第三部:都合の悪い男女
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
夢主は立ち上がり逃げ出そうとするが、肩を掴むロゼッタがそれを許さない。
「くっ……ごめんなさい!」
「好き勝手暴れてくれちゃって。でももうお終いよ。罪の無い女の子の命が惜しければ、大人しく降伏することね」
たった1人のヒーローは反射的に構えていた拳を降ろす。態度は強気なままで。
「脅しにならんな。大事な研究成果なんだろう」
「さあどうかしら?私、科学とか難しいことはわからないの」
「おい!?」
焦った象鼻の男が話の腰を折る。
「良いから私に任せなさい!…で、もし大事な子だとしても、死なない程度なら痛めつけたって問題無いでしょう?」
そう言って小型ナイフを取り出し、人質の首にあてがう。卑怯な手にこの男が腹を立てない筈が無い。
「悪党が…!」
「逃げてロールシャッハさん!私は…」
彼に逃げられたら、自分自身は文字通り終わるだろう。
「…大丈夫だから」
しかし彼が助けを呼んできてくれるならば、それまで耐えてみせる。望みはまだある。ここで彼が人質を無視すれば、それができるのだ。
何よりも、大好きなヒーローには無事でいてほしい。
「助けようとしてくれて、ありがとう。でも、今は逃げて!」
その言葉をきっかけに、ロールシャッハのマスクの模様が激しく流動し始める。
「貴様っ…!」
「え?」
「ちょっと、あれ怒ってんじゃないの?」
ロゼッタの言う通り。彼は握り拳をより固く締め、かすかに震わせていた。
「いやっあの、別に、ロールシャッハさんが弱いから逃げてってことじゃなくて」
「弱い、だと…?」
「違います違います!えーっと…!」
ジュウベエとティムは下らないやりとりにしびれを切らし、今やるべきことを進めようとする。
「おい、ディー・セキュアを」
「ああ」
ティムは灰色のディスクを腰のホルダーにきちんと用意してきていた。
「待って。面白そうだから続けさせましょ」
「何を悠長なことを!」
彼は空ディスクを握りしめ、本日何度目かになる大声を出す。
「見なさいよ、人質を取られた途端に大人しくなってんじゃない。茶番くらいさせてあげましょうよ」
どうやらヒーローを納得させる猶予はいくらか貰えそうだ。夢主はゆっくり話し始める。
「ロールシャッハさんの意志の、正義感の強さは知ってる。勿論、力が人一倍強いことも。私、ウォッチメンの…貴方のマニアだから」
「……」
「どんなやり方だとしても、最後まで意志を曲げずに貫き通す…」
強引なやり方だとしても、その場では負け犬のようなことをしても。
「だから、今は逃げても、きっと最後には助け出してくれる。それがロールシャッハなの」
なんて言いつつ、本当はちょっと違う。例え死ぬことになるとしても敵に、否、自分に背を向けることは決してしない。目の前のことをやると決めれば、それがどんなに困難なことだとしても、たとえ死ぬことになるとしても、強行してみせる。それがロールシャッハだ。
でも、彼に死んでほしくなんかない。自分の言葉で、彼を死なせない。それが第一だ。
「フフ、くっさいセリフね」
冷やかされた夢主は自分の放った言葉に恥ずかしくなってきてしまい、少し俯いた。
黙っていた当人が構わず口を開く。
「俺のマニアと言ったな」
「は、はい」
「それは確かか?」
「はい!」
「なら俺は、お前の思うロールシャッハではない。人違いのようだ」
夢主の主張は冷たく否定されてしまう。
「俺は、お前とこいつ等に背を向けることはしない。絶対にな」
ロールシャッハは下ろしていた拳を構え直した。
「こんな状況でまだ戦うつもり?無理に決まってんじゃないの、こっちに居るヴィランが見えないのかしら?」
セレブリティ5の背後に並んでいたヴィラン達が数歩前に出た。生身の人間では到底適いそうにないアボミネーションやウィップラッシュ等も加わっている。
「関係無い。全員殺す」
「プッ、殺すだってよ!」
「ククク…」
「こら、笑っては、フフッ、失礼でしょう」
「厄介なヒーローだと思っていたが、ただの無鉄砲なバカだな」
