番外編38:都合の悪い不測
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「ああ、そっちの手が良いかな」
ひざまづいた彼から言われた通りに差し出すと、手触りの良い手袋が下からすくい上げてきた。目を閉じているので見えていないが分かる、これは手の甲に接吻される体勢だ。
続いてもう片方の手が上にそっと重ねられるが、少し間を置いてから、するりと解かれかける。
もう済んだのかと思いきや、指はまだ彼の手の中。
「!?」
キスよりもそれは、浅く咥えられた感触。人の身体において神経の多く集まる指先が、相手の柔らかさや体温をしかと受け取り今日再び熱を帯びる。
開眼したものの頭ごなしに拒否も出来ず戸惑っていると、ピーターは余裕の表情で片目を瞑った。
「ビックリした?おっちょこちょいさん」
「その、なんと言えば…良いか…」
妙な雰囲気を作り出してしまったことを果たしてこの男は理解しているのだろうか。ピーターは随分と得意気だ。
「恥ずかしいです…」
そっぽを向いてもむしろ頬と耳の赤みを見せつけるだけで、ますます犯人の気を良くした。
「だっていたずらだもん」
先程唇を落とした傷痕に改めて触れ、優しく目を伏せる。
「これ以上火傷しないよう気を付けてね」
「ピーターさん…」
「オーブンにも、オオカミ男にも」
「その~…」
「貴様は駄目だ」
スパイダーセンス遅し、格好つけるために後ろに組んでいた左手をガッチリ掴まれてしまった。
「記憶違いだったか?吸血鬼は対象者の許可無しには部屋にすら上がり込めない筈だ」
「ロールシャッハ~…やあやあお早いお帰りだね、みんなから聞いたよ。どうしたの?まだお菓子貰い足りなかった?いたたたたっ!君だったら仮装無しでも十分いけるね、だってそのマスクがあるから。君はそのままの姿で今夜街を練り歩けば1年分の角砂糖が集まるんじゃないかな」
「饒舌なオオカミ男だ。銀の弾が効くだろう」
「どっちかって言うならクールな吸血鬼でお願いするよ」
「木の杭をご所望か。来い」
顔の見えない男によって人間が廊下の暗闇へ引きずり込まれていく様はパーティー気分の子供達を戦慄させた。
「待って!火傷の痕を診てただけだって~!」
ロールシャッハは容疑者の拘束を一切緩めず、未だに火照りの引かないパートナーを見やる。
「いたずらされました…」
「ほう」
からかった女の子が庇ってくれる程世の中は甘くなかった。
「恥ずかしいって、私言ったのに…ずっと…」
「丁度有り余っていたところだったんだ。体力がな」
「ちょっ……スタークさん!」
ピーターはテーブルの上であえて傍観しているヒーローに助けを求める。
「悪い、ピーター。今回はフォロー出来ない」
「若気の至りにしては度が過ぎる」
「あまりにも軽率な行為だったと言わざるを得ない」
「自業自得だ」
「お灸据えて貰いなさい」
正義の味方にも見限られた。最早自分を守れるのは自分のみだが、都合の悪いことに、今はスパイダーマンの力を発揮できる状況ではない。
「いやっその、本当はおまじないしようとしてたんだ。痛くない痛くなーいって。でもじっとしてる夢主を見てたら魔が差したって言うか、ちょっかい出しやすそうっていうか、反応面白そうっていうか。ほら、今日はハロウィンじゃん!?」
「そうか。貴様に悪戯してやる」
「ひぃー!!」
余ったお菓子をつまみながらジェシカが哀れな男へ情けをかける。
「夢主、そろそろ危ないわよ」
「うん。ディー・セキュア」
当初の予定通り、その後はロールシャッハ抜きの晩餐会。暴力沙汰の無い和やかなパーティーとして幕を閉じた。
ひざまづいた彼から言われた通りに差し出すと、手触りの良い手袋が下からすくい上げてきた。目を閉じているので見えていないが分かる、これは手の甲に接吻される体勢だ。
続いてもう片方の手が上にそっと重ねられるが、少し間を置いてから、するりと解かれかける。
もう済んだのかと思いきや、指はまだ彼の手の中。
「!?」
キスよりもそれは、浅く咥えられた感触。人の身体において神経の多く集まる指先が、相手の柔らかさや体温をしかと受け取り今日再び熱を帯びる。
開眼したものの頭ごなしに拒否も出来ず戸惑っていると、ピーターは余裕の表情で片目を瞑った。
「ビックリした?おっちょこちょいさん」
「その、なんと言えば…良いか…」
妙な雰囲気を作り出してしまったことを果たしてこの男は理解しているのだろうか。ピーターは随分と得意気だ。
「恥ずかしいです…」
そっぽを向いてもむしろ頬と耳の赤みを見せつけるだけで、ますます犯人の気を良くした。
「だっていたずらだもん」
先程唇を落とした傷痕に改めて触れ、優しく目を伏せる。
「これ以上火傷しないよう気を付けてね」
「ピーターさん…」
「オーブンにも、オオカミ男にも」
「その~…」
「貴様は駄目だ」
スパイダーセンス遅し、格好つけるために後ろに組んでいた左手をガッチリ掴まれてしまった。
「記憶違いだったか?吸血鬼は対象者の許可無しには部屋にすら上がり込めない筈だ」
「ロールシャッハ~…やあやあお早いお帰りだね、みんなから聞いたよ。どうしたの?まだお菓子貰い足りなかった?いたたたたっ!君だったら仮装無しでも十分いけるね、だってそのマスクがあるから。君はそのままの姿で今夜街を練り歩けば1年分の角砂糖が集まるんじゃないかな」
「饒舌なオオカミ男だ。銀の弾が効くだろう」
「どっちかって言うならクールな吸血鬼でお願いするよ」
「木の杭をご所望か。来い」
顔の見えない男によって人間が廊下の暗闇へ引きずり込まれていく様はパーティー気分の子供達を戦慄させた。
「待って!火傷の痕を診てただけだって~!」
ロールシャッハは容疑者の拘束を一切緩めず、未だに火照りの引かないパートナーを見やる。
「いたずらされました…」
「ほう」
からかった女の子が庇ってくれる程世の中は甘くなかった。
「恥ずかしいって、私言ったのに…ずっと…」
「丁度有り余っていたところだったんだ。体力がな」
「ちょっ……スタークさん!」
ピーターはテーブルの上であえて傍観しているヒーローに助けを求める。
「悪い、ピーター。今回はフォロー出来ない」
「若気の至りにしては度が過ぎる」
「あまりにも軽率な行為だったと言わざるを得ない」
「自業自得だ」
「お灸据えて貰いなさい」
正義の味方にも見限られた。最早自分を守れるのは自分のみだが、都合の悪いことに、今はスパイダーマンの力を発揮できる状況ではない。
「いやっその、本当はおまじないしようとしてたんだ。痛くない痛くなーいって。でもじっとしてる夢主を見てたら魔が差したって言うか、ちょっかい出しやすそうっていうか、反応面白そうっていうか。ほら、今日はハロウィンじゃん!?」
「そうか。貴様に悪戯してやる」
「ひぃー!!」
余ったお菓子をつまみながらジェシカが哀れな男へ情けをかける。
「夢主、そろそろ危ないわよ」
「うん。ディー・セキュア」
当初の予定通り、その後はロールシャッハ抜きの晩餐会。暴力沙汰の無い和やかなパーティーとして幕を閉じた。