番外編42:都合の良い体調
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元気の有り余るアキラはいつもならば扉を開け放ち仲間の部屋に駆け込むところだが、今日は様子が違う。
「夢主はどう?」
「まだまだ辛そう…」
女子部屋に集合した仲間達は、顔面蒼白で床に伏す夢主を囲んでいた。
「はあ……はぁ……う……ア、アキラく…」
意識はあるようで、彼女は薄く目を開け、掛け布団で隠れ気味の口からか細い声を出す。
「夢主…!」
「夢主、わかるか?気分はどうだ?何か変わったことは?」
アキラは思わずベッドにしがみついた。彼の肩に立つパートナーのアイアンマンが矢継ぎ早に問い掛ける。
「まだ……寒く、て……く、苦しい……」
「もう少しで、預かってるディスクの解析が終わるぞ」
夢主はロールシャッハを数日前からディスクに戻せなくなっていた。夢主の持つバイオコードはディスクをD・スマッシュする際、アキラ達のような制限時間が無いがその代わり、夢主の体力を消耗し続けてしまう。
夢主もロールシャッハも自分の意思や力ではどうすることも出来ず、ディスクの持ち主だけがすっかり衰弱しきっていた。
「今ペッパーとヒカルが仕上げに入っている。解決策が見つかるまでの辛抱だ」
「聞いた?あとちょっとだってさ。頑張れ夢主!」
「う…うぅ…ア、キ…」
「俺達がついてるよ!何か食べたいものある?」
声変わり前の少年から発せられる大声が夢主の頭に響く。
「ちょっとアキラ、夢主をそっとしといてあげて。しっかり休んで夢主」
「こんなこと、今まで無かったよな…」
「心配だよ~。ロールシャッハがディスクに戻れるようになったら、夢主は本当に元気になるの?」
人の声が、というより、最早全ての物音が脳に直接襲いかかってくる。
地下の研究施設からこの寝床のある女子部屋に移してもらったのは有り難いが、依然調子は悪いまま。布団と肌がこすれる感触すら安静を邪魔してくる程だ。神経過敏な夢主は心身共に全く休まらず、時間と共に容態は悪化していくばかり。
体中が軋む。寒くて暑い、鳥肌と汗が夢主を蝕んでいく。
そこへ、また1人女子部屋へ足を踏み入れる者が現れた。夢主の目は霞んでいるが誰が来てくれたのか刺激臭で瞬時にわかった。
「うっ…!」
大好きなヒーローだが、正直近付いてほしくない。キツすぎる。大切なパートナーだが、今だけは勘弁してほしい。
「あれ?兄さんの所に居なくて良いの?」
「全く、お前は研究室でスタンバイしてろって言っただろ?」
アキラとアイアンマンを無視し、ロールシャッハはパートナーの枕元で立ち止まった。
「ロ…ロール、シャ…さん…」
「……」
夢主のぼやけた視界に白黒模様の蠢きが映る。
安心感で目の前の苦痛が和らいだ気がしたが、それと共に不安も押し寄せてきた。今の苦しみの更に先のことを思うと涙がにじみ出る。自分は、どうなってしまうのか。
「わたっ、わた、し……し…死んじゃ…の、かな…」
「そんなことない!ディスクを作ったこの俺が保証する!だから気をしっかり持つんだ!」
ロールシャッハの代わりにアイアンマンが大声で叫ぶ。
「うぅ……」
「夢主…?」
「……」
とうとう夢主は目蓋を固く閉じた。
「夢主、夢主!?」
「ちょっと、返事して!夢主!」
「夢主~っ!」
夢主は気絶してはいなかった。視覚による刺激を少しでも抑えるための苦肉の策で、意識の方はしっかり保てていて心配無用。あくまで自己診断だが。
「目を覚ましてよ、夢主ーっ!」
頼むから今は、今だけはそっとしておいてくれないか。それを声に出すことすら困難で億劫な状態にある。
「~~!」
「~っ!」
耳も機能しなくなってきた。まるで水の中に居るような聞こえ方だ。目はとてもじゃないが開けられない。自己診断は宛てにならない。
もうこのまま眠ってしまおうかと諦めようとした瞬間、誰かに両方の肩をがしりと掴まれた。
「っ!?」
少女の骨を握り潰さんとする握力。掛け布団の上からでも痛い。更には何度も大きく揺さぶられた。
「夢主!夢主!」
「……っさいなぁ!」
最後の力を振り絞るつもりで、瀕死の夢主はうっとうしい手を乱暴に払い退けた。
「……」
一同はしんと静まり返り、眉間にシワを寄せ苦しみに耐え続ける夢主をただただ凝視。
「……え?今……ロールシャッハに…」
「あの夢主が…?」
「マジかよ…」
「……」
明確な拒絶の意を示されたロールシャッハは、特に何も言わずこの場から立ち去った。
「あ、寝息」
