられるぶっきらぼうな回答に、アイアンマンも呆れ気味に顔を歪ませた。
「おいおいロールシャッハ、もうちょいどうにか……“だった”?」
「だが。バイオコードを持っている」
一同は目を見開き息を呑んだ。
「何だって!?」
「俺達以外にもバイオコードを持つ子供が居るのか?」
「じゃあその子もディスク使えるの!?」
「ちょ、ちょっと待て!ロールシャッハ、お前の言うバイオコードってのは、俺が開発した、あのバイオコードのことなんだよな?」
特定の者しか知り得ない筈の単語が、ロールシャッハの口からいきなり飛び出してきた。ディスク開発者はとてもじゃないが驚きを隠せない。
「ああ。正確に言えば、持たされた。無理矢理な」
「何よそれ…犯人が誘拐した子供にバイオコードを埋め込んだってこと?」
「まさか、その誘拐犯って…」
「心当たりがある連中だろうな」
またナイトオウルとピーターによって言葉が付け足される。
「ロールシャッハによると、連中は全員派手なマスクを付けていて最近脱獄したヴィランを数体引き連れているらしいんだ」
「んでもって、その全員がディスクを持っている…と」
全員の脳裏に浮かんだのは、宿敵ロキに従う悪者5人……ではなく、5つのベネチアンマスク。
「やっぱりあいつ等か!」
「一般人を巻き込むなんて、許せないわ!」
「……それ、信じて良いのかよ?」
アキラやジェシカが憤慨する中、ソファに深く腰をかけたままのクリスが落ち着いた声で問う。
「嘘っぱちじゃねぇ証拠はあんのか?」
「クリス…?」
「バイオコードを持つ6人目の子供?俺達と奴等以外に、どうしてバイオコードを持つ人間が今更増えるんだ?そうだとしても、そう簡単に増やせるもんなのか?」
「何を言うかクリス!人が一人、誘拐されているのだぞ!」
「だから、それ自体が嘘じゃねぇのかよって話。キャップだって疑ってねぇ訳じゃねぇんだろ?」
クリスのパートナーが机の上から怒鳴りつけるが、彼は意見を突き通す。
「ハルクは信じる。子供さらう奴、許さない」
「まあ待てハルク、クリスの言う通りだ。奴等5人だけで共有していたバイオコードを、信頼できるかどうか分からない人間にそう簡単に与えるとは思えない。ああっいやいや別に、二人が俺達を騙そうとしてるなんて断言するつもりはないが……」
何か裏がありそうだ、とは続けないにしても、アイアンマンはクリスに賛成。
「そ、そんな…まだ説明の途中なのに…」
ナイトオウルはゴーグルの奥の瞳を揺るがせた。
「そうね…まずは何か、証拠でもあれば信じられるんだけど…」
子供達の隣で静かに話を聞いていたペッパーが助け船を出す。
「証拠か。うーん……どうしたら信じてもらえるか…」
「……」
相棒は顎に手を当て考え込んでしまうが、ロールシャッハはもう説得する言葉の準備ができていた。
ロールシャッハは要件をしっかり伝え切ったつもりだが、かなり端的な言葉に収まってしまった。
「えーと…」
「……」
これだけを聞かされた側はどう答えて良いのかわからないし、聞かせた側はそれ以上話そうとしない。ほんの少し、何も進まない時間が過ぎた。
「…子供を?」
「そ!子供を助ける。これが、この方々からアベンジャーズへの依頼ってワケ!」
ピーターに続き、ナイトオウルが相棒の主張に補足していく。
「僕はロールシャッハから聞いただけなんだけれど、ある子供が悪者の船に監禁されているんだ。勿論、アベンジャーズに任せきりにするつもりは無い。我々と一緒に、その子供を救出してほしいんだ」
相方のフォローに満足したのか、ロールシャッハは「フム」と短くうなった。
「そうなの…」
「それは……由々しき事態だな…」
はっきり口に出さずとも、アベンジャーズ全員が何とも言い難い違和感を拭えないでいる。
ヒーローとの交流に消極的で、テレビを始め表舞台に露見することを嫌い、影で悪党やヴィランその他気に食わない人間を容赦なく叩きのめすロールシャッハ。そんな彼なら、さっさと自分一人で事件を解決しに向かうのではないか?何故わざわざメジャーなヒーローを頼りに来たのか?
