番外編19:都合の良い胆力
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普段暮らしている都心部とは違い、空気の澄んだ山奥特有の肌寒さは想像以上に体温を奪っていく。隣を歩く夢主は夜風に晒されている腕を自分の手で何度もこすっていた。
「うぅっ……あ」
こちらの視線を感じ取ったのか、彼女は両手を後ろに組んで背筋を伸ばした。
「えへへ…服選び、失敗しちゃった」
「……」
夢主は自分の腕をさすらなくなった代わりに、へらへらと不自然な笑みを浮かべ続ける。
強がる彼女に何か羽織る物を、と思ったが、タイミングが悪いことに互いに寝間着一枚。出発時、クリスはタオルを首に掛けていたのだが、先程転んだ夢主の泥を拭うために使ってしまい、今それは適当に丸められ持ち主の片手に納まっている。よって、震える女の子に渡せる物を持ち合わせていない。
そんな彼を見かねたキャプテン・アメリカがまたもや余計なお節介を焼く。
「クリス、夢主が寒がっている。こんな時は手を繋ぐと良いぞ」
「は?」
「人の体温というのは不思議なもので、たとえ触れているのが手だけだとしても、相手の温かみを全身で感じることができるのだ」
「いや、でもよ…」
「私の言うことを信じてくれ、クリス」
「そういう問題じゃなくて…!」
勿論、この会話は対象人物にだだ漏れ。横目で見やると、夢主はそわそわと居まずそうにしていた。ロールシャッハはというと、彼女の肩の上で微動だにせずじっとこちらを見据えている。
「…………良いだろう」
長考の末、保護者もどきは承諾した。
「但し、腕を組むのは無し。手までだ」
「何故ロールシャッハが許可を出す?それに腕を組むという話はしていない。だが…たしかに、密着すればする程、より暖を取れるな。でかした、ロールシャッハ」
「だから腕を組むのは無しだ」
「あーもー!お前等ちょっと黙ってろよ!」
当人そっちのけ且つ当人の目の前で勝手に話を進めるなんて、無神経にも程がある。クリスが声を荒らげるのも無理はない。
「一体どうしたというのだ、ク」
我がキャプテンが言い終える前にホログラムアバターを消してやった。夢主もクリスを倣って、小さなパートナーをディスクの中に仕舞う。
「行くぞ!」
「うん…」
だが、ギャラリーを引っ込ませたらそれはそれで微妙な雰囲気になってしまった。
「……」
「……」
2人の間には特にこれといった会話も無く、ひたすら砂利を踏み締めて行く。その音が妙に響いて聞こえるのは気のせいだろうか。
「ねえ…」
眉を八の字にした夢主がこの何とも言えない沈黙を破った。
「その……手、繋がない、の…?」
不要なアドバイスを真に受けバカ正直に尋ねてくることにも、ずっと一人うじうじと悩み続けていたことにも呆れ果て、クリスの眉間にとうとう濃い皺が寄る。
「……繋ぎたいのかよ」
「いやっごめんっ、クリスくんが嫌なら、別に…!」
ここでタイミング良く風が吹き、また彼女の腕に鳥肌が立った。
「うぅっ……あ」
「……」
「……」
「……ゴールから見えない位置までな」
「…うん」
ロールシャッハに目の敵にされるような思惑は決して無い。あくまで、肝試しのペアにこれ以上痩せ我慢をさせないためだ。
己のクジ運の悪さにため息が出そうになるが、それがきっかけでまた勝手に悩まれても厄介だ。寸での所で飲み込み、足早に折り返し地点を目指した。
「うぅっ……あ」
こちらの視線を感じ取ったのか、彼女は両手を後ろに組んで背筋を伸ばした。
「えへへ…服選び、失敗しちゃった」
「……」
夢主は自分の腕をさすらなくなった代わりに、へらへらと不自然な笑みを浮かべ続ける。
強がる彼女に何か羽織る物を、と思ったが、タイミングが悪いことに互いに寝間着一枚。出発時、クリスはタオルを首に掛けていたのだが、先程転んだ夢主の泥を拭うために使ってしまい、今それは適当に丸められ持ち主の片手に納まっている。よって、震える女の子に渡せる物を持ち合わせていない。
そんな彼を見かねたキャプテン・アメリカがまたもや余計なお節介を焼く。
「クリス、夢主が寒がっている。こんな時は手を繋ぐと良いぞ」
「は?」
「人の体温というのは不思議なもので、たとえ触れているのが手だけだとしても、相手の温かみを全身で感じることができるのだ」
「いや、でもよ…」
「私の言うことを信じてくれ、クリス」
「そういう問題じゃなくて…!」
勿論、この会話は対象人物にだだ漏れ。横目で見やると、夢主はそわそわと居まずそうにしていた。ロールシャッハはというと、彼女の肩の上で微動だにせずじっとこちらを見据えている。
「…………良いだろう」
長考の末、保護者もどきは承諾した。
「但し、腕を組むのは無し。手までだ」
「何故ロールシャッハが許可を出す?それに腕を組むという話はしていない。だが…たしかに、密着すればする程、より暖を取れるな。でかした、ロールシャッハ」
「だから腕を組むのは無しだ」
「あーもー!お前等ちょっと黙ってろよ!」
当人そっちのけ且つ当人の目の前で勝手に話を進めるなんて、無神経にも程がある。クリスが声を荒らげるのも無理はない。
「一体どうしたというのだ、ク」
我がキャプテンが言い終える前にホログラムアバターを消してやった。夢主もクリスを倣って、小さなパートナーをディスクの中に仕舞う。
「行くぞ!」
「うん…」
だが、ギャラリーを引っ込ませたらそれはそれで微妙な雰囲気になってしまった。
「……」
「……」
2人の間には特にこれといった会話も無く、ひたすら砂利を踏み締めて行く。その音が妙に響いて聞こえるのは気のせいだろうか。
「ねえ…」
眉を八の字にした夢主がこの何とも言えない沈黙を破った。
「その……手、繋がない、の…?」
不要なアドバイスを真に受けバカ正直に尋ねてくることにも、ずっと一人うじうじと悩み続けていたことにも呆れ果て、クリスの眉間にとうとう濃い皺が寄る。
「……繋ぎたいのかよ」
「いやっごめんっ、クリスくんが嫌なら、別に…!」
ここでタイミング良く風が吹き、また彼女の腕に鳥肌が立った。
「うぅっ……あ」
「……」
「……」
「……ゴールから見えない位置までな」
「…うん」
ロールシャッハに目の敵にされるような思惑は決して無い。あくまで、肝試しのペアにこれ以上痩せ我慢をさせないためだ。
己のクジ運の悪さにため息が出そうになるが、それがきっかけでまた勝手に悩まれても厄介だ。寸での所で飲み込み、足早に折り返し地点を目指した。