「あの、私、ヒカルさんとアキラくんに謝らなくちゃいけなくて…」

知らない部屋で目が覚めてからここへ戻って来るまでにあった出来事を、夢主は全て仲間に話した。

正確な居場所は全くわからないが、アカツキ・ノゾムは今も敵のアジトに拘束されていることは確かだ。そして、何もできずに自分だけ逃げてきてしまった。

「……」
「ごめんなさい、私が先に帰って来ちゃって…」
「夢主が無事で良かった！」
「へ？」

アキラは文句をぶつけてくるような子ではないと元々わかっていたが、今の言葉は予想外だった。

「ああそう言えば、まだ言ってなかったよな。おかえり夢主！」
「た…ただいま…」

屈託の無い笑顔は眩しくもあり、暖かくも感じる。この男の子にはいつも良い意味で驚かされてばかりだ。

「父さんならきっと大丈夫。だから謝らないで」

もう一人の息子であるヒカルも優しく声を掛けてくれた。

「むしろ元気そうじゃねえか」
「夢主が言ってくれた通り、僕達みんなで迎えに行こうよ！」
「ってことで！まずはすっかり冷めちゃったお料理、作り直してもらいましょ」

ジェシカの言葉で思い出したが、今夜はフランス料理を楽しみに来ていた。夢主はまだ半分も味わえていない。

「！！俺まだデザート食ってねえぞ！」

クリスは踵を返し一目散に走り出していった。彼の肩に乗っているキャプテン・アメリカがパートナーに何やら語りかけているが、それもあっという間に聞こえなくなる。

「い、良いのかな…僕達勝手にテーブル離れたのに」
「お金かかるようなら私が奢ってあげるわよ」
「あー、ジェシカ…」

アイアンマンが見やる方向からは何も知らない客や店員が遠巻きにこちらを覗き、その全員が目を丸くしていた。天井や壁には穴が空き、棚は倒れ物は散らかり、バックヤードと言えど高級料理店に見合う空間だった廊下は最早見る影も無い。

「追加料金、高くつきそうだぞ…」

トニー・スタークはフェイスカバーの内側で血の気を引かせていた。