番外編38:都合の悪い不測
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部屋の中は再び子供達とアベンジャーズだけになる。
談笑しつつも皆出入口に集中し、最後の参加者を待ち侘びていた。反対側の窓をノックする音に最初に気付いたのは、部屋の端に居たクリスだった。
「トリック・オア・トリート!お菓子くれなきゃいたずらするぞ~!」
「スパイダーマン!?」
「そう!地獄のスケジュールからの帰還者、スパイダーマン!」
部屋に入れてもらえると蜘蛛のヒーローは手首から糸を出す仕草で明るく答えた。
「わぁ~、来てくれてありがとう!はいコレ!」
「あーっと……スパイダーマン?」
助手の予想外のコスプレにトニー・スタークは秘かに焦っていた。が、ハロウィンを盛り上げる為アメリカからわざわざ来てくれたヒーローを追い返す方が不自然だ。
「この後みんなでディナーなんだが、お前もどうだ?」
「実は仕事が立て込んでいて、残念だけどもう行かなきゃいけないんだ。アイアンマンの気持ちとこの美味しそうなお菓子だけ頂いていくよ」
気の早いことにヒーローは早速ドアから出て行こうとする。ふと、壁際の箱に目が留まった。
「これは……びっくり箱にしてはかなりシンプルだね。開けて良かったりする?」
「良いも何も、中身は仮装グッズだよ。今夜は大人も仮装するパーティーなんだ!」
「へぇ~良いなぁ!僕も仮装してみたかったなぁ」
選ばれずに残ったコスプレ衣装をスパイダーマンは自由に漁る。今日一番はしゃいでいるのは彼かもしれない。
「残念ね、向こうには天使の矢が刺さったホークアイも居るのに」
「それはちょっと見てみたい……そうだ!この後来るピーターに前もって仮装するよう渡してくるよ。入れ違いになると思うからさ」
「それ名案!」
タキシード一式に加え、付け牙や白手袋も取り出した彼は一旦別の部屋へ。
「……あの、スタークさん」
「どうした?夢主」
「ピーターさんって、あとどれくらいでいらっしゃいますか?」
「そうだなぁー…間もなく来ると思うぞ。本っ当に、間もなくな」
「でしたら、私…」
夢主が行動を起こすよりも先に、大急ぎで着換えを済ませた青年が再び子供達の前に姿を現した。
「お~待~た~せ~!今さっきスパイダーマンに会って、これを着ていくよう言われたんだ。どうかな?」
急ごしらえとは言え非日常な衣装は、白衣姿のイメージが強い青年のまた違った魅力を引き出してくれた。
「よく似合ってるわよ」
「素敵だと思います」
伸びた犬歯や裏地の赤いマントも女子からのポイントが高く、褒められた本人もご満悦のようだ。
「確かにカッコいいけど、待ちくたびれたよピーター!」
「ごめんごめん。では改めまして、トリック・オア・トリート!」
血色の良い吸血鬼はもう一度マントをひるがえした。
「……いたずらが過ぎるぞ、ピーター」
「え?ピーターまだ何もしてないじゃん」
この者の正体を知るアイアンマンが平静を装う隣で、ヒカルは急に元気の無くなった仲間の様子から何かを察した。
「夢主ちゃん、もしかして…」
「はい…」
この部屋でたった1人だけ、些細な不都合に直面していた。
「あれ?夢主のお菓子、もう無いや」
「え?どうして?」
「アキラがつまみ食いしちゃったのよ」
「違う!夢主がくれたんだよ」
相変わらず言い合っている2人は放っておき、ヒカル達は経緯を説明し始める。
「本当はみんないくつか残る筈だったんですけれど…」
「ロールシャッハやスパイダーマンが偶然来て、あげない訳にもいかねえよなって流れになって」
