番外編37:都合の悪い虫達
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研究室を覗きに来た子供にアマデウス以外の頭脳派達が振り返った。
「なあ、何か俺に出来ることない?」
その全員が口を開くも声にするには至らなかった。各々の手元にある薬品入りの瓶や試験管、モニターに打ち出し中の難解な配列とアカツキ・アキラを見比べ、決まって視線を落とす。
「うーん。こう言っちゃあアレだけど、君の役割は僕達の化学実験の邪魔をしない。ただそれのみ」
臨時のリーダーはというと背後へ顔を向けることなく、片手間に回答しきった。
「そんな…俺も何か手伝いたい!いつもトニーの研究手伝ってるし!ちょっとしたことでも良い、力になりたいんだ!」
ちなみに今動けるメンバーの内、仕事が割り振られていないのはこの少年だけ。無人のリビングや廊下を行ったり来たりしても不安が募る一方だ。
「アキラ、部屋に戻っておけ」
「ここは僕達に任せて、アキラ」
「みんなのことが心配なのね。その気持ちがあれば十分よ」
「人手は足りてるからこっちは大丈夫さ!って意味だから。さっきのアマデウスの言葉」
「ううー……ん?」
しかし、居座り続ければこうして皆の手を止めてしまう。引き下がるべきかと諦めかけたその時、自分の胃袋から空腹の合図が鳴り響いた。あまりの音量に今度は一人残らず顔を上げる。
「腹減ったー」
ふと壁を見上げれば、時計の短針・長針は共に頂点へ達しようとしていた。
「アキラ…」
「なんだなんだ、腹ぺこアピールなら余所でやれ!こっちは見ての通り忙しいんだぞ!」
ここ数ヶ月間空腹を味わう機会の無いアイアンマンが、苦笑いするヒカルの肩からパートナーを叱りつけた。
「むー、仕方ないじゃん。鳴っちゃったんだから」
「まあまあ2人とも。実は僕もお腹空いてきたところなんだよねー。アキラが教えてくれるまで気付かなかったよ」
「そうね、そろそろお昼にしましょうか」
「君でも腹時計の役割ならこなせそうだね。みんなは一旦休んでて、僕はもう少し…」
ピーターとペッパーが仕事場を後にしようとする一方でアマデウスだけはクリス達から採取したサンプルを弄り続けている。が、ふいに彼も手を止めた。
「ちょっと待った。時計、って……マズい!!」
それだけ言い残すと周りには何の説明もせず、出来かけの薬を手に取りアキラの真横を駆け抜ける。
「な、何?俺も行く!」
「アマデウス!?一体何がマズいってんだ!?」
「もーっ!本当にいつも勝手というか、僕達庶民を置いてけぼりにするんだから」
「俺は庶民じゃないぞ!」
トニー・スタークが元助手の発言撤回にこだわっている間、研究室の出口に一番近かったアキラがアマデウスに追いついた。
「ねえ、急にどうしたの?」
「あの子の部屋はこっちだったよね!?」
「あの子?」
「タコになりかけている女の子の部屋だよ!急がないと手遅れになる!」
アキラは訳も分からないまま、ただ彼の横について走る。
「急がないとって…夢主がどうにかなっちゃうの?」
「今彼女を放置していると症状の進行が加速するどころか、この基地が一瞬で潰されてしまう!」
「ええ!?」
「あくまで可能性だけどね。でも確率は高い!」
意味不明で突拍子のない、だが確信を持って発せられた予測はアキラの脚をあと少しでもつれさせるところだった。
「な、なんで夢主が…」
「ここに来る前に聞いたよ、彼女ウォッチメンが好きなんだろ。それでタコになったのなら、12時を認識させちゃダメだ!」
いまいち納得の行く説明をしてもらえなかった。とりあえず、いつもは赤いディスクを装着している手首に向かって声を出し確認する。
「タイムモード!…今、丁度12時!」
「そうか、間に合うと良いけど……彼女の部屋にアナログ時計は!?」
「た、多分あると思う…」
アキラは声を張れなかった。
もし夢主が変わり果ててしまっていたら。意思疎通の叶わない軟体生物が彼女のベッドを占領していたら。具体的に想像すると、酷使している両脚から力が抜けていく感覚に襲われる。
更には、彼女だけでなく他の仲間や自分達も危険にさらされてしまうかもしれない。一緒に過ごしてきたあの子がアベンジャーズ基地を潰すとは、果たしてどういうことなのか。
