第三部:都合の悪い男女
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不思議と、誰にも見つからずに船首の前まで辿り着くことができた。
「よし…」
夢主の背丈程も無い積み荷地帯を抜ければ、ヘリポートに置きっぱなしの小型飛行機に乗り込める。彼の予測通りだ。
あれに乗れば、逃げられる。帰れる。元の生活に戻れる。
今ならヴィランの影は無し。
「行くぞ!」
「はい!…え?」
ついて行きたいのに、突然辺りがカラーサングラスを掛けたように色づき、体が宙に浮き始める。
ロールシャッハはすぐに振り向くが遅かった。夢主はモードックの額から放出されるビームが形作る球体に包まれ、高く持ち上げられてしまっていた。
「嫌っ!何これ!?ロールシャッハさん!」
「ヒャーッハッハッハッハァ、1人目ゲット~!飛行機の前で張ってて正解だったぜ!」
やっとここまで来たのに。
どうにか出来ないものか、内側から手をつく。
「んっ、硬い…!」
夢主を捕らえているバリアは光で出来ている筈だが、その表面はツルツルしていて押してもびくともしない。
「無理はなさんな、お嬢さ~ん…ん?」
船のデッキから錆びたフックが飛んできて、余裕をこいているモードックの顔面に命中した。
「ギャフン!」
その拍子にバリアは消え、夢主の体は結構な高さから放り出された。死を覚悟したが、走って跳んできたロールシャッハに抱き留められる。
「あ…!」
お姫様だっこだ。
今更ながら、憧れのヒーローにマンツーマンで守られる。その事実だけでも信じ難く、ロールシャッハマニアを興奮させ現実から引き離すには十分であった。
「あわ…!わっ…!」
加えて、力強い手が今、夢主の肩を、太ももの裏をしっかり掴み、彼自身の体の方へ抱き寄せている。彼の体温がじんわり伝わる。彼の息遣いがかすかに聞こえる。夢にまで見
「何だ」
キツい口調で現実に引き戻された。
「いえ!何でも!」
ヒーローは積み荷の影に隠れて夢主を降ろす。
「体は。何ともないか?」
「はい!」
「フム、上等だ」
そう言いながら彼は立ち上がり、懐から取り出した銃を空飛ぶモードックに向けて構える。ナイトオウル作のあの移動装置だとすぐにわかった。
「え、ちょっと…」
鋭いフックを、顔面むき出しの敵に?万一そんなことをすれば、痛そうどころでは済まない惨事になりそうだ。ロールシャッハならやりかねない。
夢主が目を覆う間もくれずにそれは発射される。
「お、おわぁ~!」
彼女の予感を外れ、フックに続くワイヤーはモードックをぐるぐる巻きにした。それだけでは終わらない。
「な、な、なんだぁ!?」
「うぐっ……ぁああーっ!!」
ヒーローは唸り声と共に巨体をデッキに叩きつける。
「イッテェ~……ちっく、しょう…」
「す、すごい…!」
怪我を負っているにも関わらず、彼の力は一体どこから来るのか。実は無限に湧き出てくるものなのだろうか。
「…ロールシャッハさん?」
否、膝に手を突き肩で息をしている。素顔は見えずとも、彼はまごうこと無き人間だ。限界の時は近い。
が、まだ終わらない。
「に、人間風情が…!タダで済むと思うぁあ~!?」
モードックを振り上げ、今度はデッキの外、船の側面に叩きつける。衝撃でワイヤーはほどけ、銃へ収納された。
ロールシャッハが柵まで駆け寄り下を覗き込むと、海に落ちた対象は目を回しながらプカプカ浮いている。科学の力をほとんど発揮させることなくモードックを倒した。
「ハーイそこまでよ!」
「!?」
