番外編31:都合の良い居合い
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「アキラ、上着を貸してやれ」
少年はトレードマークの赤いパーカーを脱ぎ、夢主の剥き出しになった肩へ掛けてやった。
「全く。そういう御戯れは、名前をシルバーサムライからシルバーヘンタイに変えてからやれよな?」
「狙ってやった訳ではない。まさか本当にディー・スマッシュしないとはな」
俯いて小さく震え続ける少女に近付き、シルバーサムライは毒突きの如く威圧的に忠告する。
「夢主。お主の行動は勇気などとは到底言えぬ。情に流された、只の向こう見ずだ。いずれ己の身を滅ぼすことになるぞ」
「……」
「聞いているのか!?」
無反応を通していた夢主は顔を上げ、涙目で男をキッと睨み付けた。そして利き腕の拳に力を込める。
「ロールシャッハさん!!ディー・スマッシュ!」
やっと召還されたヒーローはまだ光に包まれている段階でありながらも両手を前へ突き出し、今の相手は娘っ子一人だと油断していたスーパーヴィランへ襲いかかる。
「!?」
右腕を左手で、鞘を持つ左腕を右手で掴み、シルバーサムライの動きを完全に封じた。
「くっ、不意討ちのつもりか?それにしては随分と荒削りだな…!」
言った本人も既に気付いているが、これは計略などという立派なものではない。夢主もロールシャッハも、ただ感情に身を任せているだけである。
「貴様!今自分が何をしたか分かっているのか!?」
兜の目前に迫るマスクの柄は、荒れ狂う嵐の空模様のように目まぐるしく変化していく。
「無論。パートナーに頼らないが故にああして素肌を晒す羽目になったのだ。拙者が言った通りであろう、己の身を滅ぼすと!」
「滅ぶのは貴様だ、破廉恥侍」
「んん、シルバーヘンタイよりしっくり来るな」
「呑気に言ってる場合じゃないよトニー!」
アキラはとりあえず身構えるが、この一触即発済みの状況にどうすれば良いかわからず離れた位置から見ていることしかできない。
「と、とりあえず俺達もディー・スマッシュを…」
「お主は手を出すな、アキラ!」
「そう、邪魔をするな。こいつは俺一人で捻り潰す」
「言ってくれるな……む?」
並以上の握力で押さえつけてくるロールシャッハの左肩が目に入る。まるで正面から刀で斬られたような裂け方を見て、侍は先程夢主が表情を曇らせた理由を悟った。
「フン……こういった、占い師のような発言は性ではないのだが…」
シルバーサムライは相手を軽蔑するように口角を上げる。
「お主等の相性は最悪だな」
「!?」
「何の話だ」
ロールシャッハは眉をひそめただけに終わったが、彼のファンはそうはいかなかった。
「な、なんでそんなことわかるんだよ!?」
言葉を失っている夢主の心を、アキラが背後から大きな声で代弁した。
「アキラ、お主にはわからぬか?此奴等、目的がまるですれ違っている。そしてそれを互いにすり合わせようともしない」
シルバーサムライは意固地になっているヒーローの手を振り払って一旦距離をとり、再び居合いの構えに入る。
「!?ディー・セキュア!」
夢主はすかさずロールシャッハをディスクの中へ戻した。
「……」
「……」
今度は鹿威しの音だけが辺りに響き渡る。
しばしの時が経ち、シルバーサムライの方が先に根負けして口を開いた。
「精々、互いに身を削り合うが良い。ディスクから解放される、その時まで」
スーパーヴィランは鞘に収まったままの刀を下ろし、床の間の刀掛けに置いた。
「え?」
「行け。俺は忙しいんだ。子供の成長にいつまでも付き合っている暇は無い」
アキラぽかんと口を開けていたが、この状況を徐々に理解していく。
「なんか……認めてくれたってこと…?」
「そうらしい。ほらな、何だかんだでイイ奴なのさ」
「行けと言ったのが聞こえなかったか?」
「それに恥ずかしがり屋だ」
「トッ、トニー!お、お邪魔しました…!」
また彼の怒りを買ってしまう前にさっさと屋敷から退散した方が良さそうだ。夢主は役立たずの布切れと化したYシャツを拾い、アキラと一緒にそそくさと渡り廊下へ出る。
しかし家主の横を通り過ぎる前に振り向き、最後に一つだけ文句を吐き捨てて行った。
「私、占いとか信じませんから!」
「……フン、勝手にしろ」
