番外編38:都合の悪い不測
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「……準備は良い?」
「オーケーよ」
今夜のメインイベント直前。簡単な仮装を済ませた子供達はお菓子入れの小さなカゴをそれぞれ手に、ドアの前で息を潜めていた。
「じゃあ始めようか。ペッパーさん、お願いします」
「はいはーい、トリック・オア・トリート!」
我等が保護者ペッパー・ポッツは普段のスーツに加え、大きな三角帽子を被りマントを羽織った姿でご登場。
「お菓子くれなきゃ悪戯するわよ~!……で、良いのよね…?」
「バッチリだよ!はい、どーぞ!」
アキラ達6人は各自持っているカゴの中のお菓子をひとつ手に取り、ペッパーの持つ空のカゴへ寄ってきた。飴玉やラムネ等といった既製品の他には、今日の昼間クリス指導の元で手作りしたクッキーの包みもある。
「普通は役割逆じゃないか?」
「変わった趣向だな」
「私は面白いと思うわ」
妖精サイズのアベンジャーズはテーブルの端から部屋の入口を眺めている。この空き部屋は彼等のパートナー達により、前もって黒と橙を基調に飾り付けられていた。
「みんなはコレ楽しい…?」
「うん!なんか新鮮!」
「待つ側ってちょっとドキドキするね」
「エド、怖いのか?」
「ち、違うよっ!変わってて楽しいってことだよ!」
「……ふふ、なら良いわ」
ペッパーはまさか最年長の自分まで張り切ったコスプレをするとは思っていなかったが、イベントを楽しんでいる子供達につられて笑みをこぼした。アキラやエドに続き、夢主達も優しい魔女にお菓子を渡していく。
「あら、このクッキー美味しそうね。パンプキン味?」
「はい!みんなで作ったんです」
「クリスのオリジナルレシピよ」
「今日はありがとうね、クリス」
「別に」
当然のことをしたまでだ、と言われる代わりにあっさりとした返事が返ってくる。照れ臭いのか、お菓子を渡し終えると部屋の奥にさっさと戻っていった。
「この模様は夢主ちゃんオリジナルかしら」
「はい!」
食べ応えのありそうなクッキーには、ココアを練り込んだ生地で左右対称模様が描かれている。こだわりの逸品だ。
「もう火傷平気か?」
「うん。すぐ冷やしたから、なんとか大丈夫」
「夢主って案外おっちょこちょいだよなー。俺はクッキー誰にあげよう?……」
怪我をしなかった方のおっちょこちょいは、自分のカゴの中に視線を落とすとじっと固まった。
「どうしたの?アキラ」
「てへへ、お腹空いてきちゃった。でも丁度お菓子持ってる、ラッキー!」
「みんなに渡す分は残しておきなさいよ」
「言われなくても分かってるよ。ジェシカこそ、自分の分の残り数え間違えるなよ?数学苦手じゃん」
「ざんねーん。私はつまみ食いなんてそもそもしませんから!」
「アキラくん」
夢主は自分のカゴから既製品のお菓子をいくつか取り出し、アキラへ差し出した。
「どうぞ」
「いいの?」
「うん。準備するとき私多めに取り過ぎちゃったから」
「サンキュー夢主!」
譲られたお菓子達は早速アキラの口へ放り込まれた。
「なんだかごめんね、夢主ちゃん」
「いえいえ、私の分はこれだけあれば足りますし」
そのカゴの中には最低限必要な個包装の他に数個の余裕があり、この時点では全く心配していなかった。本人も、弟のことで申し訳無さそうにしているヒカルも。
「もー、アキラをあんまり甘やかしちゃダメよ」
「そんなこと言って、ジェシカもお腹空いたんだろー?」
「……はぁ~」
随分と的外れな言い返しだ。全く響いていないジェシカと傍から聞いていたアイアンマンの溜め息が見事に揃う。
「ディナーもあるからちょっとだけ我慢しててね。じゃあまた後で」
「はーい」
