第二部:都合の良い男
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利き腕と反対の手首、そして両足首を鎖に繋がれ、夢主は忌々しい椅子からやっと立ち上がらされた。
「実験開始だ。これから君は、これをディー・スマッシュするんだ。やり方は知っているのだろう?成功すれば、この部屋から出してやろうではないか」
「……」
「手を出しなさい」
「……」
自分をこんな目に遭わせた男に襲いかかったところで、隣に佇む男も伸して、まだ見ぬ船員を全員倒して、救助を要請して、五体満足で日本に帰れるとは到底思えない。大人しく差し出された物を受け取った。
「良い子だ。じっとしていろ」
白いリストバンドのような物を取り付けられている間、夢主はディスクの画面を見つめる。
「……」
この小さな装置を手放してからまだ一日も経っていないが、随分久し振りに握った気がする。
交番に届けようかなんて迷いながら過ごしていた昨日までの暮らしがとても恋しい。
「……」
戻りたいけれど、戻れない。あの時とはもう違う。状況も場所も、恐らく自分自身の体も、変わってしまった。
「ロールシャッハさん…」
「なんだ、喋る力がまだ残っていたのか」
D・スマッシュをしてしまえば、ロールシャッハは悪の組織の手駒の一つにされてしまうかもしれない。不要または厄介者と見なされれば、再びディスクに閉じこめられ二度と出られなくなるかもしれない。彼のことだから、恐らく後者だろう。
どちらにせよ、今、自分の、この手によって。
「さあ、やれ」
「……」
だが、頼みの綱はこれしかない。
「どうした?さっさとやれ。また電気を流されたくないならな」
「やり方を忘れてしまったんでしょう。ディスクの裏側を擦り、地面に叩きつけるんだ」
言われたままに裏側の中心部を指で丁寧になぞると、バイオコードが認証され、機械的な音声が鳴り始める。最初はよく聞き取れなかったが、
“FIGHT SINGULARITY”
と、夢主にだけはっきりと聞こえた。
久々に手にした青い装置を強く握りしめ、大好きなヒーローの名を叫ぶ。
「ロールシャッハさん!!ディー・スマッシュ!」
目の前の床にディスクを叩きつけると、そこを中心に旋風が吹き荒れた。夢主は制服のスカートを押さえながら、ロールシャッハ召還の瞬間を見守る。
「まず、ディー・スマッシュは成功だな」
あの夜、敵がヴィランを呼び出した現れ方と同じ。その後ろ姿は光の膜と輪に包まれ見えにくいが、お馴染みのトレンチコートに中折れハット。
「お、始めていたのか」
「俺にも見せろよ!」
彼女をここへ連行した男2人も実験現場へ駆けつける。
たった1人のヒーローは状況を知ってか知らずか、前へ一歩、また一歩と踏み出す。と同時に、振った腕や踏み出した脚から順に覆っていた光が剥がれていき、粉々に分散していく。
「わ~、地味な奴選んだなー」
「ロールシャッハだと?少し危険じゃないのか?」
「心配無用だ、こんな弱そうなヒーローなど…」
身長は把握していたものの、思っていたより彼は小さく見えた。
「いざとなれば、我々のヴィランで抑えつければ良い」
会いたいと常々思ってはいたが、初対面がこんな場になってしまうとは。
「ロールシャッハ…さん…!」
最悪だ。
「…フム」
「実験開始だ。これから君は、これをディー・スマッシュするんだ。やり方は知っているのだろう?成功すれば、この部屋から出してやろうではないか」
「……」
「手を出しなさい」
「……」
自分をこんな目に遭わせた男に襲いかかったところで、隣に佇む男も伸して、まだ見ぬ船員を全員倒して、救助を要請して、五体満足で日本に帰れるとは到底思えない。大人しく差し出された物を受け取った。
「良い子だ。じっとしていろ」
白いリストバンドのような物を取り付けられている間、夢主はディスクの画面を見つめる。
「……」
この小さな装置を手放してからまだ一日も経っていないが、随分久し振りに握った気がする。
交番に届けようかなんて迷いながら過ごしていた昨日までの暮らしがとても恋しい。
「……」
戻りたいけれど、戻れない。あの時とはもう違う。状況も場所も、恐らく自分自身の体も、変わってしまった。
「ロールシャッハさん…」
「なんだ、喋る力がまだ残っていたのか」
D・スマッシュをしてしまえば、ロールシャッハは悪の組織の手駒の一つにされてしまうかもしれない。不要または厄介者と見なされれば、再びディスクに閉じこめられ二度と出られなくなるかもしれない。彼のことだから、恐らく後者だろう。
どちらにせよ、今、自分の、この手によって。
「さあ、やれ」
「……」
だが、頼みの綱はこれしかない。
「どうした?さっさとやれ。また電気を流されたくないならな」
「やり方を忘れてしまったんでしょう。ディスクの裏側を擦り、地面に叩きつけるんだ」
言われたままに裏側の中心部を指で丁寧になぞると、バイオコードが認証され、機械的な音声が鳴り始める。最初はよく聞き取れなかったが、
“FIGHT SINGULARITY”
と、夢主にだけはっきりと聞こえた。
久々に手にした青い装置を強く握りしめ、大好きなヒーローの名を叫ぶ。
「ロールシャッハさん!!ディー・スマッシュ!」
目の前の床にディスクを叩きつけると、そこを中心に旋風が吹き荒れた。夢主は制服のスカートを押さえながら、ロールシャッハ召還の瞬間を見守る。
「まず、ディー・スマッシュは成功だな」
あの夜、敵がヴィランを呼び出した現れ方と同じ。その後ろ姿は光の膜と輪に包まれ見えにくいが、お馴染みのトレンチコートに中折れハット。
「お、始めていたのか」
「俺にも見せろよ!」
彼女をここへ連行した男2人も実験現場へ駆けつける。
たった1人のヒーローは状況を知ってか知らずか、前へ一歩、また一歩と踏み出す。と同時に、振った腕や踏み出した脚から順に覆っていた光が剥がれていき、粉々に分散していく。
「わ~、地味な奴選んだなー」
「ロールシャッハだと?少し危険じゃないのか?」
「心配無用だ、こんな弱そうなヒーローなど…」
身長は把握していたものの、思っていたより彼は小さく見えた。
「いざとなれば、我々のヴィランで抑えつければ良い」
会いたいと常々思ってはいたが、初対面がこんな場になってしまうとは。
「ロールシャッハ…さん…!」
最悪だ。
「…フム」