アイアンマンに救われた頃の妹も同じくらいの年齢だったかと、シルバーサムライは人知れず口元を綻ばせた。
少年はトレードマークの赤いパーカーを脱ぎ、夢主の剥き出しになった肩へ掛けてやった。
「全く。そういう御戯れは、名前をシルバーサムライからシルバーヘンタイに変えてからやれよな?」
「狙ってやった訳ではない。まさか本当にディー・スマッシュしないとはな」
俯いて小さく震え続ける少女に近付き、シルバーサムライは毒突きの如く威圧的に忠告する。
「夢主。お主の行動は勇気などとは到底言えぬ。情に流された、只の向こう見ずだ。いずれ己の身を滅ぼすことになるぞ」
「……」
「聞いているのか!?」
無反応を通していた夢主は顔を上げ、涙目で男をキッと睨み付けた。そして利き腕の拳に力を込める。
「ロールシャッハさん!!ディー・スマッシュ!」
やっと召還されたヒーローはまだ光に包まれている段階でありながらも両手を前へ突き出し、今の相手は娘っ子一人だと油断していたスーパーヴィランへ襲いかかる。
「!?」
右腕を左手で、鞘を持つ左腕を右手で掴み、シルバーサムライの動きを完全に封じた。
「くっ、不意討ちのつもりか?それにしては随分と荒削りだな…!」
言った本人も既に気付いているが、これは計略などという立派なものではない。夢主もロールシャッハも、ただ感情に身を任せているだけである。
「貴様!今自分が何をしたか分かっているのか!?」
兜の目前に迫るマスクの柄は、荒れ狂う嵐の空模様のように目まぐるしく変化していく。
「無論。パートナーに頼らないが故にああして素肌を晒す羽目になったのだ。拙者が言った通りであろう、己の身を滅ぼすと!」
「滅ぶのは貴様だ、破廉恥侍」
「んん、シルバーヘンタイよりしっくり来るな」
「呑気に言ってる場合じゃないよトニー!」
アキラはとりあえず身構えるが、この一触即発済みの状況にどうすれば良いかわからず離れた位置から見ていることしかできない。
「と、とりあえず俺達もディー・スマッシュを…」
「お主は手を出すな、アキラ!」
「そう、邪魔をするな。こいつは俺一人で捻り潰す」
「言ってくれるな……む?」
並以上の握力で押さえつけてくるロールシャッハの左肩が目に入る。まるで正面から刀で斬られたような裂け方を見て、侍は先程夢主が表情を曇らせた理由を悟った。
「フン……こういった、占い師のような発言は性ではないのだが…」
シルバーサムライは相手を軽蔑するように口角を上げる。
「お主等の相性は最悪だな」
「!?」
「何の話だ」
ロールシャッハは眉をひそめただけに終わったが、彼のファンはそうはいかなかった。
「な、なんでそんなことわかるんだよ!?」
言葉を失っている夢主の心を、アキラが背後から大きな声で代弁した。
「アキラ、お主にはわからぬか?此奴等、目的がまるですれ違っている。そしてそれを互いにすり合わせようともしない」
シルバーサムライは意固地になっているヒーローの手を振り払って一旦距離をとり、再び居合いの構えに入る。
「!?ディー・セキュア!」
夢主はすかさずロールシャッハをディスクの中へ戻した。
「……」
「……」
今度は鹿威しの音だけが辺りに響き渡る。
しばしの時が経ち、シルバーサムライの方が先に根負けして口を開いた。
「精々、互いに身を削り合うが良い。ディスクから解放される、その時まで」
スーパーヴィランは鞘に収まったままの刀を下ろし、床の間の刀掛けに置いた。
「え?」
「行け。俺は忙しいんだ。子供の成長にいつまでも付き合っている暇は無い」
アキラぽかんと口を開けていたが、この状況を徐々に理解していく。
「なんか……認めてくれたってこと…?」
「そうらしい。ほらな、何だかんだでイイ奴なのさ」
「行けと言ったのが聞こえなかったか?」
「それに恥ずかしがり屋だ」
「トッ、トニー!お、お邪魔しました…!」
また彼の怒りを買ってしまう前にさっさと屋敷から退散した方が良さそうだ。夢主は役立たずの布切れと化したYシャツを拾い、アキラと一緒にそそくさと渡り廊下へ出る。
しかし家主の横を通り過ぎる前に振り向き、最後に一つだけ文句を吐き捨てて行った。
「私、占いとか信じませんから!」
「……フン、勝手にしろ」
アイアンマンに救われた頃の妹も同じくらいの年齢だったかと、シルバーサムライは人知れず口元を綻ばせた。