番外編41:都合の良い褒美
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個室への扉が規則正しく並ぶ、一本道の廊下。夢主は各扉の円窓の奥には最早目もくれず、一心不乱に甲板を目指していた。
どんなに巨大な豪華客船だろうと、船首に向かって真っ直ぐ突き進んでいけばそう時間はかからない筈だ。間もなく地獄を終えられる。
「見えた…!」
数メートル先の光景は夢主の心に希望と油断をもたらした。獲物が声を漏らす瞬間を見計らったかのように、真横の扉が勢い良く開かれる。
「!?」
男の手が夢主を薄暗い部屋へ引きずり込み、高級そうなソファへ投げつけた。
「……」
暗闇にまだ目が慣れないが、ここは要人が使用するような応接室らしい。
犯人は逆光を浴びながらこちらをじっと見てくる。
「っ……」
体が動かない。蛙が蛇に睨まれた感覚とは正にこのことを言うのだろうか。
気付けば夢主は押し倒されていた。男のネクタイは重力に従って垂れ下がり、夢主の胸の中心をわざわざなぞってから脇へ滑り落ちる。
「残念だったな」
「っ…!」
少女は息を止め歯を喰い縛った。
「……」
意味深な沈黙の後、ジュウベエは体を起こし立て膝で夢主を跨いだまま通信機を取り出した。
「ティム。お前の実験体を拘束した。甲板前の応接室だ。すぐ戻る」
『ご苦労』
報告を端的に済ませたが、ジュウベエはその通話を切らずにいる。
「立て」
「……終わり……ですか」
「そうだ」
夢主は不思議そうに男性を見つめつつ、無傷な体をソファからゆっくり起こす。
「あ、あの」
「何だ」
「身の安全は保障しないって、さっきは…」
「ジョエルに捕まればの話だ」
「ジュウベエー!」
噂をすれば、そのジョエル本人が部屋のドアを開け放った。勢い余った扉は跳ね返り、また彼によって押し退けられた。逆光の中、男の黄金仮面の端がキラリと光る。
「やっぱそっち側の部屋だったか、話し声とか壁越しに聞こえたぜ。っつーことで!報告前のお楽しみを…」
『何がお楽しみだ』
「ティム!?は!?それっ、通話中かよジュウベエ!」
報告者は無言で端末を小さく掲げる。通話相手はこのゲームの提案者兼、権限所有者だ。
『さっさと実験体をこちらへ連行しろ。貴重なサンプルに許可無く手を加えようとするな』
「なんだよー、じゃあマジで鬼ごっこしただけじゃねえか!」
おあずけを食らったジョエルは戻り際も諦め切れず、執拗に仲間をそそのかしにかかる。
「なあジュウベエ~」
「離れろ、歩きづらい」
「ちょっとぐらい味見したってバレねえよ」
『聞こえているぞジョエル。第一、貴様の要望に応えるつもりは最初から無い』
「ジョーダンだって。てかいい加減通話切れよ」
ジュウベエは背後からの文句を一切無視して夢主に先頭を歩かせ続けた。
どんなに巨大な豪華客船だろうと、船首に向かって真っ直ぐ突き進んでいけばそう時間はかからない筈だ。間もなく地獄を終えられる。
「見えた…!」
数メートル先の光景は夢主の心に希望と油断をもたらした。獲物が声を漏らす瞬間を見計らったかのように、真横の扉が勢い良く開かれる。
「!?」
男の手が夢主を薄暗い部屋へ引きずり込み、高級そうなソファへ投げつけた。
「……」
暗闇にまだ目が慣れないが、ここは要人が使用するような応接室らしい。
犯人は逆光を浴びながらこちらをじっと見てくる。
「っ……」
体が動かない。蛙が蛇に睨まれた感覚とは正にこのことを言うのだろうか。
気付けば夢主は押し倒されていた。男のネクタイは重力に従って垂れ下がり、夢主の胸の中心をわざわざなぞってから脇へ滑り落ちる。
「残念だったな」
「っ…!」
少女は息を止め歯を喰い縛った。
「……」
意味深な沈黙の後、ジュウベエは体を起こし立て膝で夢主を跨いだまま通信機を取り出した。
「ティム。お前の実験体を拘束した。甲板前の応接室だ。すぐ戻る」
『ご苦労』
報告を端的に済ませたが、ジュウベエはその通話を切らずにいる。
「立て」
「……終わり……ですか」
「そうだ」
夢主は不思議そうに男性を見つめつつ、無傷な体をソファからゆっくり起こす。
「あ、あの」
「何だ」
「身の安全は保障しないって、さっきは…」
「ジョエルに捕まればの話だ」
「ジュウベエー!」
噂をすれば、そのジョエル本人が部屋のドアを開け放った。勢い余った扉は跳ね返り、また彼によって押し退けられた。逆光の中、男の黄金仮面の端がキラリと光る。
「やっぱそっち側の部屋だったか、話し声とか壁越しに聞こえたぜ。っつーことで!報告前のお楽しみを…」
『何がお楽しみだ』
「ティム!?は!?それっ、通話中かよジュウベエ!」
報告者は無言で端末を小さく掲げる。通話相手はこのゲームの提案者兼、権限所有者だ。
『さっさと実験体をこちらへ連行しろ。貴重なサンプルに許可無く手を加えようとするな』
「なんだよー、じゃあマジで鬼ごっこしただけじゃねえか!」
おあずけを食らったジョエルは戻り際も諦め切れず、執拗に仲間をそそのかしにかかる。
「なあジュウベエ~」
「離れろ、歩きづらい」
「ちょっとぐらい味見したってバレねえよ」
『聞こえているぞジョエル。第一、貴様の要望に応えるつもりは最初から無い』
「ジョーダンだって。てかいい加減通話切れよ」
ジュウベエは背後からの文句を一切無視して夢主に先頭を歩かせ続けた。