番外編37:都合の悪い虫達
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「絶対何とかしてやるから、あと少しの辛抱だぞ」
醜い怪物になりつつある仲間をひとまずパートナーに任せ、アイアンマン達は女子部屋を後にした。
「夢主のあれは…生き物、だよな?」
「さあ…?」
「タコやイカに似ていたけど、配色があんなにハッキリ分かれている個体は僕も見たことが無い。架空の生き物だと思います」
彼女から今も生えている4本の触手はあまりにも非現実的な風貌だった。変異現象は勿論、元となった生き物自体にもヒカルは困惑していた。
「もしかして宇宙人?」
「わからない。けど、夢主ちゃんがそれを思い浮かべていたことは確かだね」
「要は、想像すれば何にでもなってしまうってことだ。しかも、こんなにも速く。認めたくないが、この症状、そしてその速度……人知を越えている。こりゃあ俺だけの手には負えないな」
「負けず嫌いのトニーが!」
「まあ珍しい!」
こんな時に呑気に驚いている場合ではないのだが、アキラとペッパーは揃って目を丸くした。
各自が本来の姿を強く思い浮かべたところで、完全な解決策には及ばない。蜂化とタコ化は少しずつだが、着実に進んでいる。
「時間が経てば完全な姿へ成り変わるとティムは言っていた。それが正しければ……たとえクリス達が人間以外の生き物を綺麗さっぱり忘れてしまっても、変異が止まることはないだろう」
「え?じゃあ、今こうしている間も…!」
「ああ。どうしたものか…」
その場しのぎに過ぎないと言われた敵の言葉を、アキラはようやく呑み込んだ。
仲間が異形のものへと化していく。それを止める方法が依然として見つからない。もしかしたら、もう今までと同じように一緒に生活したり戦ったり出来なくなるのかもしれない。
会話をすることさえも。
「そんな…!」
アキラは事態の深刻さを今更ながら実感し、涙目で大人に詰め寄る。
「トニー、どうするの?みんなはどうなっちゃうの!?」
「心配するな。俺だけの手には負えないとは言ったが、諦めるだなんて一言も言っていない!」
「トニー…!」
「ただ、ちょっと協力者が欲しいだけだ。それにふさわしい人物は~、そうだなぁ…」
トニー・スタークは目を閉じ思考を巡らすがそれはほんの数秒で済んだ。プライドの高過ぎる天才物理学者が助けを求める人物など、この世界に片手で数える程しか居ない。
「人知を越えているとなればその道の専門家、具体的に言えば魔術師様を呼び出したいところだが、あいにく彼はディスクに閉じ込められている。しかもそのディスクは行方不明。と、すれば、かくなる上は」
「上は?」
「超が付く天才を呼び出してみるか」
「ちょう?」
その場で聞いただけでは大きな羽を持つ昆虫しか脳裏に浮かばず、アキラは頭をかしげる。
「そう、チョーだ。スケジュールギッシリの大人と違って、あの子ならどうせ暇してるだろ」
「子供なんだ。どうせって、大丈夫なの?ちゃんと来てくれる?」
「勿論。そもそも俺の頼みなら絶対断らない!ペッパー、ピーターに繋いでくれ。あいつなら連絡先を知っている筈だ」
彼の決断から十数時間後。日本に入国したばかりの2つの影は、大きな別荘に続く広々とした道を並んで歩いていた。
「ねえ。これってさ、僕まで来る必要あった?」
「無かったかもね。現場にはあのトニー・スタークにその優秀な秘書、加えて、飛び級して大学部に通っている元高校生まで居るらしいじゃないか。君は精々、アシスタント補佐の補佐程度として頑張ってくれれば上出来だよ」
小さなリュックを背負った男の子より放たれたトゲは、頭一つ分背が高い男性の顔を若干引きつらせる。
「言うよね、相変わらず。僕だって一時期、その天才物理学者様の元で働いていたんだよ」
「ピーター・パーカーがこの僕に誇れる唯一の実績だね」
