番外編38:都合の悪い不測
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数分後。次のお客さんが訪れたが、お決まりの挨拶はホークアイしか言ってくれない。
「どうした?苦手なお菓子でもあったか?」
部屋の前に取り残されたブラックウィドウは構えていた銃を仕舞い、その場から動かずに小さな半透明アイアンマンを睨み付けた。断じて子供達の手元ではない。
『至急応援を頼みたい。緊急事態だ!』
「これのどこが緊急事態…!?」
「正に緊急事態だろ。オバケ役が圧倒的に不足している」
深刻な表情で通信してきておいてその実、お気楽なパーティーのお誘いだったとは。現地で合流したホークアイから全く緊張感が伝わってこなかった辺り、呼び出された理由を知らなかったのは自分だけだったらしい。
最悪の事態ではないことが確認できたので、とりあえず肩の力を抜く。
「俺達はこんな姿なんだから、カワイイ妖精役くらいしか務まらないぞ?」
トニー・スタークの言い訳通り、ホログラムの身では出来ることがかなり限られてくる。彼もアカツキ博士も、ディスク内のヴィランを仮装パーティーに参加させるケースまでは想定していなかっただろう。
「見ての通り、この姿ではヒカル達から菓子を受け取ることが出来ない」
「急な召集となってしまい済まないと思っている。が、丁度手が空いている君達が正に適任なのだ」
「なんだ、2人とも仮装してこなかったのか。そこのパーティーグッズを使え」
「可愛いものもあるわよ。私達は出来ないから、代わりにお願いね?」
ウインクをしてみせたワスプとは対照的な機嫌の彼女だが、純粋な瞳の圧を察知する。
この沈黙を占めているのは、ヘソを曲げた客に対する緊張もあるにはあるが、一緒にパーティーを楽しみたいという期待の方が大きい。特に露骨なのがアイアンマンのパートナー。いつの間にか距離を詰めてきていた。
「そうカリカリするな」
ホークアイは大きな段ボール箱の中を早速漁っている。付けると矢が頭を貫通しているように見えるカチューシャを片手にストックし、相方に似合いそうなグッズを吟味中だ。
「丁度任務が一段落したんだぜ。長官とアベンジャーズからのプレゼントだと思えば良いだろう?」
「……そういうことにしておくわ」
トゲの無くなった一言で、子供達に無邪気な笑顔が戻った。
ホークアイは両手がお菓子で埋まったブラックウィドウに近付き、素敵な掘り出し物をそっと被せる。
「待ちなさい」
「よく似合ってるぜ」
「柄じゃないのよ」
「で、俺達はこの後どうすれば良い?」
「脅かし役の人達はお菓子を貰ったらリビングに行っててほしいんだけど、その……ブラックウィドウは本当にそれで良いの?」
ピカピカ光る天使の輪っかに不服そうな彼女も、ご馳走にありつく頃にはハロウィンパーティーに馴染んでいることだろう。ホークアイは連れの意見を完全無視して部屋の入口へ向かう。
ドアを開け廊下に出ようとしたが、コスプレに劣らない強烈なマスクとご対面。ほぐれていた空気が彼の足と共にピタリと止まった。
「……フム。そういった羽の伸ばし方か、天下の諜報機関様」
決定的場面を押さえられ、天使は言葉を失う。
「そう言うお前こそ、いつもながらイカしたコスチュームだな」
「あれ?ロールシャッハ?」
「どうしたんですか?今日は帰らない筈では…」
アキラと夢主が筋肉隆々エージェントの背後から顔を覗かせた。
「粛正し甲斐の無いハロウィンだった。今年は繰り出す日にちを誤った」
「そーなんだ。じゃあ、トリック・オア・トリート!」
予定外の訪問者に対してもアキラは当然の如くお菓子を差し出した。皆も続いて手元のストックを渡していく。やや強引に。
「ム。必要ない。必要ないと言っている!……フム」
かなり強引に。
「どうぞ、ロールシャッハさん。この後みんなで夕食も」
夢主のパートナーは6個目の頂き物も上着のポケットに突っ込むと、早々に自室へ引き篭もってしまった。
「何、あの態度」