ヴィランが迫り寄っても敵全員に笑いものにされても、ロールシャッハの態度が変わることは無い。
「くっ……ごめんなさい!」
「好き勝手暴れてくれちゃって。でももうお終いよ。罪の無い女の子の命が惜しければ、大人しく降伏することね」
たった1人のヒーローは反射的に構えていた拳を降ろす。態度は強気なままで。
「脅しにならんな。大事な研究成果なんだろう」
「さあどうかしら?私、科学とか難しいことはわからないの」
「おい!?」
焦った象鼻の男が話の腰を折る。
「良いから私に任せなさい!…で、もし大事な子だとしても、死なない程度なら痛めつけたって問題無いでしょう?」
そう言って小型ナイフを取り出し、人質の首にあてがう。卑怯な手にこの男が腹を立てない筈が無い。
「悪党が…!」
「逃げてロールシャッハさん!私は…」
彼に逃げられたら、自分自身は文字通り終わるだろう。
「…大丈夫だから」
しかし彼が助けを呼んできてくれるならば、それまで耐えてみせる。望みはまだある。ここで彼が人質を無視すれば、それができるのだ。
何よりも、大好きなヒーローには無事でいてほしい。
「助けようとしてくれて、ありがとう。でも、今は逃げて!」
その言葉をきっかけに、ロールシャッハのマスクの模様が激しく流動し始める。
「貴様っ…!」
「え?」
「ちょっと、あれ怒ってんじゃないの?」
ロゼッタの言う通り。彼は握り拳をより固く締め、かすかに震わせていた。
「いやっあの、別に、ロールシャッハさんが弱いから逃げてってことじゃなくて」
「弱い、だと…?」
「違います違います!えーっと…!」
ジュウベエとティムは下らないやりとりにしびれを切らし、今やるべきことを進めようとする。
「おい、ディー・セキュアを」
「ああ」
ティムは灰色のディスクを腰のホルダーにきちんと用意してきていた。
「待って。面白そうだから続けさせましょ」
「何を悠長なことを!」
彼は空ディスクを握りしめ、本日何度目かになる大声を出す。
「見なさいよ、人質を取られた途端に大人しくなってんじゃない。茶番くらいさせてあげましょうよ」
どうやらヒーローを納得させる猶予はいくらか貰えそうだ。夢主はゆっくり話し始める。
「ロールシャッハさんの意志の、正義感の強さは知ってる。勿論、力が人一倍強いことも。私、ウォッチメンの…貴方のマニアだから」
「……」
「どんなやり方だとしても、最後まで意志を曲げずに貫き通す…」
強引なやり方だとしても、その場では負け犬のようなことをしても。
「だから、今は逃げても、きっと最後には助け出してくれる。それがロールシャッハなの」
なんて言いつつ、本当はちょっと違う。例え死ぬことになるとしても敵に、否、自分に背を向けることは決してしない。目の前のことをやると決めれば、それがどんなに困難なことだとしても、たとえ死ぬことになるとしても、強行してみせる。それがロールシャッハだ。
でも、彼に死んでほしくなんかない。自分の言葉で、彼を死なせない。それが第一だ。
「フフ、くっさいセリフね」
冷やかされた夢主は自分の放った言葉に恥ずかしくなってきてしまい、少し俯いた。
黙っていた当人が構わず口を開く。
「俺のマニアと言ったな」
「は、はい」
「それは確かか?」
「はい!」
「なら俺は、お前の思うロールシャッハではない。人違いのようだ」
夢主の主張は冷たく否定されてしまう。
「俺は、お前とこいつ等に背を向けることはしない。絶対にな」
ロールシャッハは下ろしていた拳を構え直した。
「こんな状況でまだ戦うつもり?無理に決まってんじゃないの、こっちに居るヴィランが見えないのかしら?」
セレブリティ5の背後に並んでいたヴィラン達が数歩前に出た。生身の人間では到底適いそうにないアボミネーションやウィップラッシュ等も加わっている。
「関係無い。全員殺す」
「プッ、殺すだってよ!」
「ククク…」
「こら、笑っては、フフッ、失礼でしょう」
「厄介なヒーローだと思っていたが、ただの無鉄砲なバカだな」
ヴィランが迫り寄っても敵全員に笑いものにされても、ロールシャッハの態度が変わることは無い。