番外編30:都合の良い一流
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捕まってはいけないのに、早く走らなければならないのに、足が鉛のように重たい。
「棚を倒していけ!」
言われるがままに通路の脇に並ぶステンレス棚へ手を掛ける。積まれているダンボール箱や籠が重いのか、なかなか倒れてくれない。
「あっ!」
棚が傾いただけで気を抜いたのがいけなかった。球体の装置が手から滑り落ち、逃げてきた方向へ転がっていってしまう。
「構うな、走れ!」
「は…はい…」
足だけでなく目蓋も重く、頭も口も上手く回らなくなってきた。
「あれってまだ薬切れてねえんだろ?根性あるなー、さっさと諦めちまえば良いのに」
ジョエルはまるで他人事のように感想を述べつつ、倒れた棚を大股で乗り越えていく。
「ちっ、弱ぇ癖に小賢しい…!」
一方、散らかった備品を蹴り飛ばして廊下を突き進みながら、ジュウベエは懐から青いディスクを取り出した。
「待て。ヴィランに頼る必要はもうありません。この先は…」
夢主は何も無い行き止まりの壁に寄りかかり、ずるずると腰を下ろす。
「残念、ふりだしに戻りましたねぇ」
「手間取らせやがって」
「鬼ごっこは終わりだお嬢ちゃん。お家に帰る時間だぜ~、コイツでな」
拾った装置を片手に持つジョエルを中心に、3人の大人がじりじりと距離を詰めてくる。
「いや、いや…来ないで…」
「夢主、ディー・スマッシュだ」
ジュウベエは無言で長ドスの柄に手をかけ、刀身を数センチ剥き出しにして見せつけてくる。またもや夢主は召還をためらった。
「おいマニーノ、やっぱヴィラン出そうぜ~。あいつさっきディー・スマッシュ無しでディスクの外に出てきやがったんだ」
「それが可能なら、持ち主に指示などせず勝手に出てきている筈でしょう。その様子じゃ、自ら出るだけの力は残っていないのでは?」
「検証は貴様の仕事ではないだろう。夢主、早くしろ」
「でも」
赤いマスクの男が居る限り、ロールシャッハが命を落とす可能性は否めない。
また監禁され体を悪事に利用される羽目になったとしても、彼を死なせてしまうことに比べればどうだって良い。その場限りの考えで夢主はD・スマッシュを拒み続けていた。
「なら、降り注ぐ瓦礫は自分で避けることだな」
「え?」
どういうことかと尋ねる前に夢主とセレブリティ5の間の天井が崩れ落ち、黒い鎧のヒーローが大きな音を立てて目の前に着地した。赤く長いマントがゆっくりと重力に従い彼の背中を覆う。
「ソーさん!」
「間に合ったようだな」
頼れるヒーローは顔だけ振り向いて優しく微笑んだ。
「神ならもう少し何とかならなかったのか」
妖精サイズのロールシャッハは文句を垂れるが、小さな瓦礫の破片がパラパラと降りかかることなど夢主は気にしていない。
スーパーヒーローの到着にたじろいだ3人は引き返そうとするが、反対側の壁が緑色の巨大な拳により派手に破壊された。
「何だ。そっちに居たのか」
「夢主ちゃん!」
「夢主ー!」
ハルクが入ってきた横穴からヒカルとエドが顔を出す。
「ソーにハルクか…分が悪い。引き上げるぞ!」
「お、おう!」
ここに居ないアベンジャーズと戦っているヴィランを捨て置き、3人は撤退しようとする。しかしジョエルが触れた途端、転送装置は火花を散らし始めた。
「何をしている!?」
「ハァ!?俺のせいかよ!?」
「形勢逆転だな」
アイアンマンを先頭に、アベンジャーズと子供達も行き止まりへ駆けつける。
「大人しく投降すればもう鬼ごっこなんてしなくて済むぞ。それともまだ粘るか?」
「その必要は無い」
そして一番最後に、もう一人の犯罪者がこの場に現れた。象の鼻のような装飾が付いたベネチアンマスクだ。
「ティム!」
別の転送装置を使って来たティム・ギリアムは、仲間の手の中で煙を立てている方のそれを見て舌打ちする。
「やはり壊れたか。アカツキ博士め、私の発明品を片道きりの役立たずに改造するとは」
彼がこぼした呟きにアキラは目を見開いた。
「父さんがどうしたんだ!?」
「フン。それはそこのガキにでも聞くんだな。引き上げるぞ」