「夢主はピーターさんが来る前にもう空っぽだったんだね」
「なるほど。夢主はストックがマイナス1。何故ならアキラに取られちゃったから」
「だから違うってばー!……でも、そうだよな」
頬を目一杯に膨らますが、元はと言えば自分のせいでこうなった。アキラはすぐ考えを改め、迷惑を掛けた相手に向き合う。
「ごめん夢主。俺のせいでお菓子無くなっちゃってたんだよね。だから……」
「いいよ、気にしないで。えーと、じゃあ私…」
「夢主だけトリック…いたずらってことだよな?ほんとゴメン!」
夢主はお菓子を取りに行こうとしたが、面白半分に放たれた言葉で歩が止まる。部屋を出るつもりが脅かし役へ身を差し出すような形になってしまい、全ての視線がその2人に集まった。
「なるほど!」
エドはそっと分けてあげようとしていたお菓子を引っ込め、妙案に目を輝かせた。
「ピーター、どんないたずらにするの?」
「ちょ、ちょっと待って!急に言われても…」
予想外の対応を迫られてしまった。吸血鬼の青年は好奇の目から顔を背けると、照れ臭そうにしている女子と目線がかち合った。
「でしたら、その……お手柔らかにお願いします!」
「えーっ、どうしよっか…」
実は数分前にお菓子を貰っている為いたずら不要、なんて交わし方は出来ない。ピーター・パーカーは本日初めてアベンジャーズ基地を訪ねたことになっている。
「でもこれって考えようによっちゃあ結構美味しい状況?」
「妙な気起こすなよ?」
アイアンマンに釘を刺されなくとも、この子に妙な気を起こしたら後々怖いことになるのは夏のバカンスで十分思い知った。周囲からの、特に小さな大人達からの監視の目がやや痛い。
「うーん…」
だが、今ロールシャッハは不在。落ち着いて、自分なりに、相手をしてやれば良いのだ。
少女のカゴを提げた腕、手、指を見て、ピーターはこの場を切り抜る丁度良い方法を思い付いた。
「じゃあ夢主。手を出して、目を瞑って」
談笑しつつも皆出入口に集中し、最後の参加者を待ち侘びていた。反対側の窓をノックする音に最初に気付いたのは、部屋の端に居たクリスだった。
「トリック・オア・トリート!お菓子くれなきゃいたずらするぞ~!」
「スパイダーマン!?」
「そう!地獄のスケジュールからの帰還者、スパイダーマン!」
部屋に入れてもらえると蜘蛛のヒーローは手首から糸を出す仕草で明るく答えた。
「わぁ~、来てくれてありがとう!はいコレ!」
「あーっと……スパイダーマン?」
助手の予想外のコスプレにトニー・スタークは秘かに焦っていた。が、ハロウィンを盛り上げる為アメリカからわざわざ来てくれたヒーローを追い返す方が不自然だ。
「この後みんなでディナーなんだが、お前もどうだ?」
「実は仕事が立て込んでいて、残念だけどもう行かなきゃいけないんだ。アイアンマンの気持ちとこの美味しそうなお菓子だけ頂いていくよ」
気の早いことにヒーローは早速ドアから出て行こうとする。ふと、壁際の箱に目が留まった。
「これは……びっくり箱にしてはかなりシンプルだね。開けて良かったりする?」
「良いも何も、中身は仮装グッズだよ。今夜は大人も仮装するパーティーなんだ!」
「へぇ~良いなぁ!僕も仮装してみたかったなぁ」
選ばれずに残ったコスプレ衣装をスパイダーマンは自由に漁る。今日一番はしゃいでいるのは彼かもしれない。
「残念ね、向こうには天使の矢が刺さったホークアイも居るのに」
「それはちょっと見てみたい……そうだ!この後来るピーターに前もって仮装するよう渡してくるよ。入れ違いになると思うからさ」
「それ名案!」
タキシード一式に加え、付け牙や白手袋も取り出した彼は一旦別の部屋へ。
