番外編19:都合の良い胆力
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出発前にアイアンマンに言われたことを胸に刻んでおくべきだった。うっかり足を滑らせた夢主は今、隣を歩いていたヒカルによって見事に抱き留められている。
「大丈夫?」
「は、はい…!」
手首を掴まれ、もう片方の腕は背中に回ってきていて、図らずとも情熱的なダンスの決めポーズのような体勢になってしまった。夜と言えど、間近に迫ったヒカルの端正な顔を月明かりがはっきりと照らし出す。
「この先も地面がぬかるんでいるからね、足元に気をつけて行こう」
ヒカルは優しく微笑み、乾いた地面へ夢主をゆっくり立たせた。
「はい。あ、あの…ありがとうございます」
「夢主ちゃんに怪我が無くて良かったよ」
紳士な対応に胸騒ぎが収まらない夢主とは対照的に、この一連の出来事に彼は全く動じていない。むしろ、気にも留めていない。
自分の心臓のためにも、この人の前では二度と転ぶまいと夢主は固く誓った。
「あ、そうだ!」
突然声を上げたヒカルはディスクを操作し、パートナーのホログラムを水平にした手首の上に出す。
「ソー。悪いんだけど、少しノバと交代しても良いかな?肝試しのこと話したら参加したいって言ってたのを思い出したんだ」
「勿論だ。ホログラムのままではあるが、封印されっぱなしよりはマシだろう。存分に発散させてやれ」
「うん。ありがとう」
これではトニー・スタークが想定した肝試しにならないのではと夢主は思ったが、頼り甲斐のある仲間とその神様がそう仰るのだ、余計な口は挟まないでおいた。
ヒカルはソーのディスクを外し、腰のホルダーに収納していたノバのディスクと入れ替える。
「ノバ、お待たせ」
「やあっと出してくれた!」
ヒカルと同世代のヒーローは小さな姿のまま、うーんと両腕を伸ばし首をひねった。
「ヒカル、こんな時間にお散歩?あっ、もしかして絶賛肝試し中?」
「そうだよ」
「ふーん。俺にはただの山道にしか見えないけど」
ノバは腰に手を当てて小馬鹿にしたように鼻で笑う。日本のお化け屋敷や墓場を想像していた彼にとって、この状況は大いに期待外れだったらしい。
「あはは。もしかしたら、お化けの類より野生動物の方が出てくるかもね」
ヒカルの何気ない一言によってノバの脳裏に浮かんでしまったある動物が、彼の態度を一変させる。
「そ、それはそれで危険だろ。確かに、言われてみればなーんか雰囲気あるトコだよな~。この辺、実際出たりすんの?例えばさ、イノシシとか、アライグマとか、リスとか、あと…その…」
口ごもり目を逸らした拍子に、ようやくもう1人の子供の存在に気が付いた。
「ん?君誰?」
「ああ、ノバはまだ夢主ちゃんと話せていなかったね」
ノバがアベンジャーズとアキラ達に仲間入りした際、夢主は偶然その場に居合わせていなかった。ヒカルは意図して2人を遠ざけていた訳ではなかったが、何だかんだで顔合わせが先延ばしになってしまっていた。
「僕達と同じ、バイオコードを持っている子供だよ」
夢主は紹介のつもりでロールシャッハのホログラムをディスクの上に出す。最初の挨拶による第一印象は肝心だ。
「どーもっ、宇宙のヒーローノバです!ヒカルのセカンドヒーローやってまーす。本名はサム・アレキサンダー。よろしく!」
ノバは片腕を上げ爽やかに自己紹介を済ませた。
「初めまし……あ!」
夢主は見知らぬヒーローに向かってしっかりお辞儀をするため、両手を体の前で揃えた。それによりホログラムのロールシャッハは足場を失い、間一髪でパートナーの腕にしがみつく。
「わ、わっ!」
本人以上に慌てた夢主がもう片方の手で受け皿を作り、ロールシャッハはそこに降り立った。
「ごめんなさいっ」
「気をつけろ」
そしてノバは呆気なく蚊帳の外へ放られてしまった。
「何あれ。扱い丁寧過ぎない?ホログラムだぜ?」
言いつけるようにノバは主張するも、ヒカルは少しだけ困ったように笑い2人を弁護した。
