番外編28:都合の良い助言
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ロゼッタ・ライリーは木陰で人知れず憤慨していた。
表は超有名ニュースキャスター、裏はアニマル属性ヴィランを操る悪党。そんな二重生活で疲れが溜まっていく彼女をディレクターが見兼ねてか、とうとう別の、言ってしまえば緩い仕事を任されてしまった。
「私はこんなお気楽なバラエティに収まるようなキャスターじゃないのよ!もっと大きなスクープの現場に出向かないと…!」
「ロゼッタさーん、お願いしまーす」
「はっはい~!」
彼女の正体を知らないスタッフの呼び掛けに明るく応じる。地声を封印し、笑顔でマイクを受け取った。
「5秒前、4、3、2…」
「今私は、スタジオでも紹介されていましたテクノアイル東京の公園に来ております。ご覧ください、子供達が元気に遊ぶ姿は万国共通ですね」
カメラの前で笑顔を絶やさず、平和な光景を紹介していく。リポートしている当人は内心穏やかではないが、野心満々な顔も悪党の顔もしっかり隠せている。
「早速子供達にインタビューしてみましょう」
既に背後に群がっている子供達とは一切目を合わせず、その中から適当に1人目を選びマイクを向ける。
「はぁーいこんにちは~、お名前わぁっ!!?」
「アキラ!アカツキ・アキラ!」
ロゼッタは商売道具を取り落としそうになった。
「これ生放送?俺テレビに映ってんの?」
赤い帽子に半ズボン、そして一本調子の大きな声。トニー・スタークことアイアンマンのディスクを扱う子供だ。
日本でのロケだと事前に聞いていたが、撮影日時は月曜の昼間。周囲には暴れるヴィランもディスクも無いため、憎きアベンジャーズとその子供達にはち合わせる可能性はゼロだと高をくくっていたのだ。
「あ、うあ……このっ…!」
「?」
怒りやら焦りやらで冷や汗が溢れ出る。だが今は表の仕事中。しかも人目の付く場所でD・スマッシュなど到底できない。
「大丈夫?なんか顔色悪いよ?」
「へ…平気よ!きょ、今日は月曜日だけれど、がが学校はどうしたのかな?」
「今日はなんかの記念日だから、学校休みなんだ」
「そ、そう……だから公園で遊んでいる子が多いのね」
幸いにも相手はこちらが悪党の紅一点だいうことに全く気付いていない。ロゼッタは何とか持ち直していく。
「ア、アキラくんね!アキラくんは、今年の夏休みは何して遊んでたのかなぁ~?」
声とマイクを持つ手の震えを必死に抑え、ロゼッタは今自分にできることを全うする。
「んーと、海行ったりー、山行ったりー…」
「へぇ~、良いわね~夏を満喫し」
「あ!」
「!?」
目の前で突然大声を出され女性キャスターが勢い良く飛び退いた。正体がバレたか?
「そうそう!あとは、ヴィランと戦ったぐらいかな!」
ただ思い出して声を上げただけだった。ロキの手下は胸を撫で下ろす。
しかし、今の発言で辺りが静まり返ってしまった。
普通に考えて、幼気な子供が危険な悪党と渡り合える訳が無い。周りの子供達やスタッフがポカンと口を開けている中、ロゼッタは番組のインタビュワーとしてアカツキ・アキラの失言をフォローすべく頭をフル回転させた。
「ヴィラン……あ、ああ!ヒーローショーに連れていってもらったのかな?良かったわねぇ」
「違うよおばさん」
「オバッ…!」
先程のものより何倍も上回る失言に全スタッフが戦慄した。
「俺も本物のヴィランと戦ったんだ!」
状況を察してくれない子供は石化するロゼッタに尚も食ってかかる。
「アキラくん!もうその辺に…!」
暴走中の子供を、ギャラリーを縫って前に出てきた女子学生が止めに入る。バイオコードを持つ6人目の子供だ。
ロゼッタは焦った。一際鈍いこの男児だけが相手なら誤魔化し通せると思っていたからだ。
「ん?ああそっか。次は夢主の番だよな!」
「はい!?」
「はい!?」
なんて余計なことを。2人は同時にアキラを恨んだ。
「わ、私は良いよ!テレビとか…!」
「い、いえ、遠慮しなくても良いのよお嬢さん。えーと名前は確か…」
「え?」
「あぁいやっ、何でもないのよ!夏休みはどうだったの!?」
ロゼッタは2人目の子供からやや顔を背けたまま収録を続行する。明らかにキャスターの様子がおかしいが、夢主は間近に迫るカメラのレンズに緊張してしまい、気付くどころではない。
「さっきの子と…あの、アキラくんと同じで、海や山に…」
「そうなの~、良いわねぇ」
先に落ち着き始めたのはロゼッタだった。だんだんと自分のペースに話を持って行く。
「もしかして、2人はお友達?海や山も一緒に行ったのかしら?」
「うん。夢主と俺は一緒に住んでるから!」
「まあそうなの。ってことは、姉弟なのね?」
「ううん、夢主は違うよ。俺には兄さんが居るんだ。あと、クリスとエドとジェシカと」
「あの…あの!他の子達にも聞いてあげたらどうですか!?」
躊躇無く個人情報を流し始めるアキラを止めるべく、夢主は外国人キャスターの気を他の子供へ向けようとした。
「ええ、まあ、そうね。この質問が終わったらね」
