番外編33:都合の良い期待
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「まだ帰れない。実は君に、大事な話があって」
良い身体をした傭兵は急に大人しくなり、いつもより低い声で改まる。
「な……何ですか?」
「……」
しばらく押し黙られている間、夢主はこの人物に容易に近付いてしまったことを後悔していた。デッドプールはまた何かやらかそうとしているのではないだろうか?
D・スマッシュをする方の利き腕は抑えられている。
「実は俺……結婚することになったんだ」
「え……ええー!?」
子供達が揃って大声を上げる一方、ロールシャッハのパートナーは嫌な予感が杞憂で済み肩の力を抜いていた。
「デッドプールが結婚!?」
「やるわね~不誠実そうなのに」
「そこの子猫ちゃん!君は勘違いしている!俺ちゃんは超ピュアなの!」
「全っ然っ思えないんだけど」
小さなヒーロー達も緊張の糸を解いて各々口を開く。
「まさかお前に先を越されるとは~」
「めでたいと言うべきだろうか」
「だろうかじゃなくてさ、素直に祝ってよ。神様でしょ?」
デッドプールはしゃがんで顎をテーブルに乗せ、卓上の5人と目線の高さを合わせる。
「おめでとうデッドプール、心から祝福しよう。相手は誰なのだ?」
「そーそー、そーいうのが欲しいんだよ!」
「こいつが夫だと、大変そうだな」
「相当肝が据わってるわよね」
「何の何の、肝を据わらせないといけないのは俺ちゃんの方。超~刺激的な嫁さん貰っちゃったからさ」
大分含みのある言い方をした後、実際モテモテな男性は顔だけ振り向き再度夢主の瞳を覗き込む。
「だから夢主ちゃん。申し訳ないけれど、君の気持ちには応えられない。この罪作りな男をどうか許してくれ」
「は、はあ…」
アキラはまたしても首をかしげた。
「夢主はデッドプールのことが好きなの?いつから?」
「番外編5の2ページ目からですぅ!」
「また訳の分からんことを…」
トニー・スタークも本日何度目かになるため息を吐いた。すっかり呆れたジェシカも彼と同じような顔をしている。
「夢主からも何か言ってやんなさいよ」
「ええと…」
勝手に失恋したことにされてしまいやや混乱気味な夢主の口からは、ジェシカの予想とは随分離れたお人好しな言葉が発せられた。
「ご結婚…おめでとう、ございます。お幸せに…」
その極々単純な祝福の言葉は、彼の目を一気に潤ませる。
「ううっ…!俺ちゃん、君との思い出絶対に忘れないっ!さあ、独身者同士最後のハグだぜ!」
「ひぇっ!?」
大した思い出も無い相手は、その場でスクッと立ち上がり両手を大きく広げた。傭兵稼業で鍛え上げられた厚い胸板が少女の目の前に広がる。
今日はディスク内に閉じ篭もってやり過ごそうとしていたが、これにより6人目のヒーローの痺れはとうとう切れた。パートナーの肩の上に半透明のホログラムが現れる。
「早くこいつを追い出せ」
「ああ追い出されてやるよ。熱い抱擁が済んだらな」
「婚姻届を無事提出しても、ふざけた思考は何一つ変わっていないようだな」
「ありがとう、ロールシャッハ。お褒めの言葉、大いに感謝する」
かしこまった言葉とは裏腹に、女の子を待ち受ける両手はまだかまだかと空中を揉みしだいている。夢主が無防備にも一歩前へ出ると、ロールシャッハは無言で彼女を睨みつけた。
「ハグだけですから。それで納得していただけるなら」
「……勝手にしろ」
それだけ言い捨てるとロールシャッハはテーブルに降り立ち、アベンジャーズの視線を集めながら端っこまで歩いて行ってしまった。完全に彼の機嫌を損ねたが今は仕方ない。
「イイねイイねぇ、アタイ話が分かるコは好きよ?」
「は、はは…」
「そういう反応はキライよ」
この呼ばれもしない客人が基地に居座ることで機嫌が悪くなっていくアイアンマンのためにも、さっさと条件を呑み終わらせてしまおう。
身体を寄せると、意外にも力任せではなく極々優しく包み込まれた。アベンジャーズと子供達、特にクリスとジェシカがつまらなそうに見守る中、夢主は勝手に高鳴る胸の鼓動に何とか耐えきってみせた。
「ありがとう。じゃあな夢主」
「お元気で。デッドプールさん」
厄介で危険そのものな傭兵だったが、今後はこれまでのように会えなくなるかもしれないと思うと少し寂しい気もする。
皆に見送られながら彼は名残惜しそうに扉の前まで歩いて行ったが、何か思い出したのか急に踵を返し両手をまとめ上げられた。
「あ、それか重婚でも良ければ今からハネムーン行く?行っちゃう?ハニーやシクラーやヴァネッサの後だから、もう君何番目になるかわかんないけど」
「最低です!」
ロールシャッハの期待通り、夢主は屈強な腕をバシッとはたき落とした。
「そんなー」
良い身体をした傭兵は急に大人しくなり、いつもより低い声で改まる。
「な……何ですか?」
「……」
しばらく押し黙られている間、夢主はこの人物に容易に近付いてしまったことを後悔していた。デッドプールはまた何かやらかそうとしているのではないだろうか?