今しがたの迷惑行為は誰による仕業だったのか。ともかく、やっと静かになった。周囲の会話はよく理解できないが皆小声に抑えてくれている。夢主は納得したような面持ちで眠りについた。
「夢主はどう?」
「まだまだ辛そう…」
女子部屋に集合した仲間達は、顔面蒼白で床に伏す夢主を囲んでいた。
「はあ……はぁ……う……ア、アキラく…」
意識はあるようで、彼女は薄く目を開け、掛け布団で隠れ気味の口からか細い声を出す。
「夢主…!」
「夢主、わかるか?気分はどうだ?何か変わったことは?」
アキラは思わずベッドにしがみついた。彼の肩に立つパートナーのアイアンマンが矢継ぎ早に問い掛ける。
「まだ……寒く、て……く、苦しい……」
「もう少しで、預かってるディスクの解析が終わるぞ」
夢主はロールシャッハを数日前からディスクに戻せなくなっていた。夢主の持つバイオコードはディスクをD・スマッシュする際、アキラ達のような制限時間が無いがその代わり、夢主の体力を消耗し続けてしまう。
夢主もロールシャッハも自分の意思や力ではどうすることも出来ず、ディスクの持ち主だけがすっかり衰弱しきっていた。
「今ペッパーとヒカルが仕上げに入っている。解決策が見つかるまでの辛抱だ」
「聞いた?あとちょっとだってさ。頑張れ夢主!」
「う…うぅ…ア、キ…」
「俺達がついてるよ!何か食べたいものある?」
声変わり前の少年から発せられる大声が夢主の頭に響く。
「ちょっとアキラ、夢主をそっとしといてあげて。しっかり休んで夢主」
「こんなこと、今まで無かったよな…」
「心配だよ~。ロールシャッハがディスクに戻れるようになったら、夢主は本当に元気になるの?」
人の声が、というより、最早全ての物音が脳に直接襲いかかってくる。
地下の研究施設からこの寝床のある女子部屋に移してもらったのは有り難いが、依然調子は悪いまま。布団と肌がこすれる感触すら安静を邪魔してくる程だ。神経過敏な夢主は心身共に全く休まらず、時間と共に容態は悪化していくばかり。
体中が軋む。寒くて暑い、鳥肌と汗が夢主を蝕んでいく。
そこへ、また1人女子部屋へ足を踏み入れる者が現れた。夢主の目は霞んでいるが誰が来てくれたのか刺激臭で瞬時にわかった。
「うっ…!」
大好きなヒーローだが、正直近付いてほしくない。キツすぎる。大切なパートナーだが、今だけは勘弁してほしい。
「あれ?兄さんの所に居なくて良いの?」
「全く、お前は研究室でスタンバイしてろって言っただろ?」
アキラとアイアンマンを無視し、ロールシャッハはパートナーの枕元で立ち止まった。
「ロ…ロール、シャ…さん…」
「……」
夢主のぼやけた視界に白黒模様の蠢きが映る。
安心感で目の前の苦痛が和らいだ気がしたが、それと共に不安も押し寄せてきた。今の苦しみの更に先のことを思うと涙がにじみ出る。自分は、どうなってしまうのか。
「わたっ、わた、し……し…死んじゃ…の、かな…」
「そんなことない!ディスクを作ったこの俺が保証する!だから気をしっかり持つんだ!」
ロールシャッハの代わりにアイアンマンが大声で叫ぶ。
「うぅ……」
「夢主…?」
「……」
とうとう夢主は目蓋を固く閉じた。
「夢主、夢主!?」
「ちょっと、返事して!夢主!」
「夢主~っ!」
夢主は気絶してはいなかった。視覚による刺激を少しでも抑えるための苦肉の策で、意識の方はしっかり保てていて心配無用。あくまで自己診断だが。
「目を覚ましてよ、夢主ーっ!」
頼むから今は、今だけはそっとしておいてくれないか。それを声に出すことすら困難で億劫な状態にある。
「~~!」
「~っ!」
耳も機能しなくなってきた。まるで水の中に居るような聞こえ方だ。目はとてもじゃないが開けられない。自己診断は宛てにならない。
もうこのまま眠ってしまおうかと諦めようとした瞬間、誰かに両方の肩をがしりと掴まれた。
「っ!?」
少女の骨を握り潰さんとする握力。掛け布団の上からでも痛い。更には何度も大きく揺さぶられた。
「夢主!夢主!」
「……っさいなぁ!」
最後の力を振り絞るつもりで、瀕死の夢主はうっとうしい手を乱暴に払い退けた。
「……」
一同はしんと静まり返り、眉間にシワを寄せ苦しみに耐え続ける夢主をただただ凝視。
「……え?今……ロールシャッハに…」
「あの夢主が…?」
「マジかよ…」
「……」
明確な拒絶の意を示されたロールシャッハは、特に何も言わずこの場から立ち去った。
「あ、寝息」
今しがたの迷惑行為は誰による仕業だったのか。ともかく、やっと静かになった。周囲の会話はよく理解できないが皆小声に抑えてくれている。夢主は納得したような面持ちで眠りについた。