「あれ？」

市街地にて買い物を済ませた夢主は、店の外で待っている筈のロールシャッハが居ないことに気付いた。

待ちくたびれて先に帰ってしまったのだろうか、それとも居たたまれなくなったか。女性服を扱う店の前で長々と待たせては悪いと、なるべく急いで出てきたのだが。

「テメー、今肩ぶつかっただろ」

夢主はパートナーのヒーローを見失い、通行人に気を遣う余裕は無かった。しかし、文句を言ってくる彼にはぶつかるどころか触れてすらいない。

よって、とりあえずの謝罪をするよりも先に眉をひそめてしまった。

「え？あぁ、済みま」
「んだよその態度」
「つーか通行の邪魔じゃね？」
「ちょっとこっち来いや」

昼間でも暗い路地へと連れ込まれ、壁を背に面識の全く無い男４人に囲まれてしまう。

「肩まだ痛ェんですけどー」
「責任とってもらえますか～？」
「……」

普通に考えて危険な状況だが、いたいけな子供は震えてなどいない。これまでアベンジャーズとそのパートナーの子供達と共に日々正義を行ってきている夢主は、悪に立ち向かう度胸を身につけたからだ。

ちなみに今以上の窮地に追いつめられたことだってある。と言うより夢主の場合、きっかけからして窮地だった。

「何だその顔」
「俺等なーんも間違ったこと言ってねえよな？他人にメーワクかけた奴を責めてるだけだぜ？」
「最近の子供って生意気だなぁ」

顔のすぐ横に少女のものより一回りも二回りも大きな手が突かれる。

今時こんな原始的な因縁の付け方があるのかと呑気に感心している場合ではない。度胸こそあれ、実際力ではこの４人に適わないし、強い味方は今居ないのだ。何故かいつものように助けに来てくれない。

「……ぶつかって…済みませんでした」
「謝って済むならケーサツ要らねぇんだよ」
「え？警察来たら困るのは…」
「口答えしてんじゃねー！」

逆上した男によって髪を根元から掴み上げられる。無論、手加減は一切無しだ。

頭皮の痛みに顔を歪めながら、夢主は自分の強気で軽率な言動を今更ながら後悔した。