役目を終えたペッパーはご馳走の用意が出来ているリビングへ一足先に向かった。
「オーケーよ」
今夜のメインイベント直前。簡単な仮装を済ませた子供達はお菓子入れの小さなカゴをそれぞれ手に、ドアの前で息を潜めていた。
「じゃあ始めようか。ペッパーさん、お願いします」
「はいはーい、トリック・オア・トリート!」
我等が保護者ペッパー・ポッツは普段のスーツに加え、大きな三角帽子を被りマントを羽織った姿でご登場。
「お菓子くれなきゃ悪戯するわよ~!……で、良いのよね…?」
「バッチリだよ!はい、どーぞ!」
アキラ達6人は各自持っているカゴの中のお菓子をひとつ手に取り、ペッパーの持つ空のカゴへ寄ってきた。飴玉やラムネ等といった既製品の他には、今日の昼間クリス指導の元で手作りしたクッキーの包みもある。
「普通は役割逆じゃないか?」
「変わった趣向だな」
「私は面白いと思うわ」
妖精サイズのアベンジャーズはテーブルの端から部屋の入口を眺めている。この空き部屋は彼等のパートナー達により、前もって黒と橙を基調に飾り付けられていた。
「みんなはコレ楽しい…?」
「うん!なんか新鮮!」
「待つ側ってちょっとドキドキするね」
「エド、怖いのか?」
「ち、違うよっ!変わってて楽しいってことだよ!」
「……ふふ、なら良いわ」
ペッパーはまさか最年長の自分まで張り切ったコスプレをするとは思っていなかったが、イベントを楽しんでいる子供達につられて笑みをこぼした。アキラやエドに続き、夢主達も優しい魔女にお菓子を渡していく。
「あら、このクッキー美味しそうね。パンプキン味?」
「はい!みんなで作ったんです」
「クリスのオリジナルレシピよ」
「今日はありがとうね、クリス」
「別に」
当然のことをしたまでだ、と言われる代わりにあっさりとした返事が返ってくる。照れ臭いのか、お菓子を渡し終えると部屋の奥にさっさと戻っていった。
「この模様は夢主ちゃんオリジナルかしら」
「はい!」
食べ応えのありそうなクッキーには、ココアを練り込んだ生地で左右対称模様が描かれている。こだわりの逸品だ。
「もう火傷平気か?」
「うん。すぐ冷やしたから、なんとか大丈夫」
「夢主って案外おっちょこちょいだよなー。俺はクッキー誰にあげよう?……」
怪我をしなかった方のおっちょこちょいは、自分のカゴの中に視線を落とすとじっと固まった。
「どうしたの?アキラ」
「てへへ、お腹空いてきちゃった。でも丁度お菓子持ってる、ラッキー!」
「みんなに渡す分は残しておきなさいよ」
「言われなくても分かってるよ。ジェシカこそ、自分の分の残り数え間違えるなよ?数学苦手じゃん」
「ざんねーん。私はつまみ食いなんてそもそもしませんから!」
「アキラくん」
夢主は自分のカゴから既製品のお菓子をいくつか取り出し、アキラへ差し出した。
「どうぞ」
「いいの?」
「うん。準備するとき私多めに取り過ぎちゃったから」
「サンキュー夢主!」
譲られたお菓子達は早速アキラの口へ放り込まれた。
「なんだかごめんね、夢主ちゃん」
「いえいえ、私の分はこれだけあれば足りますし」
そのカゴの中には最低限必要な個包装の他に数個の余裕があり、この時点では全く心配していなかった。本人も、弟のことで申し訳無さそうにしているヒカルも。
「もー、アキラをあんまり甘やかしちゃダメよ」
「そんなこと言って、ジェシカもお腹空いたんだろー?」
「……はぁ~」
随分と的外れな言い返しだ。全く響いていないジェシカと傍から聞いていたアイアンマンの溜め息が見事に揃う。
「ディナーもあるからちょっとだけ我慢しててね。じゃあまた後で」
「はーい」
役目を終えたペッパーはご馳走の用意が出来ているリビングへ一足先に向かった。