当然の疑問だ、ソーやワスプ達は重い腰を簡単に上げようとしない。子供達も個人差はあるものの、それぞれのパートナーの緊張を感じ取っていた。
「なるほどな、で?」
空気を変えるかのように、アイアンマンは少々きつめの口調で質問し始めた。
「その犯人の居場所は?」
「わからん」
「その子供の名前は?」
「知らない」
「どんな子なんだ?」
「一般人だった」
「手がかり少なっ!」
アキラが思わず口を挟んでしまう。投げやりとも捉えられるぶっきらぼうな回答に、アイアンマンも呆れ気味に顔を歪ませた。
「おいおいロールシャッハ、もうちょいどうにか……“だった”?」
「だが。バイオコードを持っている」
一同は目を見開き息を呑んだ。
「何だって!?」
「俺達以外にもバイオコードを持つ子供が居るのか?」
「じゃあその子もディスク使えるの!?」
「ちょ、ちょっと待て!ロールシャッハ、お前の言うバイオコードってのは、俺が開発した、あのバイオコードのことなんだよな?」
特定の者しか知り得ない筈の単語が、ロールシャッハの口からいきなり飛び出してきた。ディスク開発者はとてもじゃないが驚きを隠せない。
「ああ。正確に言えば、持たされた。無理矢理な」
「何よそれ…犯人が誘拐した子供にバイオコードを埋め込んだってこと?」
「まさか、その誘拐犯って…」
「心当たりがある連中だろうな」
またナイトオウルとピーターによって言葉が付け足される。
「ロールシャッハによると、連中は全員派手なマスクを付けていて最近脱獄したヴィランを数体引き連れているらしいんだ」
「んでもって、その全員がディスクを持っている…と」
全員の脳裏に浮かんだのは、宿敵ロキに従う悪者5人……ではなく、5つのベネチアンマスク。
「やっぱりあいつ等か!」
「一般人を巻き込むなんて、許せないわ!」
「……それ、信じて良いのかよ?」
アキラやジェシカが憤慨する中、ソファに深く腰をかけたままのクリスが落ち着いた声で問う。
「嘘っぱちじゃねぇ証拠はあんのか?」
「クリス…?」
「バイオコードを持つ6人目の子供?俺達と奴等以外に、どうしてバイオコードを持つ人間が今更増えるんだ?そうだとしても、そう簡単に増やせるもんなのか?」
「何を言うかクリス!人が一人、誘拐されているのだぞ!」
「だから、それ自体が嘘じゃねぇのかよって話。キャップだって疑ってねぇ訳じゃねぇんだろ?」
クリスのパートナーが机の上から怒鳴りつけるが、彼は意見を突き通す。
「ハルクは信じる。子供さらう奴、許さない」
「まあ待てハルク、クリスの言う通りだ。奴等5人だけで共有していたバイオコードを、信頼できるかどうか分からない人間にそう簡単に与えるとは思えない。ああっいやいや別に、二人が俺達を騙そうとしてるなんて断言するつもりはないが……」
何か裏がありそうだ、とは続けないにしても、アイアンマンはクリスに賛成。
「そ、そんな…まだ説明の途中なのに…」
ナイトオウルはゴーグルの奥の瞳を揺るがせた。
「そうね…まずは何か、証拠でもあれば信じられるんだけど…」
子供達の隣で静かに話を聞いていたペッパーが助け船を出す。
「証拠か。うーん……どうしたら信じてもらえるか…」
「……」
相棒は顎に手を当て考え込んでしまうが、ロールシャッハはもう説得する言葉の準備ができていた。