番外編19:都合の良い胆力
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皆何事もなく課題をやり遂げ、いよいよ2人の番が回ってきた。
大方想像はついていたが、隣を歩くエドは既に震え上がってしまっている。スタート地点に居る仲間達の談笑、主にアキラの声が十分聞こえる位置にも関わらずだ。
いつにも増してエドの歩幅が狭いため、夢主は速度をやや落として砂利道を進んでいく。そうは言っても、ここは視界の優れない夜道。気が付くとペアよりも数歩先を歩いていた。
「夢主…お、おいてかないでぇ~…」
「ああっ、ごめんね。はい」
極力優しく声を掛け手を差し伸べてやると、汗でふにゃふにゃになった小さな両手が飛びついてきた。道ごと吸い込まれてしまうような暗闇が怖い怖くないに関わらず、年上の私がしっかりしなければと夢主は自分自身を奮い立たせた。
と、そんな意気込みを嘲笑うかのように、柔い風が周囲の黒い木々をざわざわと揺らし始めた。エドの指に力が入る。次いで、勢いを増した風は唸り声のような音を立て、2人の歩みを完全に止めてしまった。
「ひぃーっ!」
「か、風だよ、ただの風!きっと…」
「きっと?じゃあ風じゃなかったら一体何なの…!?」
この子供が今こんなにも恐怖しているのは我等がトニー・スタークのお陰である。2組目が札を置いて戻ってくるまでの間に、暇を持て余した彼からありもしない怪談を吹き込まれてしまったのだ。
「アイアンマンがさっき言ってた…ここいらの施設は妙に安く買い上げることができたって…それって、訳アリってことでしょ!?」
「そんなまさか…」
強く否定できない。夢主の指にも力が入る。
「やっぱり幽霊が出るんだよ!」
私がしっかりしなければと気合いを入れたばかりなのに、事実無根の上に作り出されたこの不穏な雰囲気にどんどん飲み込まれていく。
「夢主……ハルクのホログラム出しても良い?このままだと僕、挫けそうで」
「う、うん。良いよね、これくらい…」
もしルールを守るためにこの申し出を断り、結果泣かれてしまっても困る。ここは素直に諦め、お互いにパートナーのホログラムを表示させた。
「ハルク~…」
「どうした、エド?」
「お前達はリタイアか?根性無しめ」
ロールシャッハの厳しい一言がエドに突き刺さる。想定していたのか、ハルクは何も言わず目を閉じて小さく唸った。
「まあまあ。エドくん、せめてお札置きに行くだけでもやっておこうよ」
「う、うん…」
「何がまあまあだ。夢主、お前も怖がっていただろう」
「そっ、そこ突っ込まないでくださいよ!せっかく…!」
「見栄を張るのは止せ、滑稽だ。似合わん。張るなら張るで態度をはっきりさせろ。あと汗ばんだ手でディスクに触るな」
パートナーを矢継ぎ早に追い込んでいくが、その声は何故か弾んでいるようにも聞こえる。
ディスクを操作するために繋いでいた手をほどき、目も離していた。その隙に、エドはぬかるみで足を滑らせてしまった。
「うわぁっ!?」
「エドく、きゃっ!」
急いでエドの手を取るが夢主も転んでしまい、一緒に泥だらけになった。
「ごめん…僕のせいで…」
「ううん、私こそごめん。怪我無い?」
「大丈夫…」
体は汚れてしまったものの、砂利から湿った土へと切り替わった地面は非常に柔らかく、2人は傷一つ負わずに済んだ。
小さなハルクとロールシャッハは既にパートナーの元から飛び降りていた。ぬかるみの前に並んで立ち、情けない子供達を眺めている。
「危なっかしくて見ていられない」
「フン、お前と意見が合うとは珍しいな」
寝間着にべったりと付いた泥は、洗ってもなかなか落ちないだろう。鬼の形相をした保護者代わりの女性が目に浮かぶ。
「これじゃあ幽霊より、ペッパーさんの方が怖いかもね」
「そ、そうだね…」
「転んじゃったのはもうしょうがないし、2人で叱られよっか!」
「戻るまでに覚悟を決めないとね、アハハ…」
「えへへ」
