番外編30:都合の良い一流
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すぐ横の壁に何かがぶつかる音と振動によって夢主は意識を取り戻した。
まだ思考がはっきりせず、見覚えのない天井と脇の壁紙をしばし眺める。
「チッ、もう薬が切れたか」
「早ぇお目覚めだな、プリンセスちゃん?」
誰に対しての言葉かすらわからないまま声のする方に目を向けると、夢主の頭は一気に冴え、全身が凍り付く感覚に襲われた。以前自分を誘拐し船の奥底に閉じ込めた悪党が今、手の届く距離に居るのだ。
既に抜かれている刀から極力遠ざかるよう、壁に沿って何とか重い体を起こす。
「貴男達っ…!」
「丁度良い時に目が覚めたな。今からこいつを黙らせるところだったんだ」
ジュウベエは夢主の顔に向けていたドスを、いつの間にかディスクの外に出ている左右対称模様へと構え直した。
「い…嫌っ!」
かつて自分を庇い、肩を血で染め苦しんでいたロールシャッハを瞬時に思い出す。
「やめてください!!」
「やめるも何も、ディスクの持ち主がディー・セキュアすれば想像しているような惨事は避けられる。そうだろう?」
ジュウベエはロールシャッハから目を離さず、いつぞやか足止めしてきた時と同じく夢主に一つ提案した。
「夢主、相手にするな」
パートナーの子供の喉は刀がすぐ届く位置にあるため、ロールシャッハも下手に動けないでいる。
「おさらいだ。今ディスクに戻せば、大好きなヒーローが死ぬことはない」
「えっ?大好き?何お前、ロールシャッハに惚れてんのか?」
手持ち無沙汰なジョエルは面白がって子供の頭を軽く小突く。
「ほぉ~、全然気付かなかったぜ」
「このガキはかなり露骨に表していたぞ。それくらい気付けなくてどうする」
「だって、俺は興味無ぇもんそんなこと」
雑談の間も、ジュウベエの手元がブレることは一切無い。
観念した様子の夢主は黒い筋の通った青色ディスクをバイオバンドから外し、尊敬する人物に向けて構えた。
「止せ」
「……いいえ」
「止せと言っている」
「約束じゃないですか。都合が悪ければ、構わずやれって」
「夢主」
「私にも、守らせてください。ディー・セキュア」
ロールシャッハは微塵も納得していないが、彼の体は彼女の手の中へ呆気なく吸い込まれてしまった。
「フ、弱者はそうやって素直に従っていれば良いんだ」
邪魔者が無事封印され、ジュウベエは長ドスを鞘に収めた。
「俺、なんか感動しちまった。パートナーを守るために身を挺するなんてよ。くぅ~、涙ぐましいったらないぜ!」
「お前の感想はどうでも良い。さっさと転送装置を起動しろ」
「まあ待てって」
状況は最悪だが、夢主はまだ諦めていなかった。手の震えを必死に抑え頭を巡らせる。ここからどうすればロールシャッハを守りきり、且つ自分も助かるか。
壁沿いのベンチに座っている夢主が出入り口に一番近いが、男達はすぐ目の前に立っている。ドアノブに手を掛けても取り押さえられるのがオチだ。仮に部屋の外に出られたとして、何処に逃げればアキラ達と合流できるかわからないし、自分の足では大人2人やヴィランに容易く追いつかれてしまうだろう。
良い案がなかなか浮かばないが夢主は考え続ける。その時、ロッカールームの扉が外側から開かれた。
「!」
部外者だ。
相手は凶器を持ちベネチアンマスクを被った奇妙な悪党。何処の誰だか知らないが、善良な一般人はきっと自分の味方になってくれる筈。
夢主は立ち上がり、最後のチャンスだと信じて精一杯に訴える。
「助けてください!この人た…ち……」
しかし彼女は言い切る前に言葉を失い、おぼつかない足取りで数歩後ずさる。
「この人達が、何ですか?何か粗相でも?」
黒ずくめに個性的な仮面という、お揃いの風貌。そもそも、彼も見覚えのある男だ。
全面マスクのマニーノは後ろ手でドアの内鍵を閉め立ち塞がる。夢主は完全に囲まれてしまった。
「遅かったな」
「勘の鋭い子供の相手をしていただけですよ。まあ、今頃見当違いな…備品倉庫でも漁っているんでしょう」
出口は塞がれ、D・スマッシュは凶器を持った男が居るからできない。もう1人はというと、自分を拘束するでもなく何かに奮闘している。
「これどーやるんだ?もっとわかりやすいテレポートにしてくれよ~」
「!」
活路が見えた。
「マニーノ、ジュウベエ。どっちでも良いからコレ代わってく…うわぁっおい!?」
完全に油断していたジョエルに向かって突進し、軽くお手玉されていた転送装置を勢いだけで強引に奪った。その拍子に何かスイッチに触れてしまったのか、部屋の奥の壁にぶつかる前に装置が起動し夢主1人だけが光に包まれた。
