番外編40:都合良く閉じ込められたら 作成途中
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今回のお相手に大股で近付かれ、夢主は咄嗟に両腕で顔をガードした。
だが、用があるのはその手首。掴まれた片方が彼の唇へと運ばれる。
「!」
「……」
前もっての印象より柔らかなそれは、図らずとも夢主の手の平に当てられる形となった。
「……」
「……」
どちらかというと親指側の腹に密着させたまま、ジュウベエは動かない。
「あ、の…まだ……なんでもないですっ」
「……」
じろりと睨まれてしまい夢主は思わず視線を外した。
だが視界の外であろうと、神経の特に集まる指先が嫌という程教えてくれる。彼のひんやりとしたこめかみ、骨の存在を感じる眉下、親指が触れている硬い鼻、そして手の平にはしっとりとした唇。
リアルな凸凹とした顔の感触だ。服越しにだって他人へ自ら触れに行くことの滅多にない夢主。仮面によりひた隠しにされていた部位なだけに、手が汗ばんでしまう。夢主本人は気付いていないが、速まる脈打ちは相手の下唇を通して筒抜け状態。
ひとつ前の部屋で3人分の頬や手の甲にキスを落とした際は割と平気だったのに、どうして、こうも。
「開かないか」
「へ?……あ!そ、そうみたいですね…!」
こんなにも長い間味わわされたのは、次の扉が開かれる気配すら無かった為である。
「やり返せ」
意識が過集中していた手を放され、ほぼ同時に拳を真っ直ぐ突き出された。
「やり返…?……あっ、はい!」
慌てて目の前のものへ唇を押し当てたので、骨の出っ張り1ヵ所を余計に包む形になる。
「まだ開かねえぞ?」
ジョエルの報告を受け、夢主の照れる間もなく拳は降ろされた。
「人選は誤っていない。2人はキスをするにはした。だが扉は施錠されたまま。とすると……」
ティム達がなんとなく察していた予感が確信に変わる。
条件は、要望だ。
首謀者の納得が行くような躍り方をしなければ、自分達は解放を許されない。
「これは、今までのようにはやり過ごせないということでしょうね」
「そ、そうなんですか……え?ってことは……つまり…!」
夢主はのぼせかけていた頭でようやく彼等の思考に追い付く。そしてまた一気に血が昇る。
キス、と聞いて単純に思いつく絵面とは、愛し合う者同士が互いに口と口を寄せ合う、あのキス。
「まだだ。諦めるのは試してからにしろ」
彼は彼女の頬を包んで急接近するが、寸でのところで停止した。
「ひぅっ!?……?」
真似だけだ。肝心な部分はジュウベエの手で覆われている。反射的に目を閉じていた夢主はそのことに遅れて気付いた。
「……反応無し。把握されているぞ、ジュウベエ」
「はあ?今してなかったのかよ?」
ジュウベエは微動だに出来なくなった相手と、今度は鼻と鼻とをこすり合わせ始める。
「っ…!」
当たり前だが、目蓋のすぐ先には彼の気配。一歩間違えれば本当に口付けを果たしてしまう超至近距離。
夢主は何故こんなことをされているのか理解できないし、質問する余裕もない。とにかく、この時間が早く終わってくれるよう願うばかり。
「なぁ、やっぱ口と口だって~」
「ジュウベエ、もう手は尽くした」
「その……逆に負担になっていませんか?お嬢さんにとって」
「……」
一旦距離を置かれ、夢主はゆっくり両目を開く。
マニーノの指摘を取りあえず聞き入れたジュウベエは、少女から視線を逸らし眉間のシワを深める。彼は次の手立てを考え中だが、どうにも八方塞がりのようで静かに目を瞑った。
「あ、あの、どうしてそこまで…」
盛大な舌打ちが返ってきたことで夢主は謝罪すら出来ずに息を詰まらせる。彼の剣幕に、正面の初な少女だけでなくマニーノまで肩を微かに震わせた。
「あれですよ、ジュウベエなりの気遣いですよ。そうでしょう?そうですよね?」