「……あの、スタークさん」
「どうした?夢主」
「ピーターさんって、あとどれくらいでいらっしゃいますか?」
「そうだなぁー…間もなく来ると思うぞ。本っ当に、間もなくな」
「でしたら、私…」
夢主が行動を起こすよりも先に、大急ぎで着換えを済ませた青年が再び子供達の前に姿を現した。
「お~待~た~せ~!今さっきスパイダーマンに会って、これを着ていくよう言われたんだ。どうかな?」
急ごしらえとは言え非日常な衣装は、白衣姿のイメージが強い青年のまた違った魅力を引き出してくれた。
「よく似合ってるわよ」
「素敵だと思います」
伸びた犬歯や裏地の赤いマントも女子からのポイントが高く、褒められた本人もご満悦のようだ。
「確かにカッコいいけど、待ちくたびれたよピーター!」
「ごめんごめん。では改めまして、トリック・オア・トリート!」
血色の良い吸血鬼はもう一度マントをひるがえした。
「……いたずらが過ぎるぞ、ピーター」
「え?ピーターまだ何もしてないじゃん」
この者の正体を知るアイアンマンが平静を装う隣で、ヒカルは急に元気の無くなった仲間の様子から何かを察した。
「夢主ちゃん、もしかして…」
「はい…」
この部屋でたった1人だけ、些細な不都合に直面していた。
「あれ?夢主のお菓子、もう無いや」
「え?どうして?」
「アキラがつまみ食いしちゃったのよ」
「違う!夢主がくれたんだよ」
相変わらず言い合っている2人は放っておき、ヒカル達は経緯を説明し始める。
「本当はみんないくつか残る筈だったんですけれど…」
「ロールシャッハやスパイダーマンが偶然来て、あげない訳にもいかねえよなって流れになって」
「夢主はピーターさんが来る前にもう空っぽだったんだね」
「なるほど。夢主はストックがマイナス1。何故ならアキラに取られちゃったから」
「だから違うってばー!……でも、そうだよな」
頬を目一杯に膨らますが、元はと言えば自分のせいでこうなった。アキラはすぐ考えを改め、迷惑を掛けた相手に向き合う。
「ごめん夢主。俺のせいでお菓子無くなっちゃってたんだよね。だから……」
「いいよ、気にしないで。えーと、じゃあ私…」
「夢主だけトリック…いたずらってことだよな?ほんとゴメン!」
夢主はお菓子を取りに行こうとしたが、面白半分に放たれた言葉で歩が止まる。部屋を出るつもりが脅かし役へ身を差し出すような形になってしまい、全ての視線がその2人に集まった。
「なるほど!」
エドはそっと分けてあげようとしていたお菓子を引っ込め、妙案に目を輝かせた。
「ピーター、どんないたずらにするの?」
「ちょ、ちょっと待って!急に言われても…」
予想外の対応を迫られてしまった。吸血鬼の青年は好奇の目から顔を背けると、照れ臭そうにしている女子と目線がかち合った。
「でしたら、その……お手柔らかにお願いします!」
「えーっ、どうしよっか…」
実は数分前にお菓子を貰っている為いたずら不要、なんて交わし方は出来ない。ピーター・パーカーは本日初めてアベンジャーズ基地を訪ねたことになっている。
「でもこれって考えようによっちゃあ結構美味しい状況?」
「妙な気起こすなよ?」
アイアンマンに釘を刺されなくとも、この子に妙な気を起こしたら後々怖いことになるのは夏のバカンスで十分思い知った。周囲からの、特に小さな大人達からの監視の目がやや痛い。
「うーん…」
だが、今ロールシャッハは不在。落ち着いて、自分なりに、相手をしてやれば良いのだ。
少女のカゴを提げた腕、手、指を見て、ピーターはこの場を切り抜る丁度良い方法を思い付いた。
「じゃあ夢主。手を出して、目を瞑って」