「朝から騒がしいわねー」
「どうしたの？」

寝坊助達の様子を見に来たジェシカとエドが、背後から洗面台の鏡にひょっこり映り込む。

「ピーターが気を使ってくれたわよ」
「来る時間早すぎちゃったから支度はゆっくりで良いよ、だって」
「あのさ、俺まあまあスッゲー発見したんだ！夢主の胸触ってみなよ」
「はぁ！？」
「えぇっ？」

彼よりは常識を持ち合わせている２人は面を食らい顔をしかめた。

「思ってたよりひんやりしていて気持ち良いんだ！」
「な、何してたんだよ洗面所で～…びっくりさせないでよぉ…」
「夢主、嫌なことは嫌ってハッキリ言いなさいよ？」
「は、はぁ…」

エドはアキラを、ジェシカは夢主をそれぞれ薄目で睨む。自由奔放さやロールシャッハと無関係な話題においてまごつくといった個々の性格は、指摘したところですぐ直るものでもないが。

「まあでも、アキラの言ってることも一理あるわ。バストは脂肪の塊だし。えーいっ」

そう言い切るとジェシカは夢主の胸に顔面から軽く飛び込んだ。彼女を抱き止めるため、胴の前にあった腕のガードは緩み、自然とジェシカを受け入れていた。

「ジェシカちゃん！？」
「嫌って言わないからこうなるのよー」

女子同士のじゃれ合いにはなんとなく介入し難く、男子諸君はほんの少しだけ距離を取る。

「なんだよジェシカのやつ、俺に文句言っておいて自分もやってるじゃん」
「まあまあ、これはこれで良い眺めじゃないか」
「えー？どこが？」
「スタークさん。大概にしてくれませんか」

いつの間にかアキラの着替えを持ってきたヒカルは普段の穏やかな笑顔と共に軟派な大人を牽制した。

「ちょっとした軽口くらい大目に見てくれよ。アキラがヒカルに夢主へのダイブを勧めたことに比べりゃあ可愛いモンだろう？」
「えぇ！？アキラ、あんた…！」

ジェシカは夢主からあっさり離れ、文字通りアキラの目と鼻の先へ人差し指を突き出す。

「エドにはともかく、ヒカルには勧めちゃダメでしょ！」
「えっ！？ぼ、僕はともかくって…」

何故か論外としてスキンシップを許され、エドは複雑な気持ちになった。

「あー、エドくんなら…」
「えぇ…！？」

大人やお年頃の異性にはとても出来ないが、ある程度年下で真面目なエドならば抱擁に抵抗を感じない。

「良かったらどうぞ？」
「どうぞ、じゃないよ！僕だって…僕だって立派な男なんだからね！」

そう叫ぶと真っ赤な男児は皆の待つリビングへ逃げ帰った。