「お前ジュウベエのこと嫌ってんだろ?察しろってー」
「怖がっている、の方が適切ではないか?」
「……」
うんと顔を背けている当人からは無言の圧力。最初に質問を受けたのは彼なのに、場は夢主の回答を待っている。
「それも、ありますけれど……」
「……」
「その、貴方とは……なんと言いますか……」
「……」
「軽々しくちゅ、ちゅうなんてしてはいけないっ……と、思いまして……」
「はぁ?」
予想だにしなかった暴露内容に、男性は思わず声を漏らし顔をこちらへ向けてきた。夢主は自分の足先を凝視して目と目のかち合いを避ける。
「そう思ったからっ、さっきは他の方を選んだんです…」
心の内を言い切ってから顔に熱が集まり始めた。照れる必要など微塵も無いのに。静まれと念じれば念じる程焦燥も相まって、ますます顔を上げ辛い色へ頬と耳が染まる。
「んだよそれ、俺等には軽々しくてオーケーってことか!?ま、その方がラッキーだけど」
「……この状況で、軽いも重いも無い。指示をこなさなければ脱出不可能。だから今は指示に従うし従え。それだけだ」
か弱い両肩に頑丈な両手が重くのし掛かる。彼の体温は一貫した態度とは裏腹に高いのだろうか、夢主の鎖骨までもがワイシャツ越しにじんわり温められた。
「……」
この部屋を脱出するために大人側が屈んでくる。もう下を向いて無視などしていられない。
「やれ」
短く命令したきり、ジュウベエは目と口を閉じた。
「私から、ですか…!?」
「実験体、他人のタイミングで良いのか?」
「ジュウベエにどこまで気ぃ使わせるんだよ」
「……わかり、ました」
タイムモード状態のロールシャッハがこれより始まる行為を認知できているか定かではないが、夢主はパートナーに対し勝手に抱いている罪悪感からバイオバンドを利き手で覆った。
「行きます…!」
覚悟を決め夢主はほんの少し唇を尖らせたが、体の震えがピークに達し、結局どこにも接することなく引っ込めた。
やはり抵抗がある。
同じことを何度か繰り返した後、夢主は助け舟を求め待機中の3人へ目で訴えた。
「我々にはどうすることも出来ん」
「それやんなきゃ出らんねーだろ」
「まあまあ、一旦休憩入れませんか?」
「はいぃ……」
ジュウベエは中腰を止め、相手の肩をやや突き放すようにして解放した。
半歩よろめいた夢主は両手で顔を覆い小さくなる。茹でダコはかなりの温度だろうと思っていたが、触れる手の方もなかなかの熱を帯びていてどっちもどっちだった。
「ジュウベエ見てたか?コイツ今しおっしおだけどよ、さっきまでいっちょ前にオンナの顔だったぞ」
「なっ!?」
そんなつもりは毛頭無い。ただただ必死なだけだ。
夢主がそう言い訳するよりも先にギャラリーから追撃を受ける。
「ジュウベエは目を閉じていたから視認は不可能だっただろう」
「惜しいことをしましたねぇ。素敵で貴重な光景でしたよ」
「な、なっ、な…!」
そこまで意地悪を言わなくても良いではないか。運良く傍観者側になった分際のくせに、こちらの気も知らないで。
自分にとって不利な4対1の勢力図が目に浮かぶ。元より彼等との関係性はディスクを奪い合うヒーロー側とヴィラン組織。この程度、当然の扱いなのだろう。
「泣ぁくなってー、メンド臭ぇな~」
「泣いてません…そっちこそ、笑わないでく…」
挙げ句、正面の相手には無言で睨まれた。
「……」
譲歩してやっているにも関わらず、この体たらく。そう言い放たれた気がした。
「あう、ごめんなさいっ!次は必ず…!」
「無い」
「……え?」
「負け犬が」
何だかんだで彼はまた同じようにして待ってくれる筈。都合の良いように先を想定していた夢主は目を丸くしてジュウベエを見上げる。
「機会を生かせない自分を恨め」
今度の彼は屈まない。