「夢主…」
今はとにかく、全力で走るしかない。
「なあ、何か俺に出来ることない?」
その全員が口を開くも声にするには至らなかった。各々の手元にある薬品入りの瓶や試験管、モニターに打ち出し中の難解な配列とアカツキ・アキラを見比べ、決まって視線を落とす。
「うーん。こう言っちゃあアレだけど、君の役割は僕達の化学実験の邪魔をしない。ただそれのみ」
臨時のリーダーはというと背後へ顔を向けることなく、片手間に回答しきった。
「そんな…俺も何か手伝いたい!いつもトニーの研究手伝ってるし!ちょっとしたことでも良い、力になりたいんだ!」
ちなみに今動けるメンバーの内、仕事が割り振られていないのはこの少年だけ。無人のリビングや廊下を行ったり来たりしても不安が募る一方だ。
「アキラ、部屋に戻っておけ」
「ここは僕達に任せて、アキラ」
「みんなのことが心配なのね。その気持ちがあれば十分よ」
「人手は足りてるからこっちは大丈夫さ!って意味だから。さっきのアマデウスの言葉」
「ううー……ん?」
しかし、居座り続ければこうして皆の手を止めてしまう。引き下がるべきかと諦めかけたその時、自分の胃袋から空腹の合図が鳴り響いた。あまりの音量に今度は一人残らず顔を上げる。
「腹減ったー」
ふと壁を見上げれば、時計の短針・長針は共に頂点へ達しようとしていた。
「アキラ…」
「なんだなんだ、腹ぺこアピールなら余所でやれ!こっちは見ての通り忙しいんだぞ!」
ここ数ヶ月間空腹を味わう機会の無いアイアンマンが、苦笑いするヒカルの肩からパートナーを叱りつけた。
「むー、仕方ないじゃん。鳴っちゃったんだから」
「まあまあ2人とも。実は僕もお腹空いてきたところなんだよねー。アキラが教えてくれるまで気付かなかったよ」
「そうね、そろそろお昼にしましょうか」
「君でも腹時計の役割ならこなせそうだね。みんなは一旦休んでて、僕はもう少し…」
ピーターとペッパーが仕事場を後にしようとする一方でアマデウスだけはクリス達から採取したサンプルを弄り続けている。が、ふいに彼も手を止めた。
「ちょっと待った。時計、って……マズい!!」
それだけ言い残すと周りには何の説明もせず、出来かけの薬を手に取りアキラの真横を駆け抜ける。
「な、何?俺も行く!」
「アマデウス!?一体何がマズいってんだ!?」
「もーっ!本当にいつも勝手というか、僕達庶民を置いてけぼりにするんだから」
「俺は庶民じゃないぞ!」
トニー・スタークが元助手の発言撤回にこだわっている間、研究室の出口に一番近かったアキラがアマデウスに追いついた。
「ねえ、急にどうしたの?」
「あの子の部屋はこっちだったよね!?」
「あの子?」
「タコになりかけている女の子の部屋だよ!急がないと手遅れになる!」
アキラは訳も分からないまま、ただ彼の横について走る。
「急がないとって…夢主がどうにかなっちゃうの?」
「今彼女を放置していると症状の進行が加速するどころか、この基地が一瞬で潰されてしまう!」
「ええ!?」
「あくまで可能性だけどね。でも確率は高い!」
意味不明で突拍子のない、だが確信を持って発せられた予測はアキラの脚をあと少しでもつれさせるところだった。
「な、なんで夢主が…」
「ここに来る前に聞いたよ、彼女ウォッチメンが好きなんだろ。それでタコになったのなら、12時を認識させちゃダメだ!」
いまいち納得の行く説明をしてもらえなかった。とりあえず、いつもは赤いディスクを装着している手首に向かって声を出し確認する。
「タイムモード!…今、丁度12時!」
「そうか、間に合うと良いけど……彼女の部屋にアナログ時計は!?」
「た、多分あると思う…」
アキラは声を張れなかった。
もし夢主が変わり果ててしまっていたら。意思疎通の叶わない軟体生物が彼女のベッドを占領していたら。具体的に想像すると、酷使している両脚から力が抜けていく感覚に襲われる。
更には、彼女だけでなく他の仲間や自分達も危険にさらされてしまうかもしれない。一緒に過ごしてきたあの子がアベンジャーズ基地を潰すとは、果たしてどういうことなのか。
「夢主…」
今はとにかく、全力で走るしかない。