「確かに。大人げ無いな」
ホークアイはつい先程のブラックウィドウを思い出しながら、何も追求せずに相槌を打ってやった。
「どうした?苦手なお菓子でもあったか?」
部屋の前に取り残されたブラックウィドウは構えていた銃を仕舞い、その場から動かずに小さな半透明アイアンマンを睨み付けた。断じて子供達の手元ではない。
『至急応援を頼みたい。緊急事態だ!』
「これのどこが緊急事態…!?」
「正に緊急事態だろ。オバケ役が圧倒的に不足している」
深刻な表情で通信してきておいてその実、お気楽なパーティーのお誘いだったとは。現地で合流したホークアイから全く緊張感が伝わってこなかった辺り、呼び出された理由を知らなかったのは自分だけだったらしい。
最悪の事態ではないことが確認できたので、とりあえず肩の力を抜く。
「俺達はこんな姿なんだから、カワイイ妖精役くらいしか務まらないぞ?」
トニー・スタークの言い訳通り、ホログラムの身では出来ることがかなり限られてくる。彼もアカツキ博士も、ディスク内のヴィランを仮装パーティーに参加させるケースまでは想定していなかっただろう。
「見ての通り、この姿ではヒカル達から菓子を受け取ることが出来ない」
「急な召集となってしまい済まないと思っている。が、丁度手が空いている君達が正に適任なのだ」
「なんだ、2人とも仮装してこなかったのか。そこのパーティーグッズを使え」
「可愛いものもあるわよ。私達は出来ないから、代わりにお願いね?」
ウインクをしてみせたワスプとは対照的な機嫌の彼女だが、純粋な瞳の圧を察知する。
この沈黙を占めているのは、ヘソを曲げた客に対する緊張もあるにはあるが、一緒にパーティーを楽しみたいという期待の方が大きい。特に露骨なのがアイアンマンのパートナー。いつの間にか距離を詰めてきていた。
「そうカリカリするな」
ホークアイは大きな段ボール箱の中を早速漁っている。付けると矢が頭を貫通しているように見えるカチューシャを片手にストックし、相方に似合いそうなグッズを吟味中だ。
「丁度任務が一段落したんだぜ。長官とアベンジャーズからのプレゼントだと思えば良いだろう?」
「……そういうことにしておくわ」
トゲの無くなった一言で、子供達に無邪気な笑顔が戻った。
ホークアイは両手がお菓子で埋まったブラックウィドウに近付き、素敵な掘り出し物をそっと被せる。
「待ちなさい」
「よく似合ってるぜ」
「柄じゃないのよ」
「で、俺達はこの後どうすれば良い?」
「脅かし役の人達はお菓子を貰ったらリビングに行っててほしいんだけど、その……ブラックウィドウは本当にそれで良いの?」
ピカピカ光る天使の輪っかに不服そうな彼女も、ご馳走にありつく頃にはハロウィンパーティーに馴染んでいることだろう。ホークアイは連れの意見を完全無視して部屋の入口へ向かう。
ドアを開け廊下に出ようとしたが、コスプレに劣らない強烈なマスクとご対面。ほぐれていた空気が彼の足と共にピタリと止まった。
「……フム。そういった羽の伸ばし方か、天下の諜報機関様」
決定的場面を押さえられ、天使は言葉を失う。
「そう言うお前こそ、いつもながらイカしたコスチュームだな」
「あれ?ロールシャッハ?」
「どうしたんですか?今日は帰らない筈では…」
アキラと夢主が筋肉隆々エージェントの背後から顔を覗かせた。
「粛正し甲斐の無いハロウィンだった。今年は繰り出す日にちを誤った」
「そーなんだ。じゃあ、トリック・オア・トリート!」
予定外の訪問者に対してもアキラは当然の如くお菓子を差し出した。皆も続いて手元のストックを渡していく。やや強引に。
「ム。必要ない。必要ないと言っている!……フム」
かなり強引に。
「どうぞ、ロールシャッハさん。この後みんなで夕食も」
夢主のパートナーは6個目の頂き物も上着のポケットに突っ込むと、早々に自室へ引き篭もってしまった。
「何、あの態度」
「確かに。大人げ無いな」
ホークアイはつい先程のブラックウィドウを思い出しながら、何も追求せずに相槌を打ってやった。