番外編19:都合の良い胆力
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元の閑静な山道。まるで何事も無かったかのように辺りは静寂に包まれているが、アキラ達の足元に散らばった大量の葉っぱが戦闘に勝利した何よりの証だ。
「行っちゃった…」
「自滅かよ」
「覚えてろって、あんなお間抜けな逃げ方覚えてて良いのかしらね~」
勝利と言うより不戦勝に近いが。
「奴等、発信器で僕達の行動を把握していたんだね」
安全を確保し皆が気楽にお喋りを始める中、ヒカルが静かな声で切り出した。
「え?じゃあ私達の家の場所もバレてるってこと!?」
「マ、マズイよそんなの~!」
「でもそれにしちゃあ、直接襲いに来なかったよな」
クリスの言う通り、アベンジャーズ基地を直々に攻め落とすこともできた筈だが、彼等は基地はおろか学校や市街地にすら姿を現さず、いつもこういった外出時を狙って現れていた。
「俺達のホームグラウンドに正面から挑む度胸は無いってことさ!」
「でもトニー、次にどんな手を打ってくるわからないわよ」
「んじゃ念のためセキュリティを強化しとくか。ってか、そうそう!そこの2人!身体検査しなきゃな」
「ロールシャッハか夢主、あるいはその両方に発信器を取り付けられているのよね」
敵が撤退したことにより、特にトニー・スタークは緊張感の無い声でお喋りを続ける。その一方で、エドは顎に手を当てて何やら考え込んでいた。彼の頭の上で胡座をかいているハルクが端的に尋ねる。
「どうした?エド」
「発信器も気がかりだけど、さっきのことが不思議で」
「さっきって、ロールシャッハが臭くてあいつ等が逃げたこと?」
アキラの言葉にエドは小さく頷く。
「ロールシャッハの体臭は、たしかに相手を怯ませる程強烈なものだけど……風に乗った臭いに、大の大人をあんな風に倒す力があるなんて思えないんだ。だって、そんなに臭かったら僕達一緒に暮らせていないと思うし」
風に乗って届く臭いなんかよりも臭いの根元こそが一番強烈な筈。しかし、今この場にいる全員が無傷で済んでいる。
「俺達、ロールシャッハの臭いに慣れたんじゃない?」
「慣れの問題か?奴等はいきなりダウンしたぞ」
「たしかにおかしいわね」
「それは」
会話に当人が入り込んできた。
「これが無かったらの話だ」
ロールシャッハは自分のトレンチコートの中から、厳重に包まれた何かを取り出す。皆は危機感も無しに近付いてそれの正体を確認しようとした。
「ロールシャッハ。何それ?」
「靴下だ。これだけは洗わずとってある。ただの一度もな」
「えぇっ!?」
そのアイテムには彼の汗や垢だけでなく、不衛生な路地裏や下水道を歩き回った“実績”が積み重なっている。正にロールシャッハの秘密兵器だ。
青ざめた一同は瞬時に不潔男から遠ざかった。十分すぎる距離をとったジェシカは更に木の影に隠れた。
「イヤー!!そんなの仕舞って!わざわざ出さなくて良いから!あと夢主は挑戦しようとしなくて良い!」
騒ぐ彼女とは対照的に、夢主は固まりきった表情で恐る恐る変色、否、変身した靴下へ手を伸ばしていた。
「でも、パ、パートナーとして…!」
そう言いつつも、彼女は口呼吸することによりちゃっかり逃げ道を作っている。
「マジかよ…」
「いつもながら、夢主のパートナーに対する心掛けは素晴らしい。が、これは……いささか危険ではないだろうか?」
夢主の奇行にドン引きしているクリスの肩の上で、キャプテン・アメリカは神妙な面持ちで冷や汗を垂らした。
ホログラムのワスプとアイアンマンが積極的に彼女を止めに入る。
「む、無理しない方が良いんじゃない?挑戦するにしても、今日じゃなくて良いでしょ?ねぇ?」
「そうだぞ!止せって夢主、死ぬ気か!?」
