あるヒーローを出迎えるために、アキラ達とアベンジャーズは全員玄関前に集合していた。彼等の目の前に現れたのは、楕円体で正面に大きな円い窓二つが目のように付いた、宙に浮く乗り物。

「何だぁ？あの乗り物」
「可愛い～！動物の赤ちゃんみたい！」

その見慣れない飛行機は、煙を出しながら彼等より少し離れた位置に着陸する。側面のハッチが開くと、中から面識のある人物が来訪者二人を連れて降り立つ。

「皆さん、お久しぶり～！」
「よく来たな！ピーター」

明るい挨拶にホログラム状態のトニー・スタークも明るく返す。

「ピーター、久し振り！と、その人達って…」

アキラが彼の後ろに居る茶色っぽい二人の男に顔を向ける。

「さっき電話で話してた、紹介したいヒーローって彼等のことね」
「その通り！」

ワスプの言葉にピーターは陽気に返す。一人はトレンチコートに全面マスク、もう一人はタイツと茶色のマントにゴーグル。ぱっと見、ヒーローかと言えば……まあヒーローだ。

「ええと、ロールシャッハと……ナイトウォッチャー、だっけ？」
「初めましてアイアンマン、ナイトオウルだ」

かの有名なスターク社長に名前を間違えられたにも関わらず、そのまま挨拶し穏やかな口調で訂正。

「あーっと、こりゃあ失礼」
「気にしないでくれ、僕はかなりマイナーなヒーローだから」
「オウル……フクロウのヒーロー？」

アキラ達もこの二人に実際に会うのは初めてだ。

「そうさ。君がアキラくんだね。ピーターから君達の話は聞いているよ。初めまして」
「初めまして！あの丸い乗り物も、もしかしてフクロウ？」

元気な子供はしっかり握手しながら興味津々に尋ねる。

「アーチーのことか。そうだよ、僕が造ったんだ」
「造った！？」
「スッゲー！！」
「特殊な形をしているんですね、興味深いです！」

駆け出さないなりにも男の子達は乗り物に夢中だ。ナイトオウルの口角が上がる。

「初めまして、ジェシカ・シャノンよ」
「初めましてジェシカ。会えて嬉しいよ」

良いとこ育ちのお嬢様は一歩出てしっかり挨拶を済まし、もう一人にも平等に手を差し出した。

「貴方も！初めまして」
「あ、君…」
「えーと、ジェシカ…その…」

これは引き止めるべきではないか？と、ナイトオウルとエドがいち早く気付いた。

初対面の、特に嗅覚が比較的鋭い女性には注意が必要だと知らせたい。が、ストレートに言ってしまうべきか、それとなく距離をとらせつつ風上に誘導するべきか、どうフォローすれば良いのか迷ってしまった二人はまごつく。

その隙にロールシャッハの個性が炸裂してしまった。

「うっ？……何この臭い、くっさー！貴方ちゃんとお風呂入ってんの！？」

ジェシカは鼻をつまみ涙目で彼を睨みつける。社交辞令をわきまえているセレブが初対面の人間に対しこんな態度をとってしまう程、彼女の鼻はショックを受けたらしい。

「…悪かったな」
「よく見たらコートもボロボロじゃない！」

さっさと距離をとり、棒立ちする彼の左肩や胸元を指す。そんな彼女にナイトオウルが丁寧に謝った。

「申し訳無い、彼はその……身だしなみ等への関心が薄くて…」
「それに、これこそがロールシャッハの戦法なんだよ」
「ハァ？臭いのが？」

ジェシカの隣に立つエドがハキハキした声で説明を始める。

「相手を今のジェシカみたいにひるませている隙に殴ったり蹴ったり頭突きしたり、次々と攻撃を繰り出すんだ！」
「えぇー？そんなの全然ヒーローじゃなーいっ！」
「小娘が…！」

掴みにかからない代わりに、ロールシャッハのマスクの模様は激しい流動を始めた。

「ま、まあまあ！立ち話もなんだし、まずは部屋に入れてくんない？」
「お前が言うなピーター」

様子を見ていたピーターがやっと間に入り、そこにアイアンマンがため息混じりに突っ込みを入れる。なんとか空気が和んだ。

「だが、それもそうだな。電話で聞いた感じ、かなり訳アリなんだろう？」
「…フム」