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番外編37:都合の悪い虫達

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様々な生き物達が蠢き出す陽気な昼下がり。休日を挟んだ明後日の宿題をとうに済ませた子供達はというと、アベンジャーズ基地のリビングルームで暇を持て余していた。

「蝶のように舞い、蜂のように刺すって言葉があるでしょ?まさに、美貌と強さを兼ね備えているワスプのことよね」
「ありがとジェシカ」

テーブルの端に腰掛けているワスプはパートナーからの誉め言葉を素直に受け取った。

「顎も目も、実物の顔とは全然違うけどな」

学校で使う教科書の写真と彼女を見比べながら、仲間のスーパーヒロインが比較的人間寄りの姿をしていることにクリスは少しだけ安心していた。口には出さず、あくまで心の内でだが。

「僕は蜂って言ったら本物より、やっぱりワスプを思い浮かべるなあ。あと、家に置いてあった子供向けの絵本では妖精みたいな姿をしてたかも」
「エド、貴方もじゅ~ぶん子供だから」

彼の両親が我が子のためにと用意しておいた字の少ない絵本は、残念ながら随分と早い段階で興味を持たれなくなったそうだ。

「妖精みたいって、頭に触角とか生えてる奴だろ。それだとむしろ蝶じゃねえか?」
「何の話?」

この場に居なかったアカツキ兄弟と夢主が、このどうと言うことのない雑談に加わる。

「2人とも宿題終わったのね、お疲れ様~。ワスプの強さと美しさについて話してるところよ」
「いや蜂の話だったろ」
「ねえ夢主夢主なら蜂って聞いて、どんなこと想像する?」

ロールシャッハのファンは口元に手を当てて、宿題と格闘し疲れ切った頭を再度回転させる。

「蜂、蜂……あ!体の色が黄色と黒だから、ウォッチメン!」
「え」
「カバーがシンプルだけどそこがまた良いの!黒が全体的に多いんだけど、アクセントとして黄色の他に──」

思考能力の落ちた夢主が欠いたのは声の調子でも目の輝きでもなく、他人への配慮だった。よって、あくまで蜂の話を振った筈が、蜂とは無関係な書籍についてのマシンガントークが始まる。

「だと思ったよ…」

話の流れを強引に止めてしまう発言を、ヒーローのファンというくくりで同類のエドだけはしっかりと予測できていた。

「で!カバーを取ると見える蝶々なんだけど」
「みんな、お喋りはそのくらいにして」

眉間に皺を寄せたペッパー・ポッツが話に割って入ってきた。夢主が元の大人しい子供に戻り、アキラ達はウォッチメンうんちくの時間から解放される。

「ペッパーさんどうしたの?」
「もしかして、ディー・システムに反応があったんですか?」
「ええ」
「場所は日本国内だから近くてチャンスだけど、結構山奥になるぞ」

助手の肩に乗っていたトニー・スタークはこれから一緒に出掛けるパートナーの頭へと飛び移る。

「だったら虫除けスプレー持って行こーっと。みんなも使って良いわよ」
「俺は使わなくても平気!」
「ふーん。その丸出しのお膝が蜂や蚊に刺されても知らないからねー」
「じゃあ、準備が出来たらすぐ向かってちょうだい」
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