「フム、これもある意味肝試しだろう」
「お前は余計なこと言うな!」
今の彼の左右対称模様は人間が笑っている顔に見えなくもない。
「行っちゃった…」
「自滅かよ」
「覚えてろって、あんなお間抜けな逃げ方覚えてて良いのかしらね~」
勝利と言うより不戦勝に近いが。
「奴等、発信器で僕達の行動を把握していたんだね」
安全を確保し皆が気楽にお喋りを始める中、ヒカルが静かな声で切り出した。
「え?じゃあ私達の家の場所もバレてるってこと!?」
「マ、マズイよそんなの~!」
「でもそれにしちゃあ、直接襲いに来なかったよな」
クリスの言う通り、アベンジャーズ基地を直々に攻め落とすこともできた筈だが、彼等は基地はおろか学校や市街地にすら姿を現さず、いつもこういった外出時を狙って現れていた。
「俺達のホームグラウンドに正面から挑む度胸は無いってことさ!」
「でもトニー、次にどんな手を打ってくるわからないわよ」
「んじゃ念のためセキュリティを強化しとくか。ってか、そうそう!そこの2人!身体検査しなきゃな」
「ロールシャッハか夢主、あるいはその両方に発信器を取り付けられているのよね」
敵が撤退したことにより、特にトニー・スタークは緊張感の無い声でお喋りを続ける。その一方で、エドは顎に手を当てて何やら考え込んでいた。彼の頭の上で胡座をかいているハルクが端的に尋ねる。
「どうした?エド」
「発信器も気がかりだけど、さっきのことが不思議で」
「さっきって、ロールシャッハが臭くてあいつ等が逃げたこと?」
アキラの言葉にエドは小さく頷く。
「ロールシャッハの体臭は、たしかに相手を怯ませる程強烈なものだけど……風に乗った臭いに、大の大人をあんな風に倒す力があるなんて思えないんだ。だって、そんなに臭かったら僕達一緒に暮らせていないと思うし」
風に乗って届く臭いなんかよりも臭いの根元こそが一番強烈な筈。しかし、今この場にいる全員が無傷で済んでいる。
「俺達、ロールシャッハの臭いに慣れたんじゃない?」
「慣れの問題か?奴等はいきなりダウンしたぞ」
「たしかにおかしいわね」
「それは」
会話に当人が入り込んできた。
「これが無かったらの話だ」
ロールシャッハは自分のトレンチコートの中から、厳重に包まれた何かを取り出す。皆は危機感も無しに近付いてそれの正体を確認しようとした。
「ロールシャッハ。何それ?」
「靴下だ。これだけは洗わずとってある。ただの一度もな」
「えぇっ!?」
そのアイテムには彼の汗や垢だけでなく、不衛生な路地裏や下水道を歩き回った“実績”が積み重なっている。正にロールシャッハの秘密兵器だ。
青ざめた一同は瞬時に不潔男から遠ざかった。十分すぎる距離をとったジェシカは更に木の影に隠れた。
「イヤー!!そんなの仕舞って!わざわざ出さなくて良いから!あと夢主は挑戦しようとしなくて良い!」
騒ぐ彼女とは対照的に、夢主は固まりきった表情で恐る恐る変色、否、変身した靴下へ手を伸ばしていた。
「でも、パ、パートナーとして…!」
そう言いつつも、彼女は口呼吸することによりちゃっかり逃げ道を作っている。
「マジかよ…」
「いつもながら、夢主のパートナーに対する心掛けは素晴らしい。が、これは……いささか危険ではないだろうか?」
夢主の奇行にドン引きしているクリスの肩の上で、キャプテン・アメリカは神妙な面持ちで冷や汗を垂らした。
ホログラムのワスプとアイアンマンが積極的に彼女を止めに入る。
「む、無理しない方が良いんじゃない?挑戦するにしても、今日じゃなくて良いでしょ?ねぇ?」
「そうだぞ!止せって夢主、死ぬ気か!?」
「フム、これもある意味肝試しだろう」
「お前は余計なこと言うな!」
今の彼の左右対称模様は人間が笑っている顔に見えなくもない。