「夢主ちゃんはいつもあんな感じ。パートナーのロールシャッハをとても尊敬してるんだよ」
「ふーん」
ノバは、目線は彼等に向けつつも別段興味無さそうに相槌を打った。
「大丈夫?」
「は、はい…!」
手首を掴まれ、もう片方の腕は背中に回ってきていて、図らずとも情熱的なダンスの決めポーズのような体勢になってしまった。夜と言えど、間近に迫ったヒカルの端正な顔を月明かりがはっきりと照らし出す。
「この先も地面がぬかるんでいるからね、足元に気をつけて行こう」
ヒカルは優しく微笑み、乾いた地面へ夢主をゆっくり立たせた。
「はい。あ、あの…ありがとうございます」
「夢主ちゃんに怪我が無くて良かったよ」
紳士な対応に胸騒ぎが収まらない夢主とは対照的に、この一連の出来事に彼は全く動じていない。むしろ、気にも留めていない。
自分の心臓のためにも、この人の前では二度と転ぶまいと夢主は固く誓った。
「あ、そうだ!」
突然声を上げたヒカルはディスクを操作し、パートナーのホログラムを水平にした手首の上に出す。
「ソー。悪いんだけど、少しノバと交代しても良いかな?肝試しのこと話したら参加したいって言ってたのを思い出したんだ」
「勿論だ。ホログラムのままではあるが、封印されっぱなしよりはマシだろう。存分に発散させてやれ」
「うん。ありがとう」
これではトニー・スタークが想定した肝試しにならないのではと夢主は思ったが、頼り甲斐のある仲間とその神様がそう仰るのだ、余計な口は挟まないでおいた。
ヒカルはソーのディスクを外し、腰のホルダーに収納していたノバのディスクと入れ替える。
「ノバ、お待たせ」
「やあっと出してくれた!」
ヒカルと同世代のヒーローは小さな姿のまま、うーんと両腕を伸ばし首をひねった。
「ヒカル、こんな時間にお散歩?あっ、もしかして絶賛肝試し中?」
「そうだよ」
「ふーん。俺にはただの山道にしか見えないけど」
ノバは腰に手を当てて小馬鹿にしたように鼻で笑う。日本のお化け屋敷や墓場を想像していた彼にとって、この状況は大いに期待外れだったらしい。
「あはは。もしかしたら、お化けの類より野生動物の方が出てくるかもね」
ヒカルの何気ない一言によってノバの脳裏に浮かんでしまったある動物が、彼の態度を一変させる。
「そ、それはそれで危険だろ。確かに、言われてみればなーんか雰囲気あるトコだよな~。この辺、実際出たりすんの?例えばさ、イノシシとか、アライグマとか、リスとか、あと…その…」
口ごもり目を逸らした拍子に、ようやくもう1人の子供の存在に気が付いた。
「ん?君誰?」
「ああ、ノバはまだ夢主ちゃんと話せていなかったね」
ノバがアベンジャーズとアキラ達に仲間入りした際、夢主は偶然その場に居合わせていなかった。ヒカルは意図して2人を遠ざけていた訳ではなかったが、何だかんだで顔合わせが先延ばしになってしまっていた。
「僕達と同じ、バイオコードを持っている子供だよ」
夢主は紹介のつもりでロールシャッハのホログラムをディスクの上に出す。最初の挨拶による第一印象は肝心だ。
「どーもっ、宇宙のヒーローノバです!ヒカルのセカンドヒーローやってまーす。本名はサム・アレキサンダー。よろしく!」
ノバは片腕を上げ爽やかに自己紹介を済ませた。
「初めまし……あ!」
夢主は見知らぬヒーローに向かってしっかりお辞儀をするため、両手を体の前で揃えた。それによりホログラムのロールシャッハは足場を失い、間一髪でパートナーの腕にしがみつく。
「わ、わっ!」
本人以上に慌てた夢主がもう片方の手で受け皿を作り、ロールシャッハはそこに降り立った。
「ごめんなさいっ」
「気をつけろ」
そしてノバは呆気なく蚊帳の外へ放られてしまった。
「何あれ。扱い丁寧過ぎない?ホログラムだぜ?」
言いつけるようにノバは主張するも、ヒカルは少しだけ困ったように笑い2人を弁護した。
「夢主ちゃんはいつもあんな感じ。パートナーのロールシャッハをとても尊敬してるんだよ」
「ふーん」
ノバは、目線は彼等に向けつつも別段興味無さそうに相槌を打った。