「……僕の知り合いって、どうしてこう癖が強いんだろう。あ、見て!アベンジャーズが僕達のために勢揃いしているよ」
「大分メンバー削減しているみたいだけど」
体に異変が無いアカツキ兄弟とそのパートナーだけで、ややお疲れの青年とその友人を出迎えた。
「トニー・スタークさん、お久しぶりです!まさか貴方の方から僕に会いたいだなんて、光栄ですよ!」
歳も背丈もアキラとほぼ変わらない少年は、相手が妖精サイズでも半透明でもお構いなく、思い切り目を輝かせた。もしアイアンマンが実体化していたら握手の為にすぐさま利き手を差し出していただろう。
「彼はアマデウス・チョー。世界で7番目に頭の出来が良い奴だ。この俺も一目置いている」
尊敬する人物に紹介してもらえたアマデウスは、軟体動物化しているどこかの誰かとは違ってデレデレすることなく、胸を張って正面の人物を見据えた。
「君があのアキラくんかい?」
「うん、そうだけど……“あの”って?」
「スタークインダストリーズの社長、トニー・スタークのパートナー。且つ、頭脳明晰な兄を持つ少年、アカツキ・アキラくんのことだよ。君もさぞ優秀な子供なんだろうね。楽しみだ」
「ア、アハハハ…」
なんとか作り上げた笑顔でアキラはこの場を誤魔化そうとしたが、今の反応で軽く見透かされたらしい。天才少年はアキラに釣られず自分から愛想笑いをした。
「アマデウス。急に呼び出しといて悪いが、早速取りかかってもらいたい問題があるんだ」
「スタークさんの頼みとあれば、今すぐにでも!僕なりに原因と対処法を考えてみたんですけれど──」
直々に指名されたアマデウスは再度目を輝かせ身を乗り出す。危うくアキラと額同士をぶつけそうになった。
アイアンマンに肩を貸している少年は無論話について行けていないが、2人の青年は距離的にも更に置いてけぼり。
「あのキラッキラ。な~んか既視感あるよね。そう思わない?」
「前にも3人で会っていたんですか?」
「……そうか、鈍感じゃない子達はもれなく大変なことになっているんだっけ」
「?」
醜い怪物になりつつある仲間をひとまずパートナーに任せ、アイアンマン達は女子部屋を後にした。
「夢主のあれは…生き物、だよな?」
「さあ…?」
「タコやイカに似ていたけど、配色があんなにハッキリ分かれている個体は僕も見たことが無い。架空の生き物だと思います」
彼女から今も生えている4本の触手はあまりにも非現実的な風貌だった。変異現象は勿論、元となった生き物自体にもヒカルは困惑していた。
「もしかして宇宙人?」
「わからない。けど、夢主ちゃんがそれを思い浮かべていたことは確かだね」
「要は、想像すれば何にでもなってしまうってことだ。しかも、こんなにも速く。認めたくないが、この症状、そしてその速度……人知を越えている。こりゃあ俺だけの手には負えないな」
「負けず嫌いのトニーが!」
「まあ珍しい!」
こんな時に呑気に驚いている場合ではないのだが、アキラとペッパーは揃って目を丸くした。
各自が本来の姿を強く思い浮かべたところで、完全な解決策には及ばない。蜂化とタコ化は少しずつだが、着実に進んでいる。
「時間が経てば完全な姿へ成り変わるとティムは言っていた。それが正しければ……たとえクリス達が人間以外の生き物を綺麗さっぱり忘れてしまっても、変異が止まることはないだろう」
「え?じゃあ、今こうしている間も…!」
「ああ。どうしたものか…」
その場しのぎに過ぎないと言われた敵の言葉を、アキラはようやく呑み込んだ。
仲間が異形のものへと化していく。それを止める方法が依然として見つからない。もしかしたら、もう今までと同じように一緒に生活したり戦ったり出来なくなるのかもしれない。
会話をすることさえも。
「そんな…!」
アキラは事態の深刻さを今更ながら実感し、涙目で大人に詰め寄る。
「トニー、どうするの?みんなはどうなっちゃうの!?」
