番外編29:都合の良い酔い
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特別なことが無い限り押しの弱い夢主は、中身のない話にだらだらと付き合ってしまった。いつもキッパリしているジェシカやクリスを見習って、いい加減この場を離れることにする。
「あの、私急いでいるので…」
「でもよー」
さすがにもう良いだろう、十分相手してやっただろうと心を鬼にして背を向けたが、こちらに構わず続けられた話に彼女の足は思わず止まる。
「コレあってもしょうがねぇよな。セッションするメンバーとはぐれちまってさ~、もう飲むしかねぇよな~」
「え……それって大変じゃないですか!飲んでる場合じゃ…!」
「え~?この人混みだぜ?電波も悪ぃから連絡つかねぇし、もー諦めたぁ」
拗ねた男はロック画面のままの携帯をカウンターの上に放り投げる。
「そんな…捜せばきっと見つかりますよ!」
ステージに穴を開けてしまっては、イベントの運営者に多大な迷惑がかかってしまう。そして何より、今夜この人物の演奏を楽しみに訪れたであろうファンをがっかりさせてしまうことにもなる。
「だぁって、見つかんねぇモンは見つかんねぇんだもん!」
「だもんって……ちなみに、あと何分で出番なんですか?」
「チキショー!今日の昼だって捜してたガキは全然見つかんねぇし…マジでやってらんねぇし…」
本人よりも心配する夢主を無視しぶちぶち文句を垂れながら、彼はカウンターに置いたジョッキの縁に顎を乗せた。いい大人が半ベソをかいている。
「とりあえず主催者の方に知らせた方が良いですよ。ほら、本部のテントがあっちに…」
「んん…?」
指さす子供の手首を目で捉えた瞬間、ジョエル・マーフィーの酔いは完全に覚めた。
「ああ、別に捜さなくても、メンバーの方は本部で待ってるかもしれませんね!とにかくそこに行けば何とかなり」
「お、お前っ、何でこんなところに!?ギャッ」
突然のことにジョエルは声を上げ夢主の言葉を遮った。そのままイスから転げ落ち尻餅をついてしまう。
「イッテー…」
「あの、大丈夫ですか?」
相手が何に対してそんなに驚いたのか知る由もないが、まずは目の前で転げた彼の身を案じる。
「まあ良い、お陰で手間が省けたぜ」
パワー属性ディスクを扱う悪党は、手を差し伸べる夢主のその手ではなく腕をガッシリと掴んだ。
「お嬢ちゃん、俺と一緒げえぇぇっ!!?」
「!?」
彼はミッションの成功を確信していた。が、顔を上げた途端、誰もさらわず何も盗らず、下品な悲鳴を上げ一目散にイベント会場から逃げ出してしまった。
「え、待って!ステージはどうするんですか!?」
「失礼な奴だ」
聞き慣れた低い声に振り向けば、夢主の探し求めていた人物が真後ろに突っ立っていた。
「ああ、マズいです、ロールシャッハさん…どうしましょう…」
「どうしたの夢主?」
「みんなも…」
ロールシャッハと夢主を探しに来たアキラ達とホログラムのままのアベンジャーズに、これまでの数分に起きた出来事を説明した。
「なるほど、それは由々しき事態だな」
「どういうこと?」
「このままだとステージに穴を空けちまうってことだよ」
きょとんとするアキラのために、キャプテン・アメリカを肩に乗せたクリスが簡潔に答える。
「えぇーっ!?マズいじゃん!」
「これ、私のせいですかね…」
「そんなことないよ夢主ちゃん」
「そーよ。相手が勝手に逃げ出したんだから、夢主が気にすること無いわ」
「どうすれば良いかな?ねえ、ハルク」
「……」
エドは自分の頭の上で胡座をかいているヒーローに意見を求める。今まで黙って話を聞いていた彼は目を開いて短く述べた。
「俺達がステージに出るか」