やっと解放される。テレビ慣れしていない夢主はそう安心してため息を吐いたが、その正面でロゼッタは目の色を変えていた。
表は超有名ニュースキャスター、裏はアニマル属性ヴィランを操る悪党。そんな二重生活で疲れが溜まっていく彼女をディレクターが見兼ねてか、とうとう別の、言ってしまえば緩い仕事を任されてしまった。
「私はこんなお気楽なバラエティに収まるようなキャスターじゃないのよ!もっと大きなスクープの現場に出向かないと…!」
「ロゼッタさーん、お願いしまーす」
「はっはい~!」
彼女の正体を知らないスタッフの呼び掛けに明るく応じる。地声を封印し、笑顔でマイクを受け取った。
「5秒前、4、3、2…」
「今私は、スタジオでも紹介されていましたテクノアイル東京の公園に来ております。ご覧ください、子供達が元気に遊ぶ姿は万国共通ですね」
カメラの前で笑顔を絶やさず、平和な光景を紹介していく。リポートしている当人は内心穏やかではないが、野心満々な顔も悪党の顔もしっかり隠せている。
「早速子供達にインタビューしてみましょう」
既に背後に群がっている子供達とは一切目を合わせず、その中から適当に1人目を選びマイクを向ける。
「はぁーいこんにちは~、お名前わぁっ!!?」
「アキラ!アカツキ・アキラ!」
ロゼッタは商売道具を取り落としそうになった。
「これ生放送?俺テレビに映ってんの?」
赤い帽子に半ズボン、そして一本調子の大きな声。トニー・スタークことアイアンマンのディスクを扱う子供だ。
日本でのロケだと事前に聞いていたが、撮影日時は月曜の昼間。周囲には暴れるヴィランもディスクも無いため、憎きアベンジャーズとその子供達にはち合わせる可能性はゼロだと高をくくっていたのだ。
「あ、うあ……このっ…!」
「?」
怒りやら焦りやらで冷や汗が溢れ出る。だが今は表の仕事中。しかも人目の付く場所でD・スマッシュなど到底できない。
「大丈夫?なんか顔色悪いよ?」
「へ…平気よ!きょ、今日は月曜日だけれど、がが学校はどうしたのかな?」
「今日はなんかの記念日だから、学校休みなんだ」
「そ、そう……だから公園で遊んでいる子が多いのね」
幸いにも相手はこちらが悪党の紅一点だいうことに全く気付いていない。ロゼッタは何とか持ち直していく。
「ア、アキラくんね!アキラくんは、今年の夏休みは何して遊んでたのかなぁ~?」
声とマイクを持つ手の震えを必死に抑え、ロゼッタは今自分にできることを全うする。
「んーと、海行ったりー、山行ったりー…」
「へぇ~、良いわね~夏を満喫し」
「あ!」
「!?」
目の前で突然大声を出され女性キャスターが勢い良く飛び退いた。正体がバレたか?
「そうそう!あとは、ヴィランと戦ったぐらいかな!」
ただ思い出して声を上げただけだった。ロキの手下は胸を撫で下ろす。
しかし、今の発言で辺りが静まり返ってしまった。
普通に考えて、幼気な子供が危険な悪党と渡り合える訳が無い。周りの子供達やスタッフがポカンと口を開けている中、ロゼッタは番組のインタビュワーとしてアカツキ・アキラの失言をフォローすべく頭をフル回転させた。
「ヴィラン……あ、ああ!ヒーローショーに連れていってもらったのかな?良かったわねぇ」
「違うよおばさん」
「オバッ…!」
先程のものより何倍も上回る失言に全スタッフが戦慄した。
「俺も本物のヴィランと戦ったんだ!」
状況を察してくれない子供は石化するロゼッタに尚も食ってかかる。
「アキラくん!もうその辺に…!」
暴走中の子供を、ギャラリーを縫って前に出てきた女子学生が止めに入る。バイオコードを持つ6人目の子供だ。
ロゼッタは焦った。一際鈍いこの男児だけが相手なら誤魔化し通せると思っていたからだ。
「ん?ああそっか。次は夢主の番だよな!」
「はい!?」
「はい!?」
なんて余計なことを。2人は同時にアキラを恨んだ。
「わ、私は良いよ!テレビとか…!」
「い、いえ、遠慮しなくても良いのよお嬢さん。えーと名前は確か…」
「え?」
「あぁいやっ、何でもないのよ!夏休みはどうだったの!?」
ロゼッタは2人目の子供からやや顔を背けたまま収録を続行する。明らかにキャスターの様子がおかしいが、夢主は間近に迫るカメラのレンズに緊張してしまい、気付くどころではない。
「さっきの子と…あの、アキラくんと同じで、海や山に…」
「そうなの~、良いわねぇ」
先に落ち着き始めたのはロゼッタだった。だんだんと自分のペースに話を持って行く。
「もしかして、2人はお友達?海や山も一緒に行ったのかしら?」
「うん。夢主と俺は一緒に住んでるから!」
「まあそうなの。ってことは、姉弟なのね?」
「ううん、夢主は違うよ。俺には兄さんが居るんだ。あと、クリスとエドとジェシカと」
「あの…あの!他の子達にも聞いてあげたらどうですか!?」
躊躇無く個人情報を流し始めるアキラを止めるべく、夢主は外国人キャスターの気を他の子供へ向けようとした。
「ええ、まあ、そうね。この質問が終わったらね」
やっと解放される。テレビ慣れしていない夢主はそう安心してため息を吐いたが、その正面でロゼッタは目の色を変えていた。