船首の方から聞き覚えのある声。振り向くと、閉じ込めていた筈の悪党5人と数名のヴィランがデッキに勢揃いしている。肝心の夢主は上半身を腕ごとロープで拘束されてしまっていた。
「よし…」
夢主の背丈程も無い積み荷地帯を抜ければ、ヘリポートに置きっぱなしの小型飛行機に乗り込める。彼の予測通りだ。
あれに乗れば、逃げられる。帰れる。元の生活に戻れる。
今ならヴィランの影は無し。
「行くぞ!」
「はい!…え?」
ついて行きたいのに、突然辺りがカラーサングラスを掛けたように色づき、体が宙に浮き始める。
ロールシャッハはすぐに振り向くが遅かった。夢主はモードックの額から放出されるビームが形作る球体に包まれ、高く持ち上げられてしまっていた。
「嫌っ!何これ!?ロールシャッハさん!」
「ヒャーッハッハッハッハァ、1人目ゲット~!飛行機の前で張ってて正解だったぜ!」
やっとここまで来たのに。
どうにか出来ないものか、内側から手をつく。
「んっ、硬い…!」
夢主を捕らえているバリアは光で出来ている筈だが、その表面はツルツルしていて押してもびくともしない。
「無理はなさんな、お嬢さ~ん…ん?」
船のデッキから錆びたフックが飛んできて、余裕をこいているモードックの顔面に命中した。
「ギャフン!」
その拍子にバリアは消え、夢主の体は結構な高さから放り出された。死を覚悟したが、走って跳んできたロールシャッハに抱き留められる。
「あ…!」
お姫様だっこだ。
今更ながら、憧れのヒーローにマンツーマンで守られる。その事実だけでも信じ難く、ロールシャッハマニアを興奮させ現実から引き離すには十分であった。
「あわ…!わっ…!」
加えて、力強い手が今、夢主の肩を、太ももの裏をしっかり掴み、彼自身の体の方へ抱き寄せている。彼の体温がじんわり伝わる。彼の息遣いがかすかに聞こえる。夢にまで見
「何だ」
キツい口調で現実に引き戻された。
「いえ!何でも!」
ヒーローは積み荷の影に隠れて夢主を降ろす。
「体は。何ともないか?」
「はい!」
「フム、上等だ」
そう言いながら彼は立ち上がり、懐から取り出した銃を空飛ぶモードックに向けて構える。ナイトオウル作のあの移動装置だとすぐにわかった。
「え、ちょっと…」
鋭いフックを、顔面むき出しの敵に?万一そんなことをすれば、痛そうどころでは済まない惨事になりそうだ。ロールシャッハならやりかねない。
夢主が目を覆う間もくれずにそれは発射される。
「お、おわぁ~!」
彼女の予感を外れ、フックに続くワイヤーはモードックをぐるぐる巻きにした。それだけでは終わらない。
「な、な、なんだぁ!?」
「うぐっ……ぁああーっ!!」
ヒーローは唸り声と共に巨体をデッキに叩きつける。
「イッテェ~……ちっく、しょう…」
「す、すごい…!」
怪我を負っているにも関わらず、彼の力は一体どこから来るのか。実は無限に湧き出てくるものなのだろうか。
「…ロールシャッハさん?」
否、膝に手を突き肩で息をしている。素顔は見えずとも、彼はまごうこと無き人間だ。限界の時は近い。
が、まだ終わらない。
「に、人間風情が…!タダで済むと思うぁあ~!?」
モードックを振り上げ、今度はデッキの外、船の側面に叩きつける。衝撃でワイヤーはほどけ、銃へ収納された。
ロールシャッハが柵まで駆け寄り下を覗き込むと、海に落ちた対象は目を回しながらプカプカ浮いている。科学の力をほとんど発揮させることなくモードックを倒した。
「ハーイそこまでよ!」
「!?」
船首の方から聞き覚えのある声。振り向くと、閉じ込めていた筈の悪党5人と数名のヴィランがデッキに勢揃いしている。肝心の夢主は上半身を腕ごとロープで拘束されてしまっていた。