第四部:都合の良い男
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唯一の希望ロールシャッハが何とか逃げ切ってからは、敵の船に一人残った夢主は簡素な独房に閉じ込められていた。
日の入らない狭くて何も無い部屋に一人きり。たった数時間が数日のように感じる。
「このガキ、まだディー・セキュアには応えないのか~?」
「適当に連れてきた割には、なかなか肝が据わっている検体でな。この状況にすぐ屈すると思っていたが…」
扉一枚隔てた向こう側には、自分のことについて話し合う悪い大人達。それだけでも子供にとっては十分な恐怖だ。
しかし、夢主は震えてなどいなかった。ほんのわずかな時間ではあったがヒーローに助けられたこと、行動を共にしたこと、約束したこと、それらが彼女の心をしっかり支えていた。
「なら、俺に任せろ」
赤いベネチアンマスクをした男が、携えている刀を抜き目の前のドアノブに手をかける。
「待て!こいつは人質ではあるが重要な実験体でもあるんだ。手荒な真似は控えろ」
「チッ」
今のところ、暴力や考えたくもない行為等による脅しの類は無し。
「だったら、その実験とやらをさっさと終わらせろ!」
「私の実験室があのロールシャッハに滅茶苦茶にされたことは、もう記憶から飛んでいってしまったのか?」
「滅茶苦茶にされたんだったら、早く部屋片付けて装置とやらを復旧させてこい!」
「いくら優秀な頭脳の持ち主である私でも、何もかも直ちに修理できると思うな!それに今は休憩中だ」
そして、電流や注射の追加も無し。例の実験室でロールシャッハが暴れ回ったお陰で、どうやら象鼻仮面男の進めていた研究は一時的に中止となったらしい。
よって夢主を脅かす存在は、この厚い扉越しに「ディー・セキュアをしろ」と怒鳴る声くらいだ。
「既に奴は随分遠くに逃げたのでしょう。ディー・セキュアをさせようにも、もう発動しないのでは?」
落ち着いた声が井戸端会議に参加する。
「させてみる価値はあるだろう。何せ、まだまだ研究段階のバイオコードだからな」
「そんなこと、私は絶対にしないから!」
「黙れ!」
みんな暇で特にすることが無いのか、ここに悪党5人集が揃った。
「女の子の観察はそのくらいにして、さっさとワープ装置の方を完成させなさいよ!ロールシャッハがまた何かしでかす前に!」
「そう危険視する必要は無い。たしかに奴を逃がしてしまったが、それだけのこと」
ティムは相変わらずマイペースを貫き通す。
「ハァ?ニュースキャスターの私がこれだけ言ってるのに、まだわからないの!?場合によっちゃあ、無理矢理にでもロキを呼び出す必要が…」
「この私があれからロールシャッハについて調べていないとでも?臭くて、意固地で、チビで、派手な力も無いヒーローに、実際誰が耳を傾けると思う?」
「チ、チビって言うな!」
正直どの悪口も的を得ているが、とりあえず反論しておく。夢主はいつでもどこでも彼の味方だ。
「この娘しかり、ファンは意外と多いのよ?」
「意外って言うな!」
「お黙り!」
「特別な力は持ってないけど、その分意志がとっても強いもん!」
「さっきっからうっさいわね、こんのっ…!」
ロゼッタが扉へ蹴りをくらわす前にジュウベエとジョエルが止めに入る。
「まあファンがいくら居ようと奴の性格上、リベンジしに来るとしたら、単体。誰にも頼らず一人きりで乗り込んで来る筈だ。貴様もそう思うだろう?第一号」
ドアに付いている小さな格子窓から、象鼻男が聞き慣れない名前で呼びかけてくる。
「第一号?この娘が?」
「そうだ。さっさとこいつの持つスペシャル・バイオコードを改良し、第二、第三の新しい検体で実験せねばならないのだ」
“第二”の単語で夢主は思い出した。彼なら手を貸してくれる筈だ。
「…ナイトオウル」
一代目よりその名前を受け継いだ、ロールシャッハの相棒なら。
「ナイトオウルなら…!」
「ああ、あのフクロウ男か。奴も恐るるに足らん」
「ナイトオウルなら釣れそうね。奴はテック属性かしら?」
「フフ、気が早いのでは?」
「まあ、多くて二人。しかもただの人間。対して、我々には万全状態のヴィランが数体。前回の反省を踏まえれば、現実のウォッチメンなど何の驚異でもない」
「あいつの乗り物、たしか本当にコーヒーサーバーが付いているんだろ?」
「マジかよ!俺にも一杯淹れてほしいぜ」
「私の話を聞かんか貴様等!」
ナイトオウル含め、ヒーローを返り討ちにした前提で5人が盛り上がり始めた。完全に馬鹿にされている。
それもそうだ。彼等は特殊能力を兼ね備えたヴィランを従えているのだから。万一の非常事態や奇襲にしっかり対応できるのなら、もうこの大人達が負けることなど無い。
「……」
Dr.マンハッタンやオジマンディアス、コメディアンがコミックから出てきて協力してくれればどんなに良いか。せめてシルク・スペクターだけでも存在してくれていれば。
「おっと、話の輪から外してしまって済まんな。確か、飛んで火に入る夏の虫…と表現するのだろう?」
「……」
先程こいつが言ったように、ロールシャッハはそう簡単に他人と協力できるヒーローではない。おそらく、長年共に闘ってきたナイトオウルと一緒にアーチーに乗って助けに来るだろう。