ようやく駆けつけた傷だらけのヴィラン達を各々のディスクに回収し、悪者はロキのアジトに逃げ帰っていった。
「棚を倒していけ!」
言われるがままに通路の脇に並ぶステンレス棚へ手を掛ける。積まれているダンボール箱や籠が重いのか、なかなか倒れてくれない。
「あっ!」
棚が傾いただけで気を抜いたのがいけなかった。球体の装置が手から滑り落ち、逃げてきた方向へ転がっていってしまう。
「構うな、走れ!」
「は…はい…」
足だけでなく目蓋も重く、頭も口も上手く回らなくなってきた。
「あれってまだ薬切れてねえんだろ?根性あるなー、さっさと諦めちまえば良いのに」
ジョエルはまるで他人事のように感想を述べつつ、倒れた棚を大股で乗り越えていく。
「ちっ、弱ぇ癖に小賢しい…!」
一方、散らかった備品を蹴り飛ばして廊下を突き進みながら、ジュウベエは懐から青いディスクを取り出した。
「待て。ヴィランに頼る必要はもうありません。この先は…」
夢主は何も無い行き止まりの壁に寄りかかり、ずるずると腰を下ろす。
「残念、ふりだしに戻りましたねぇ」
「手間取らせやがって」
「鬼ごっこは終わりだお嬢ちゃん。お家に帰る時間だぜ~、コイツでな」
拾った装置を片手に持つジョエルを中心に、3人の大人がじりじりと距離を詰めてくる。
「いや、いや…来ないで…」
「夢主、ディー・スマッシュだ」
ジュウベエは無言で長ドスの柄に手をかけ、刀身を数センチ剥き出しにして見せつけてくる。またもや夢主は召還をためらった。
「おいマニーノ、やっぱヴィラン出そうぜ~。あいつさっきディー・スマッシュ無しでディスクの外に出てきやがったんだ」
「それが可能なら、持ち主に指示などせず勝手に出てきている筈でしょう。その様子じゃ、自ら出るだけの力は残っていないのでは?」
「検証は貴様の仕事ではないだろう。夢主、早くしろ」
「でも」
赤いマスクの男が居る限り、ロールシャッハが命を落とす可能性は否めない。
また監禁され体を悪事に利用される羽目になったとしても、彼を死なせてしまうことに比べればどうだって良い。その場限りの考えで夢主はD・スマッシュを拒み続けていた。
「なら、降り注ぐ瓦礫は自分で避けることだな」
「え?」
どういうことかと尋ねる前に夢主とセレブリティ5の間の天井が崩れ落ち、黒い鎧のヒーローが大きな音を立てて目の前に着地した。赤く長いマントがゆっくりと重力に従い彼の背中を覆う。
「ソーさん!」
「間に合ったようだな」
頼れるヒーローは顔だけ振り向いて優しく微笑んだ。
「神ならもう少し何とかならなかったのか」
妖精サイズのロールシャッハは文句を垂れるが、小さな瓦礫の破片がパラパラと降りかかることなど夢主は気にしていない。
スーパーヒーローの到着にたじろいだ3人は引き返そうとするが、反対側の壁が緑色の巨大な拳により派手に破壊された。
「何だ。そっちに居たのか」
「夢主ちゃん!」
「夢主ー!」
ハルクが入ってきた横穴からヒカルとエドが顔を出す。
「ソーにハルクか…分が悪い。引き上げるぞ!」
「お、おう!」
ここに居ないアベンジャーズと戦っているヴィランを捨て置き、3人は撤退しようとする。しかしジョエルが触れた途端、転送装置は火花を散らし始めた。
「何をしている!?」
「ハァ!?俺のせいかよ!?」
「形勢逆転だな」
アイアンマンを先頭に、アベンジャーズと子供達も行き止まりへ駆けつける。
「大人しく投降すればもう鬼ごっこなんてしなくて済むぞ。それともまだ粘るか?」
「その必要は無い」
そして一番最後に、もう一人の犯罪者がこの場に現れた。象の鼻のような装飾が付いたベネチアンマスクだ。
「ティム!」
別の転送装置を使って来たティム・ギリアムは、仲間の手の中で煙を立てている方のそれを見て舌打ちする。
「やはり壊れたか。アカツキ博士め、私の発明品を片道きりの役立たずに改造するとは」
彼がこぼした呟きにアキラは目を見開いた。
「父さんがどうしたんだ!?」
「フン。それはそこのガキにでも聞くんだな。引き上げるぞ」
ようやく駆けつけた傷だらけのヴィラン達を各々のディスクに回収し、悪者はロキのアジトに逃げ帰っていった。