D・スマッシュをする方の利き腕は抑えられている。
「実は俺……結婚することになったんだ」
「え……ええー!?」
子供達が揃って大声を上げる一方、ロールシャッハのパートナーは嫌な予感が杞憂で済み肩の力を抜いていた。
「デッドプールが結婚!?」
「やるわね~不誠実そうなのに」
「そこの子猫ちゃん!君は勘違いしている!俺ちゃんは超ピュアなの!」
「全っ然っ思えないんだけど」
小さなヒーロー達も緊張の糸を解いて各々口を開く。
「まさかお前に先を越されるとは~」
「めでたいと言うべきだろうか」
「だろうかじゃなくてさ、素直に祝ってよ。神様でしょ?」
デッドプールはしゃがんで顎をテーブルに乗せ、卓上の5人と目線の高さを合わせる。
「おめでとうデッドプール、心から祝福しよう。相手は誰なのだ?」
「そーそー、そーいうのが欲しいんだよ!」
「こいつが夫だと、大変そうだな」
「相当肝が据わってるわよね」
「何の何の、肝を据わらせないといけないのは俺ちゃんの方。超~刺激的な嫁さん貰っちゃったからさ」
大分含みのある言い方をした後、実際モテモテな男性は顔だけ振り向き再度夢主の瞳を覗き込む。
「だから夢主ちゃん。申し訳ないけれど、君の気持ちには応えられない。この罪作りな男をどうか許してくれ」
「は、はあ…」
アキラはまたしても首をかしげた。
「夢主はデッドプールのことが好きなの?いつから?」
「番外編5の2ページ目からですぅ!」
「また訳の分からんことを…」
トニー・スタークも本日何度目かになるため息を吐いた。すっかり呆れたジェシカも彼と同じような顔をしている。
「夢主からも何か言ってやんなさいよ」
「ええと…」
勝手に失恋したことにされてしまいやや混乱気味な夢主の口からは、ジェシカの予想とは随分離れたお人好しな言葉が発せられた。
「ご結婚…おめでとう、ございます。お幸せに…」
その極々単純な祝福の言葉は、彼の目を一気に潤ませる。
「ううっ…!俺ちゃん、君との思い出絶対に忘れないっ!さあ、独身者同士最後のハグだぜ!」
「ひぇっ!?」
大した思い出も無い相手は、その場でスクッと立ち上がり両手を大きく広げた。傭兵稼業で鍛え上げられた厚い胸板が少女の目の前に広がる。
今日はディスク内に閉じ篭もってやり過ごそうとしていたが、これにより6人目のヒーローの痺れはとうとう切れた。パートナーの肩の上に半透明のホログラムが現れる。
「早くこいつを追い出せ」
「ああ追い出されてやるよ。熱い抱擁が済んだらな」
「婚姻届を無事提出しても、ふざけた思考は何一つ変わっていないようだな」
「ありがとう、ロールシャッハ。お褒めの言葉、大いに感謝する」
かしこまった言葉とは裏腹に、女の子を待ち受ける両手はまだかまだかと空中を揉みしだいている。夢主が無防備にも一歩前へ出ると、ロールシャッハは無言で彼女を睨みつけた。
「ハグだけですから。それで納得していただけるなら」
「……勝手にしろ」
それだけ言い捨てるとロールシャッハはテーブルに降り立ち、アベンジャーズの視線を集めながら端っこまで歩いて行ってしまった。完全に彼の機嫌を損ねたが今は仕方ない。
「イイねイイねぇ、アタイ話が分かるコは好きよ?」
「は、はは…」
「そういう反応はキライよ」
この呼ばれもしない客人が基地に居座ることで機嫌が悪くなっていくアイアンマンのためにも、さっさと条件を呑み終わらせてしまおう。
身体を寄せると、意外にも力任せではなく極々優しく包み込まれた。アベンジャーズと子供達、特にクリスとジェシカがつまらなそうに見守る中、夢主は勝手に高鳴る胸の鼓動に何とか耐えきってみせた。
「ありがとう。じゃあな夢主」
「お元気で。デッドプールさん」
厄介で危険そのものな傭兵だったが、今後はこれまでのように会えなくなるかもしれないと思うと少し寂しい気もする。
皆に見送られながら彼は名残惜しそうに扉の前まで歩いて行ったが、何か思い出したのか急に踵を返し両手をまとめ上げられた。
「あ、それか重婚でも良ければ今からハネムーン行く?行っちゃう?ハニーやシクラーやヴァネッサの後だから、もう君何番目になるかわかんないけど」
「最低です!」
ロールシャッハの期待通り、夢主は屈強な腕をバシッとはたき落とした。
「そんなー」