ましてや、全く別のヒーローと一緒になんて、絶対。
日の入らない狭くて何も無い部屋に一人きり。たった数時間が数日のように感じる。
「このガキ、まだディー・セキュアには応えないのか~?」
「適当に連れてきた割には、なかなか肝が据わっている検体でな。この状況にすぐ屈すると思っていたが…」
扉一枚隔てた向こう側には、自分のことについて話し合う悪い大人達。それだけでも子供にとっては十分な恐怖だ。
しかし、夢主は震えてなどいなかった。ほんのわずかな時間ではあったがヒーローに助けられたこと、行動を共にしたこと、約束したこと、それらが彼女の心をしっかり支えていた。
「なら、俺に任せろ」
赤いベネチアンマスクをした男が、携えている刀を抜き目の前のドアノブに手をかける。
「待て!こいつは人質ではあるが重要な実験体でもあるんだ。手荒な真似は控えろ」
「チッ」
今のところ、暴力や考えたくもない行為等による脅しの類は無し。
「だったら、その実験とやらをさっさと終わらせろ!」
「私の実験室があのロールシャッハに滅茶苦茶にされたことは、もう記憶から飛んでいってしまったのか?」
「滅茶苦茶にされたんだったら、早く部屋片付けて装置とやらを復旧させてこい!」
「いくら優秀な頭脳の持ち主である私でも、何もかも直ちに修理できると思うな!それに今は休憩中だ」
そして、電流や注射の追加も無し。例の実験室でロールシャッハが暴れ回ったお陰で、どうやら象鼻仮面男の進めていた研究は一時的に中止となったらしい。
よって夢主を脅かす存在は、この厚い扉越しに「ディー・セキュアをしろ」と怒鳴る声くらいだ。
「既に奴は随分遠くに逃げたのでしょう。ディー・セキュアをさせようにも、もう発動しないのでは?」
落ち着いた声が井戸端会議に参加する。
「させてみる価値はあるだろう。何せ、まだまだ研究段階のバイオコードだからな」
「そんなこと、私は絶対にしないから!」
「黙れ!」
みんな暇で特にすることが無いのか、ここに悪党5人集が揃った。
「女の子の観察はそのくらいにして、さっさとワープ装置の方を完成させなさいよ!ロールシャッハがまた何かしでかす前に!」
「そう危険視する必要は無い。たしかに奴を逃がしてしまったが、それだけのこと」
ティムは相変わらずマイペースを貫き通す。
「ハァ?ニュースキャスターの私がこれだけ言ってるのに、まだわからないの!?場合によっちゃあ、無理矢理にでもロキを呼び出す必要が…」
「この私があれからロールシャッハについて調べていないとでも?臭くて、意固地で、チビで、派手な力も無いヒーローに、実際誰が耳を傾けると思う?」
「チ、チビって言うな!」
正直どの悪口も的を得ているが、とりあえず反論しておく。夢主はいつでもどこでも彼の味方だ。
「この娘しかり、ファンは意外と多いのよ?」
「意外って言うな!」
「お黙り!」
「特別な力は持ってないけど、その分意志がとっても強いもん!」
「さっきっからうっさいわね、こんのっ…!」
ロゼッタが扉へ蹴りをくらわす前にジュウベエとジョエルが止めに入る。
「まあファンがいくら居ようと奴の性格上、リベンジしに来るとしたら、単体。誰にも頼らず一人きりで乗り込んで来る筈だ。貴様もそう思うだろう?第一号」
ドアに付いている小さな格子窓から、象鼻男が聞き慣れない名前で呼びかけてくる。
「第一号?この娘が?」
「そうだ。さっさとこいつの持つスペシャル・バイオコードを改良し、第二、第三の新しい検体で実験せねばならないのだ」
“第二”の単語で夢主は思い出した。彼なら手を貸してくれる筈だ。
「…ナイトオウル」
一代目よりその名前を受け継いだ、ロールシャッハの相棒なら。
「ナイトオウルなら…!」
「ああ、あのフクロウ男か。奴も恐るるに足らん」
「ナイトオウルなら釣れそうね。奴はテック属性かしら?」
「フフ、気が早いのでは?」
「まあ、多くて二人。しかもただの人間。対して、我々には万全状態のヴィランが数体。前回の反省を踏まえれば、現実のウォッチメンなど何の驚異でもない」
「あいつの乗り物、たしか本当にコーヒーサーバーが付いているんだろ?」
「マジかよ!俺にも一杯淹れてほしいぜ」
「私の話を聞かんか貴様等!」
ナイトオウル含め、ヒーローを返り討ちにした前提で5人が盛り上がり始めた。完全に馬鹿にされている。
それもそうだ。彼等は特殊能力を兼ね備えたヴィランを従えているのだから。万一の非常事態や奇襲にしっかり対応できるのなら、もうこの大人達が負けることなど無い。
「……」
Dr.マンハッタンやオジマンディアス、コメディアンがコミックから出てきて協力してくれればどんなに良いか。せめてシルク・スペクターだけでも存在してくれていれば。
「おっと、話の輪から外してしまって済まんな。確か、飛んで火に入る夏の虫…と表現するのだろう?」
「……」
先程こいつが言ったように、ロールシャッハはそう簡単に他人と協力できるヒーローではない。おそらく、長年共に闘ってきたナイトオウルと一緒にアーチーに乗って助けに来るだろう。
ましてや、全く別のヒーローと一緒になんて、絶対。