「心配するな。俺だけの手には負えないとは言ったが、諦めるだなんて一言も言っていない!」
「トニー…!」
「ただ、ちょっと協力者が欲しいだけだ。それにふさわしい人物は~、そうだなぁ…」
トニー・スタークは目を閉じ思考を巡らすがそれはほんの数秒で済んだ。プライドの高過ぎる天才物理学者が助けを求める人物など、この世界に片手で数える程しか居ない。
「人知を越えているとなればその道の専門家、具体的に言えば魔術師様を呼び出したいところだが、あいにく彼はディスクに閉じ込められている。しかもそのディスクは行方不明。と、すれば、かくなる上は」
「上は?」
「超が付く天才を呼び出してみるか」
「ちょう?」
その場で聞いただけでは大きな羽を持つ昆虫しか脳裏に浮かばず、アキラは頭をかしげる。
「そう、チョーだ。スケジュールギッシリの大人と違って、あの子ならどうせ暇してるだろ」
「子供なんだ。どうせって、大丈夫なの?ちゃんと来てくれる?」
「勿論。そもそも俺の頼みなら絶対断らない!ペッパー、ピーターに繋いでくれ。あいつなら連絡先を知っている筈だ」
彼の決断から十数時間後。日本に入国したばかりの2つの影は、大きな別荘に続く広々とした道を並んで歩いていた。
「ねえ。これってさ、僕まで来る必要あった?」
「無かったかもね。現場にはあのトニー・スタークにその優秀な秘書、加えて、飛び級して大学部に通っている元高校生まで居るらしいじゃないか。君は精々、アシスタント補佐の補佐程度として頑張ってくれれば上出来だよ」
小さなリュックを背負った男の子より放たれたトゲは、頭一つ分背が高い男性の顔を若干引きつらせる。
「言うよね、相変わらず。僕だって一時期、その天才物理学者様の元で働いていたんだよ」
「ピーター・パーカーがこの僕に誇れる唯一の実績だね」
「……僕の知り合いって、どうしてこう癖が強いんだろう。あ、見て!アベンジャーズが僕達のために勢揃いしているよ」
「大分メンバー削減しているみたいだけど」
体に異変が無いアカツキ兄弟とそのパートナーだけで、ややお疲れの青年とその友人を出迎えた。
「トニー・スタークさん、お久しぶりです!まさか貴方の方から僕に会いたいだなんて、光栄ですよ!」
歳も背丈もアキラとほぼ変わらない少年は、相手が妖精サイズでも半透明でもお構いなく、思い切り目を輝かせた。もしアイアンマンが実体化していたら握手の為にすぐさま利き手を差し出していただろう。
「彼はアマデウス・チョー。世界で7番目に頭の出来が良い奴だ。この俺も一目置いている」
尊敬する人物に紹介してもらえたアマデウスは、軟体動物化しているどこかの誰かとは違ってデレデレすることなく、胸を張って正面の人物を見据えた。
「君があのアキラくんかい?」
「うん、そうだけど……“あの”って?」
「スタークインダストリーズの社長、トニー・スタークのパートナー。且つ、頭脳明晰な兄を持つ少年、アカツキ・アキラくんのことだよ。君もさぞ優秀な子供なんだろうね。楽しみだ」
「ア、アハハハ…」
なんとか作り上げた笑顔でアキラはこの場を誤魔化そうとしたが、今の反応で軽く見透かされたらしい。天才少年はアキラに釣られず自分から愛想笑いをした。
「アマデウス。急に呼び出しといて悪いが、早速取りかかってもらいたい問題があるんだ」
「スタークさんの頼みとあれば、今すぐにでも!僕なりに原因と対処法を考えてみたんですけれど──」
直々に指名されたアマデウスは再度目を輝かせ身を乗り出す。危うくアキラと額同士をぶつけそうになった。
アイアンマンに肩を貸している少年は無論話について行けていないが、2人の青年は距離的にも更に置いてけぼり。
「あのキラッキラ。な~んか既視感あるよね。そう思わない?」
「前にも3人で会っていたんですか?」
「……そうか、鈍感じゃない子達はもれなく大変なことになっているんだっけ」
「?」