まだ思考がはっきりせず、見覚えのない天井と脇の壁紙をしばし眺める。
「チッ、もう薬が切れたか」
「早ぇお目覚めだな、プリンセスちゃん?」
誰に対しての言葉かすらわからないまま声のする方に目を向けると、夢主の頭は一気に冴え、全身が凍り付く感覚に襲われた。以前自分を誘拐し船の奥底に閉じ込めた悪党が今、手の届く距離に居るのだ。
既に抜かれている刀から極力遠ざかるよう、壁に沿って何とか重い体を起こす。
「貴男達っ…!」
「丁度良い時に目が覚めたな。今からこいつを黙らせるところだったんだ」
ジュウベエは夢主の顔に向けていたドスを、いつの間にかディスクの外に出ている左右対称模様へと構え直した。
「い…嫌っ!」
かつて自分を庇い、肩を血で染め苦しんでいたロールシャッハを瞬時に思い出す。
「やめてください!!」
「やめるも何も、ディスクの持ち主がディー・セキュアすれば想像しているような惨事は避けられる。そうだろう?」
ジュウベエはロールシャッハから目を離さず、いつぞやか足止めしてきた時と同じく夢主に一つ提案した。
「夢主、相手にするな」
パートナーの子供の喉は刀がすぐ届く位置にあるため、ロールシャッハも下手に動けないでいる。
「おさらいだ。今ディスクに戻せば、大好きなヒーローが死ぬことはない」
「えっ?大好き?何お前、ロールシャッハに惚れてんのか?」
手持ち無沙汰なジョエルは面白がって子供の頭を軽く小突く。
「ほぉ~、全然気付かなかったぜ」
「このガキはかなり露骨に表していたぞ。それくらい気付けなくてどうする」
「だって、俺は興味無ぇもんそんなこと」
雑談の間も、ジュウベエの手元がブレることは一切無い。
観念した様子の夢主は黒い筋の通った青色ディスクをバイオバンドから外し、尊敬する人物に向けて構えた。
「止せ」
「……いいえ」
「止せと言っている」
「約束じゃないですか。都合が悪ければ、構わずやれって」
「夢主」
「私にも、守らせてください。ディー・セキュア」
ロールシャッハは微塵も納得していないが、彼の体は彼女の手の中へ呆気なく吸い込まれてしまった。
「フ、弱者はそうやって素直に従っていれば良いんだ」
邪魔者が無事封印され、ジュウベエは長ドスを鞘に収めた。
「俺、なんか感動しちまった。パートナーを守るために身を挺するなんてよ。くぅ~、涙ぐましいったらないぜ!」
「お前の感想はどうでも良い。さっさと転送装置を起動しろ」
「まあ待てって」
状況は最悪だが、夢主はまだ諦めていなかった。手の震えを必死に抑え頭を巡らせる。ここからどうすればロールシャッハを守りきり、且つ自分も助かるか。
壁沿いのベンチに座っている夢主が出入り口に一番近いが、男達はすぐ目の前に立っている。ドアノブに手を掛けても取り押さえられるのがオチだ。仮に部屋の外に出られたとして、何処に逃げればアキラ達と合流できるかわからないし、自分の足では大人2人やヴィランに容易く追いつかれてしまうだろう。
良い案がなかなか浮かばないが夢主は考え続ける。その時、ロッカールームの扉が外側から開かれた。
「!」
部外者だ。
相手は凶器を持ちベネチアンマスクを被った奇妙な悪党。何処の誰だか知らないが、善良な一般人はきっと自分の味方になってくれる筈。
夢主は立ち上がり、最後のチャンスだと信じて精一杯に訴える。
「助けてください!この人た…ち……」
しかし彼女は言い切る前に言葉を失い、おぼつかない足取りで数歩後ずさる。
「この人達が、何ですか?何か粗相でも?」
黒ずくめに個性的な仮面という、お揃いの風貌。そもそも、彼も見覚えのある男だ。
全面マスクのマニーノは後ろ手でドアの内鍵を閉め立ち塞がる。夢主は完全に囲まれてしまった。
「遅かったな」
「勘の鋭い子供の相手をしていただけですよ。まあ、今頃見当違いな…備品倉庫でも漁っているんでしょう」
出口は塞がれ、D・スマッシュは凶器を持った男が居るからできない。もう1人はというと、自分を拘束するでもなく何かに奮闘している。
「これどーやるんだ?もっとわかりやすいテレポートにしてくれよ~」
「!」
活路が見えた。
「マニーノ、ジュウベエ。どっちでも良いからコレ代わってく…うわぁっおい!?」
完全に油断していたジョエルに向かって突進し、軽くお手玉されていた転送装置を勢いだけで強引に奪った。その拍子に何かスイッチに触れてしまったのか、部屋の奥の壁にぶつかる前に装置が起動し夢主1人だけが光に包まれた。