首根っこと背中に手を回され、あとは夢主が引き寄せられるだけ。
「待っ…!」
本人の意思とは無関係に夢主はつま先立ちにさせられた。
だが、用があるのはその手首。掴まれた片方が彼の唇へと運ばれる。
「!」
「……」
前もっての印象より柔らかなそれは、図らずとも夢主の手の平に当てられる形となった。
「……」
「……」
どちらかというと親指側の腹に密着させたまま、ジュウベエは動かない。
「あ、の…まだ……なんでもないですっ」
「……」
じろりと睨まれてしまい夢主は思わず視線を外した。
だが視界の外であろうと、神経の特に集まる指先が嫌という程教えてくれる。彼のひんやりとしたこめかみ、骨の存在を感じる眉下、親指が触れている硬い鼻、そして手の平にはしっとりとした唇。
リアルな凸凹とした顔の感触だ。服越しにだって他人へ自ら触れに行くことの滅多にない夢主。仮面によりひた隠しにされていた部位なだけに、手が汗ばんでしまう。夢主本人は気付いていないが、速まる脈打ちは相手の下唇を通して筒抜け状態。
ひとつ前の部屋で3人分の頬や手の甲にキスを落とした際は割と平気だったのに、どうして、こうも。
「開かないか」
「へ?……あ!そ、そうみたいですね…!」
こんなにも長い間味わわされたのは、次の扉が開かれる気配すら無かった為である。
「やり返せ」
意識が過集中していた手を放され、ほぼ同時に拳を真っ直ぐ突き出された。
「やり返…?……あっ、はい!」
慌てて目の前のものへ唇を押し当てたので、骨の出っ張り1ヵ所を余計に包む形になる。
「まだ開かねえぞ?」
ジョエルの報告を受け、夢主の照れる間もなく拳は降ろされた。
「人選は誤っていない。2人はキスをするにはした。だが扉は施錠されたまま。とすると……」
ティム達がなんとなく察していた予感が確信に変わる。
条件は、要望だ。
首謀者の納得が行くような躍り方をしなければ、自分達は解放を許されない。
「これは、今までのようにはやり過ごせないということでしょうね」
「そ、そうなんですか……え?ってことは……つまり…!」
夢主はのぼせかけていた頭でようやく彼等の思考に追い付く。そしてまた一気に血が昇る。
キス、と聞いて単純に思いつく絵面とは、愛し合う者同士が互いに口と口を寄せ合う、あのキス。
「まだだ。諦めるのは試してからにしろ」
彼は彼女の頬を包んで急接近するが、寸でのところで停止した。
「ひぅっ!?……?」
真似だけだ。肝心な部分はジュウベエの手で覆われている。反射的に目を閉じていた夢主はそのことに遅れて気付いた。
「……反応無し。把握されているぞ、ジュウベエ」
「はあ?今してなかったのかよ?」
ジュウベエは微動だに出来なくなった相手と、今度は鼻と鼻とをこすり合わせ始める。
「っ…!」
当たり前だが、目蓋のすぐ先には彼の気配。一歩間違えれば本当に口付けを果たしてしまう超至近距離。
夢主は何故こんなことをされているのか理解できないし、質問する余裕もない。とにかく、この時間が早く終わってくれるよう願うばかり。
「なぁ、やっぱ口と口だって~」
「ジュウベエ、もう手は尽くした」
「その……逆に負担になっていませんか?お嬢さんにとって」
「……」
一旦距離を置かれ、夢主はゆっくり両目を開く。
マニーノの指摘を取りあえず聞き入れたジュウベエは、少女から視線を逸らし眉間のシワを深める。彼は次の手立てを考え中だが、どうにも八方塞がりのようで静かに目を瞑った。
「あ、あの、どうしてそこまで…」
盛大な舌打ちが返ってきたことで夢主は謝罪すら出来ずに息を詰まらせる。彼の剣幕に、正面の初な少女だけでなくマニーノまで肩を微かに震わせた。
「あれですよ、ジュウベエなりの気遣いですよ。そうでしょう?そうですよね?」
「お前ジュウベエのこと嫌ってんだろ?察しろってー」
「怖がっている、の方が適切ではないか?」
