番外編41:都合の良い褒美
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また息を止めてやり過ごしている間、夢主は自分の中の意思を自覚した。
やはり、まだ諦めたくない。だからこそ今も必死に隠れている。本能で抗っている。
特に、ジョエルという男には捕まってはいけない。
「……」
すぐ近くで足音が止んだ。
声を出せば絶対見つかってしまう。夢主は体を縮こませて心の底から祈った。
早くどこかへ行って。ここには誰も居ない、探さないで。
「そんなところにいらっしゃったのですね」
鬼は立ったまま屈んで顔を覗かせてきた。顔と言っても、全面を洒落たマスクで隠されているので真の表情はうかがえない。
「こんにちは」
彼は左手を胸に当て、もう片腕を体の後ろへ回しお辞儀をした。嘗めきったとも紳士的ともいえる態度に、夢主はひと睨みしてから背を向ける。
「お待ちください」
制止を聞かずに夢主は走り続けた。
「やれやれ……ただの恐怖との区別もつかない程憔悴していますね、実にお痛わしい」
「こ、怖いだけじゃない!」
十分な距離を取れたこともあるが、夢主は捕縛よりも誤解や歪曲をされることの方が納得いかず、思わず立ち止まって反論した。
「私の意志で逃げてるんです!逃げることに決めたんです!」
「それは結構。ですが、身の安全を保障されたくありませんか?」
マニーノは左手だけで呆れ返るポーズを取り、必死な夢主を鼻で笑う。
「今ここで私に捕まれば、安全に元居た牢屋までお連れしますよ。同じ鬼は鬼でも、野蛮な鬼には捕まりたくないでしょう。どうです?」
「私は、まだ……諦めたくない!」
「そういえば、そろそろランチの時間ですねえ」
見計らったかのようなタイミングだった。夢主のお腹が控えめに鳴る。
「長時間の飲まず食わずがこれからも続くだなんて、想像しただけで私まで辛いです」
「こ、これくらい…」
「私は貴女を心配しているだけです。他の悪い大人達と違って」
「……」
「さあ、大人しく…」
「居たわ!あそこよ!」
2人の世界になりかけていたところへ、ロゼッタの大声が夢主を現実へ引き戻した。
「何ボーッとしてんのよマニーノ!やる気無いなら退いて、邪魔よ!」
強気な仲間はアニマル属性のヴィラン2名を引き連れ、表情の全てを隠している男の横をドタバタと駆け抜けていった。
「……ふむ。お嬢さん、間一髪といったところでしたね」
マニーノが体の後ろに終始隠したままの右手には、実験体の拘束とは使用目的の異なる手錠が握られていた。
やはり、まだ諦めたくない。だからこそ今も必死に隠れている。本能で抗っている。
特に、ジョエルという男には捕まってはいけない。
「……」
すぐ近くで足音が止んだ。
声を出せば絶対見つかってしまう。夢主は体を縮こませて心の底から祈った。
早くどこかへ行って。ここには誰も居ない、探さないで。
「そんなところにいらっしゃったのですね」
鬼は立ったまま屈んで顔を覗かせてきた。顔と言っても、全面を洒落たマスクで隠されているので真の表情はうかがえない。
「こんにちは」
彼は左手を胸に当て、もう片腕を体の後ろへ回しお辞儀をした。嘗めきったとも紳士的ともいえる態度に、夢主はひと睨みしてから背を向ける。
「お待ちください」
制止を聞かずに夢主は走り続けた。
「やれやれ……ただの恐怖との区別もつかない程憔悴していますね、実にお痛わしい」
「こ、怖いだけじゃない!」
十分な距離を取れたこともあるが、夢主は捕縛よりも誤解や歪曲をされることの方が納得いかず、思わず立ち止まって反論した。
「私の意志で逃げてるんです!逃げることに決めたんです!」
「それは結構。ですが、身の安全を保障されたくありませんか?」
マニーノは左手だけで呆れ返るポーズを取り、必死な夢主を鼻で笑う。
「今ここで私に捕まれば、安全に元居た牢屋までお連れしますよ。同じ鬼は鬼でも、野蛮な鬼には捕まりたくないでしょう。どうです?」
「私は、まだ……諦めたくない!」
「そういえば、そろそろランチの時間ですねえ」
見計らったかのようなタイミングだった。夢主のお腹が控えめに鳴る。
「長時間の飲まず食わずがこれからも続くだなんて、想像しただけで私まで辛いです」
「こ、これくらい…」
「私は貴女を心配しているだけです。他の悪い大人達と違って」
「……」
「さあ、大人しく…」
「居たわ!あそこよ!」
2人の世界になりかけていたところへ、ロゼッタの大声が夢主を現実へ引き戻した。
「何ボーッとしてんのよマニーノ!やる気無いなら退いて、邪魔よ!」
強気な仲間はアニマル属性のヴィラン2名を引き連れ、表情の全てを隠している男の横をドタバタと駆け抜けていった。
「……ふむ。お嬢さん、間一髪といったところでしたね」
マニーノが体の後ろに終始隠したままの右手には、実験体の拘束とは使用目的の異なる手錠が握られていた。