「笑ってないで早く立て」
肝試しは始まったばかり。先はまだまだ長いが、エドは随分と心に余裕ができた。
大方想像はついていたが、隣を歩くエドは既に震え上がってしまっている。スタート地点に居る仲間達の談笑、主にアキラの声が十分聞こえる位置にも関わらずだ。
いつにも増してエドの歩幅が狭いため、夢主は速度をやや落として砂利道を進んでいく。そうは言っても、ここは視界の優れない夜道。気が付くとペアよりも数歩先を歩いていた。
「夢主…お、おいてかないでぇ~…」
「ああっ、ごめんね。はい」
極力優しく声を掛け手を差し伸べてやると、汗でふにゃふにゃになった小さな両手が飛びついてきた。道ごと吸い込まれてしまうような暗闇が怖い怖くないに関わらず、年上の私がしっかりしなければと夢主は自分自身を奮い立たせた。
と、そんな意気込みを嘲笑うかのように、柔い風が周囲の黒い木々をざわざわと揺らし始めた。エドの指に力が入る。次いで、勢いを増した風は唸り声のような音を立て、2人の歩みを完全に止めてしまった。
「ひぃーっ!」
「か、風だよ、ただの風!きっと…」
「きっと?じゃあ風じゃなかったら一体何なの…!?」
この子供が今こんなにも恐怖しているのは我等がトニー・スタークのお陰である。2組目が札を置いて戻ってくるまでの間に、暇を持て余した彼からありもしない怪談を吹き込まれてしまったのだ。
「アイアンマンがさっき言ってた…ここいらの施設は妙に安く買い上げることができたって…それって、訳アリってことでしょ!?」
「そんなまさか…」
強く否定できない。夢主の指にも力が入る。
「やっぱり幽霊が出るんだよ!」
私がしっかりしなければと気合いを入れたばかりなのに、事実無根の上に作り出されたこの不穏な雰囲気にどんどん飲み込まれていく。
「夢主……ハルクのホログラム出しても良い?このままだと僕、挫けそうで」
「う、うん。良いよね、これくらい…」
もしルールを守るためにこの申し出を断り、結果泣かれてしまっても困る。ここは素直に諦め、お互いにパートナーのホログラムを表示させた。
「ハルク~…」
「どうした、エド?」
「お前達はリタイアか?根性無しめ」
ロールシャッハの厳しい一言がエドに突き刺さる。想定していたのか、ハルクは何も言わず目を閉じて小さく唸った。
「まあまあ。エドくん、せめてお札置きに行くだけでもやっておこうよ」
「う、うん…」
「何がまあまあだ。夢主、お前も怖がっていただろう」
「そっ、そこ突っ込まないでくださいよ!せっかく…!」
「見栄を張るのは止せ、滑稽だ。似合わん。張るなら張るで態度をはっきりさせろ。あと汗ばんだ手でディスクに触るな」
パートナーを矢継ぎ早に追い込んでいくが、その声は何故か弾んでいるようにも聞こえる。
ディスクを操作するために繋いでいた手をほどき、目も離していた。その隙に、エドはぬかるみで足を滑らせてしまった。
「うわぁっ!?」
「エドく、きゃっ!」
急いでエドの手を取るが夢主も転んでしまい、一緒に泥だらけになった。
「ごめん…僕のせいで…」
「ううん、私こそごめん。怪我無い?」
「大丈夫…」
体は汚れてしまったものの、砂利から湿った土へと切り替わった地面は非常に柔らかく、2人は傷一つ負わずに済んだ。
小さなハルクとロールシャッハは既にパートナーの元から飛び降りていた。ぬかるみの前に並んで立ち、情けない子供達を眺めている。
「危なっかしくて見ていられない」
「フン、お前と意見が合うとは珍しいな」
寝間着にべったりと付いた泥は、洗ってもなかなか落ちないだろう。鬼の形相をした保護者代わりの女性が目に浮かぶ。
「これじゃあ幽霊より、ペッパーさんの方が怖いかもね」
「そ、そうだね…」
「転んじゃったのはもうしょうがないし、2人で叱られよっか!」
「戻るまでに覚悟を決めないとね、アハハ…」
「えへへ」
「笑ってないで早く立て」
肝試しは始まったばかり。先はまだまだ長いが、エドは随分と心に余裕ができた。