「……」
うんと顔を背けている当人からは無言の圧力。最初に質問を受けたのは彼なのに、場は夢主の回答を待っている。
「それも、ありますけれど……」
「……」
「その、貴方とは……なんと言いますか……」
「……」
「軽々しくちゅ、ちゅうなんてしてはいけないっ……と、思いまして……」
「はぁ?」
予想だにしなかった暴露内容に、男性は思わず声を漏らし顔をこちらへ向けてきた。夢主は自分の足先を凝視して目と目のかち合いを避ける。
「そう思ったからっ、さっきは他の方を選んだんです…」
心の内を言い切ってから顔に熱が集まり始めた。照れる必要など微塵も無いのに。静まれと念じれば念じる程焦燥も相まって、ますます顔を上げ辛い色へ頬と耳が染まる。
「んだよそれ、俺等には軽々しくてオーケーってことか!?ま、その方がラッキーだけど」
「……この状況で、軽いも重いも無い。指示をこなさなければ脱出不可能。だから今は指示に従うし従え。それだけだ」
か弱い両肩に頑丈な両手が重くのし掛かる。彼の体温は一貫した態度とは裏腹に高いのだろうか、夢主の鎖骨までもがワイシャツ越しにじんわり温められた。
「……」
この部屋を脱出するために大人側が屈んでくる。もう下を向いて無視などしていられない。
「やれ」
短く命令したきり、ジュウベエは目と口を閉じた。
「私から、ですか…!?」
「実験体、他人のタイミングで良いのか?」
「ジュウベエにどこまで気ぃ使わせるんだよ」
「……わかり、ました」
タイムモード状態のロールシャッハがこれより始まる行為を認知できているか定かではないが、夢主はパートナーに対し勝手に抱いている罪悪感からバイオバンドを利き手で覆った。
「行きます…!」
覚悟を決め夢主はほんの少し唇を尖らせたが、体の震えがピークに達し、結局どこにも接することなく引っ込めた。
やはり抵抗がある。
同じことを何度か繰り返した後、夢主は助け舟を求め待機中の3人へ目で訴えた。
「我々にはどうすることも出来ん」
「それやんなきゃ出らんねーだろ」
「まあまあ、一旦休憩入れませんか?」
「はいぃ……」
ジュウベエは中腰を止め、相手の肩をやや突き放すようにして解放した。
半歩よろめいた夢主は両手で顔を覆い小さくなる。茹でダコはかなりの温度だろうと思っていたが、触れる手の方もなかなかの熱を帯びていてどっちもどっちだった。
「ジュウベエ見てたか?コイツ今しおっしおだけどよ、さっきまでいっちょ前にオンナの顔だったぞ」
「なっ!?」
そんなつもりは毛頭無い。ただただ必死なだけだ。
夢主がそう言い訳するよりも先にギャラリーから追撃を受ける。
「ジュウベエは目を閉じていたから視認は不可能だっただろう」
「惜しいことをしましたねぇ。素敵で貴重な光景でしたよ」
「な、なっ、な…!」
そこまで意地悪を言わなくても良いではないか。運良く傍観者側になった分際のくせに、こちらの気も知らないで。
自分にとって不利な4対1の勢力図が目に浮かぶ。元より彼等との関係性はディスクを奪い合うヒーロー側とヴィラン組織。この程度、当然の扱いなのだろう。
「泣ぁくなってー、メンド臭ぇな~」
「泣いてません…そっちこそ、笑わないでく…」
挙げ句、正面の相手には無言で睨まれた。
「……」
譲歩してやっているにも関わらず、この体たらく。そう言い放たれた気がした。
「あう、ごめんなさいっ!次は必ず…!」
「無い」
「……え?」
「負け犬が」
何だかんだで彼はまた同じようにして待ってくれる筈。都合の良いように先を想定していた夢主は目を丸くしてジュウベエを見上げる。
「機会を生かせない自分を恨め」
今度の彼は屈まない。
首根っこと背中に手を回され、あとは夢主が引き寄せられるだけ。
「待っ…!」
本人の意思とは無関係に夢主はつま先立ちにさせられた。