番外編36:都合の悪い反射
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周りの通行人は先程の雷鳴について思い思いの感想を口にする。
「うわぁ、今のめっちゃ近かった!」
「超こわーい!!」
「びっくりしたぁ…」
「近いとあんな音するんだねぇ」
一方で、夢主が傘を落とした理由は言ってしまえば音量は関係無い。眩しさによる影響も薄い。
「夢主」
「う…う、う……」
雷そのものが、少女の言動を支配していた。
「夢主」
「やだっ……もうやだ…!」
小さくうずくまった夢主は大好きなロールシャッハの呼びかけを一切無視し、雨粒と冷や汗で額を濡らしながら震え続ける。
「止め、もう、止めて、止めてくださいっ…!」
「……」
ロールシャッハは放られた傘を拾って持ち直し、パートナーの子供の正面に立った。命令も何も無しに、相手が立ち上がるのをじっと待っている。
「ねえ…ほらあの子。どうしたんだろ」
「さっきの雷じゃん?」
「ハハ、いつまで怖がってんだよ」
「コートの人困ってるっぽくね?」
このままでは通行の妨げになるし、何よりロールシャッハが迷惑している。歪み震える口元を手の甲で押さえつけ、夢主はなんとか立ち上がった。
「ごめ、んなさい。こんな、取り乱して、しまって」
なるべく息を止めつつ、平常の声色を心掛けて謝罪を絞り出した。
「帰り、ましょうか」
「……」
そっと肩を抱き寄せたりだとか、荷物を持ってくれたりだとか、そういう気遣いは表に出さない。大人はただ無言で歩幅を合わせてくれた。
「……」
「……正直」
「……」
「ソーさんの雷も、まだ怖いです」
「……」
「技を出されると、微妙な気持ちになります…」
「……」
「控えてくれたら、なんて……」
雷神や彼のパートナーは申し分の無い人物だ。それを踏まえていながらも、夢主は個人的な我が儘をつい漏らしてしまった。
「今の、皆には秘密にしておいてもらえますか?」
「訴えたところで、正義の神はたった一人の主張になど左右されない」
「……そうですよね…」
「その問題提起者が仲間だろうと被害者だろうと、マイティ・ソーが救ってきたものや今後救うものに比べれば微々たる弊害だ。お前の“怖いから止めろ”は、人を殺す」
「はい…」
「今置かれている状況に何一つ変化が訪れなくても構わないと言うのなら、自分の口から伝えることだな。毎日のことで情報発信には慣れているだろう、その点は保証してやる」
「……」
いつになく焦っているロールシャッハは、皮肉やコミック上の彼らしからぬ発言を次から次へと繰り出していく。パートナーとは対照的に黙りこくる夢主の方へ、気付かれない程度に傘が傾けられた。
「うわぁ、今のめっちゃ近かった!」
「超こわーい!!」
「びっくりしたぁ…」
「近いとあんな音するんだねぇ」
一方で、夢主が傘を落とした理由は言ってしまえば音量は関係無い。眩しさによる影響も薄い。
「夢主」
「う…う、う……」
雷そのものが、少女の言動を支配していた。
「夢主」
「やだっ……もうやだ…!」
小さくうずくまった夢主は大好きなロールシャッハの呼びかけを一切無視し、雨粒と冷や汗で額を濡らしながら震え続ける。
「止め、もう、止めて、止めてくださいっ…!」
「……」
ロールシャッハは放られた傘を拾って持ち直し、パートナーの子供の正面に立った。命令も何も無しに、相手が立ち上がるのをじっと待っている。
「ねえ…ほらあの子。どうしたんだろ」
「さっきの雷じゃん?」
「ハハ、いつまで怖がってんだよ」
「コートの人困ってるっぽくね?」
このままでは通行の妨げになるし、何よりロールシャッハが迷惑している。歪み震える口元を手の甲で押さえつけ、夢主はなんとか立ち上がった。
「ごめ、んなさい。こんな、取り乱して、しまって」
なるべく息を止めつつ、平常の声色を心掛けて謝罪を絞り出した。
「帰り、ましょうか」
「……」
そっと肩を抱き寄せたりだとか、荷物を持ってくれたりだとか、そういう気遣いは表に出さない。大人はただ無言で歩幅を合わせてくれた。
「……」
「……正直」
「……」
「ソーさんの雷も、まだ怖いです」
「……」
「技を出されると、微妙な気持ちになります…」
「……」
「控えてくれたら、なんて……」
雷神や彼のパートナーは申し分の無い人物だ。それを踏まえていながらも、夢主は個人的な我が儘をつい漏らしてしまった。
「今の、皆には秘密にしておいてもらえますか?」
「訴えたところで、正義の神はたった一人の主張になど左右されない」
「……そうですよね…」
「その問題提起者が仲間だろうと被害者だろうと、マイティ・ソーが救ってきたものや今後救うものに比べれば微々たる弊害だ。お前の“怖いから止めろ”は、人を殺す」
「はい…」
「今置かれている状況に何一つ変化が訪れなくても構わないと言うのなら、自分の口から伝えることだな。毎日のことで情報発信には慣れているだろう、その点は保証してやる」
「……」
いつになく焦っているロールシャッハは、皮肉やコミック上の彼らしからぬ発言を次から次へと繰り出していく。パートナーとは対照的に黙りこくる夢主の方へ、気付かれない程度に傘が傾けられた。