第三部:都合の悪い男女
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あまり間を空けずに追っ手も踏み入る。そこはやや広めのロッカールームだった。手前から奥へ規則正しく、何列にも並ぶ細長のロッカーが静かに2人を迎え入れる。
「おうおう、隠れん坊か~?」
蛇男は電気を点けずにずんずん進んで行くが、もう片方の男は既に異変を嗅ぎ付け、その場に立ち止まっていた。
「ベタなひっかけ。おまけにプンプン臭うぞ…」
背後の内開きのドアは、開けられた反動からゆっくり跳ね返り閉まっていく。
「そこだぁ!」
バロン・ジモは素早く振り返り、対象の首元に刀をあてがい拘束しようとする。
「何!?」
だが、ドアの影に隠れていたのは壁掛けハンガーに掛かったトレンチコートのみ。
「奴等どこに……あれか」
目線の先には、大人でも余裕で入り込める幅の四角い換気口。そのフタは見当たらない。
「シュルルル、俺の出番だな」
キング・コブラは己の軟体を生かし、大人でも手が届かない高さにある抜け道へいとも簡単に入っていった。
「フン、手柄は奴1人のものか…」
バロン・ジモが立ち去りロッカールームに人気が無くなるが、入れ替わりにタイガーシャークがやって来てロッカーの上で動く物陰に気付く。
「ギョギョ?」
「あ…!」
先程まで身を縮めていた夢主は、手に持つフタで換気口を閉めようと動いてしまっていた。彼と目が合う。
「貴様見ない顔だギョ。そうか、今の放送はお前のことかギョ!」
さっさと捕まえれば良いものを、タイガーシャークは極めて嬉しそうに話し続ける。
「強烈な臭いを辿ってきて正解だったギョ。ここはもうもぬけの殻かと思いきや…ギョギョギョ。労せず手柄を掴めるとは、正にギョ夫の」
部屋に入ってすぐのロッカーが勢い良く開く音。
「ギョ!?」
次いで首の鳴る音。しかし、
「軟骨ギョ類をナメるんじゃないギョー!」
鮫に骨折り攻撃は通じない。しばし取っ組み合いは続いた。
「ギョ……」
「鼻が利き過ぎるのも考え物だな」
夢主が上からそっと覗くと、ロールシャッハが今まで隠れていたスペースに気を失った敵を押し込んだところだった。
「行くぞ」
「は、はい!」
換気口のフタを元通りにしてから縁に腰掛けるが、囮のコートを着終わったロールシャッハが振り向いてしまったので降りるのを止める。
「う…あの」
「まだ動けないか?」
「いえ、それはもう大丈夫ですけど」
「なら早くしろ。次の奴が騙されてくれる保証は無い」
そう言ってポケットに手を入れながら、もう片方の手を差し伸べてくれる。が、それだけでは降りられない。
「その、私、スカートなので…!」
「…済まなかった」
ロールシャッハはポケットから手を出し自分の目の辺りをちゃんと覆い、上げっぱなしの手を少し揺らす。
「これで良いだろ」
手を借りてやっと降り立つ。
「済みません…」
「謝るな。大切な心掛けだ。人であるからにはな」
「……」
もしかすると、愛読しているパロディコミックに登場するロールシャッハのキャラ設定は、体臭だけでなく性格も本人に忠実なのかもしれない。
「何としても脱出するぞ。人のままでな」
「はい!」
「おうおう、隠れん坊か~?」
蛇男は電気を点けずにずんずん進んで行くが、もう片方の男は既に異変を嗅ぎ付け、その場に立ち止まっていた。
「ベタなひっかけ。おまけにプンプン臭うぞ…」
背後の内開きのドアは、開けられた反動からゆっくり跳ね返り閉まっていく。
「そこだぁ!」
バロン・ジモは素早く振り返り、対象の首元に刀をあてがい拘束しようとする。
「何!?」
だが、ドアの影に隠れていたのは壁掛けハンガーに掛かったトレンチコートのみ。
「奴等どこに……あれか」
目線の先には、大人でも余裕で入り込める幅の四角い換気口。そのフタは見当たらない。
「シュルルル、俺の出番だな」
キング・コブラは己の軟体を生かし、大人でも手が届かない高さにある抜け道へいとも簡単に入っていった。
「フン、手柄は奴1人のものか…」
バロン・ジモが立ち去りロッカールームに人気が無くなるが、入れ替わりにタイガーシャークがやって来てロッカーの上で動く物陰に気付く。
「ギョギョ?」
「あ…!」
先程まで身を縮めていた夢主は、手に持つフタで換気口を閉めようと動いてしまっていた。彼と目が合う。
「貴様見ない顔だギョ。そうか、今の放送はお前のことかギョ!」
さっさと捕まえれば良いものを、タイガーシャークは極めて嬉しそうに話し続ける。
「強烈な臭いを辿ってきて正解だったギョ。ここはもうもぬけの殻かと思いきや…ギョギョギョ。労せず手柄を掴めるとは、正にギョ夫の」
部屋に入ってすぐのロッカーが勢い良く開く音。
「ギョ!?」
次いで首の鳴る音。しかし、
「軟骨ギョ類をナメるんじゃないギョー!」
鮫に骨折り攻撃は通じない。しばし取っ組み合いは続いた。
「ギョ……」
「鼻が利き過ぎるのも考え物だな」
夢主が上からそっと覗くと、ロールシャッハが今まで隠れていたスペースに気を失った敵を押し込んだところだった。
「行くぞ」
「は、はい!」
換気口のフタを元通りにしてから縁に腰掛けるが、囮のコートを着終わったロールシャッハが振り向いてしまったので降りるのを止める。
「う…あの」
「まだ動けないか?」
「いえ、それはもう大丈夫ですけど」
「なら早くしろ。次の奴が騙されてくれる保証は無い」
そう言ってポケットに手を入れながら、もう片方の手を差し伸べてくれる。が、それだけでは降りられない。
「その、私、スカートなので…!」
「…済まなかった」
ロールシャッハはポケットから手を出し自分の目の辺りをちゃんと覆い、上げっぱなしの手を少し揺らす。
「これで良いだろ」
手を借りてやっと降り立つ。
「済みません…」
「謝るな。大切な心掛けだ。人であるからにはな」
「……」
もしかすると、愛読しているパロディコミックに登場するロールシャッハのキャラ設定は、体臭だけでなく性格も本人に忠実なのかもしれない。
「何としても脱出するぞ。人のままでな」
「はい!」