「……」
真顔で凍り付く子供達に対し、ハルクもまた真顔で返す。
「冗談だ」
「やぁ~、日本のビールもなかなか美味かったなー」
「……で、実験体はどうした」
「あの、私急いでいるので…」
「でもよー」
さすがにもう良いだろう、十分相手してやっただろうと心を鬼にして背を向けたが、こちらに構わず続けられた話に彼女の足は思わず止まる。
「コレあってもしょうがねぇよな。セッションするメンバーとはぐれちまってさ~、もう飲むしかねぇよな~」
「え……それって大変じゃないですか!飲んでる場合じゃ…!」
「え~?この人混みだぜ?電波も悪ぃから連絡つかねぇし、もー諦めたぁ」
拗ねた男はロック画面のままの携帯をカウンターの上に放り投げる。
「そんな…捜せばきっと見つかりますよ!」
ステージに穴を開けてしまっては、イベントの運営者に多大な迷惑がかかってしまう。そして何より、今夜この人物の演奏を楽しみに訪れたであろうファンをがっかりさせてしまうことにもなる。
「だぁって、見つかんねぇモンは見つかんねぇんだもん!」
「だもんって……ちなみに、あと何分で出番なんですか?」
「チキショー!今日の昼だって捜してたガキは全然見つかんねぇし…マジでやってらんねぇし…」
本人よりも心配する夢主を無視しぶちぶち文句を垂れながら、彼はカウンターに置いたジョッキの縁に顎を乗せた。いい大人が半ベソをかいている。
「とりあえず主催者の方に知らせた方が良いですよ。ほら、本部のテントがあっちに…」
「んん…?」
指さす子供の手首を目で捉えた瞬間、ジョエル・マーフィーの酔いは完全に覚めた。
「ああ、別に捜さなくても、メンバーの方は本部で待ってるかもしれませんね!とにかくそこに行けば何とかなり」
「お、お前っ、何でこんなところに!?ギャッ」
突然のことにジョエルは声を上げ夢主の言葉を遮った。そのままイスから転げ落ち尻餅をついてしまう。
「イッテー…」
「あの、大丈夫ですか?」
相手が何に対してそんなに驚いたのか知る由もないが、まずは目の前で転げた彼の身を案じる。
「まあ良い、お陰で手間が省けたぜ」
パワー属性ディスクを扱う悪党は、手を差し伸べる夢主のその手ではなく腕をガッシリと掴んだ。
「お嬢ちゃん、俺と一緒げえぇぇっ!!?」
「!?」
彼はミッションの成功を確信していた。が、顔を上げた途端、誰もさらわず何も盗らず、下品な悲鳴を上げ一目散にイベント会場から逃げ出してしまった。
「え、待って!ステージはどうするんですか!?」
「失礼な奴だ」
聞き慣れた低い声に振り向けば、夢主の探し求めていた人物が真後ろに突っ立っていた。
「ああ、マズいです、ロールシャッハさん…どうしましょう…」
「どうしたの夢主?」
「みんなも…」
ロールシャッハと夢主を探しに来たアキラ達とホログラムのままのアベンジャーズに、これまでの数分に起きた出来事を説明した。
「なるほど、それは由々しき事態だな」
「どういうこと?」
「このままだとステージに穴を空けちまうってことだよ」
きょとんとするアキラのために、キャプテン・アメリカを肩に乗せたクリスが簡潔に答える。
「えぇーっ!?マズいじゃん!」
「これ、私のせいですかね…」
「そんなことないよ夢主ちゃん」
「そーよ。相手が勝手に逃げ出したんだから、夢主が気にすること無いわ」
「どうすれば良いかな?ねえ、ハルク」
「……」
エドは自分の頭の上で胡座をかいているヒーローに意見を求める。今まで黙って話を聞いていた彼は目を開いて短く述べた。
「俺達がステージに出るか」
「……」
真顔で凍り付く子供達に対し、ハルクもまた真顔で返す。
「冗談だ」
「やぁ~、日本のビールもなかなか美味かったなー」
「……で、実験体はどうした」