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デフォルト:葉山 果穂【はやま かほ】青葉城西高校三年三組。予備校通いの電車通学。
真面目で努力家ゆえに慎重過ぎるところがある。
最近の悩み:「同じクラスの花巻君との“デコボコフレンズ”というあだ名を何とかしたい。」
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火曜日、朝のホームルーム後で花巻君に昨日の写真はなんだと開口一番に聞かれ、やっぱりきたかと思いつつ通常運転の花巻君に少しほっとした。
「松川とデート行くなんて聞いてないんですけど?」
「デートじゃないから。夜ご飯一緒に食べただけです。あと名前出すの本当やめてください」
「デートじゃないなら俺も呼べよ~。俺らデコボコフレンズだろ~」
「それは気が回らなくてどうもすみませんでした~」
前後の席で緩い言い合いをした後、花巻君はおもむろに小さくふきだす。
「......で?どうだった?」
「.......醤油ラーメンと餃子、めっちゃ美味しかった」
「そっちじゃねぇよ。松川と何かあったかって聞いてんの。アイツのことだから葉山ン家まで送ったんだろ?ちゅーした?」
「生憎ですが、女子は餃子とかを食べた日にそういうことをしたいとは思いません。花巻君、覚えておいた方がいいよ~?」
「へ〜、勉強になるな~」
遠慮ない花巻君の言葉に私も同様の言葉を返すと、花巻君はわざとらしい感想を述べる。もうすっかりいつも通りだ。よかった。
そして、確かにあの後「夜も遅いし、何かあったら心配だから送らせて?」と松川君から言われ、恐れ多くも家まで送ってもらったのだけど、本当にそれだけだった。
ちゅーなんて勿論してないし、そんな空気にもならないし、そもそも告白もしてないんだから別に何も無いのが普通である。
「そんなことより、昨日花巻君何か用事あった?私が勉強中って言ったら、明日でいいやって言ってたよね?」
「そんなことよりってお前......」
会話の途中でふと昨日のやり取りを思い出し、話題の方向転換をすると花巻君は露骨に眉を寄せた。
しかし、一つため息を吐いた後、私から目を背けて話を続ける。
「......いや......昨日はほら、ちょっとふざけ過ぎたじゃん?で、月曜だから部活無いし、葉山も何もなければカラオケでも行くか~?とか言おうとしてたんだけど、勉強してるっつーんなら邪魔しねぇ方がいいかなって思ってさ」
「え、そうだったの?なんだ、誘ってくれたら勉強途中でもカラオケ行ったのに」
花巻君の話に素直な言葉を返すと、花巻君は「マジか~しくった~」と至極残念そうな様子を見せた。
私も花巻君とのカラオケはとても楽しいので、そのチャンスを逃してしまったのは非常に残念だ。
眉を下げながら「タイミング悪くてごめんね」と謝ると、花巻君は腕組みしながら「いや、俺が引くタイミング間違えたわ」と眉間に皺を寄せたまま瞳を伏せた。
今度行ける日あるかなと提案しようとした矢先、そういえば花巻君と松川君はその時一緒じゃなかったのかと今更ながら気が付いた。
松川君が昨日図書室に居たのは、てっきり花巻君に聞いたからだと思ってたので、それが私の思い違いであったことに少し驚いてしまう。
それだったら、松川君は自分の事情で図書室に居て、たまたま居合わせた私を夜ご飯に誘ってくれたんだろうか?
......もし、あの時図書室に居たのが私じゃなくて別の人だったら、その人と一緒に行ってたんだろうか?
「.......ぁぁあぁあああ......ッ!!」
「ぅおわッ!?え、なに!?呪い!?」
途端、自分のポンコツな思考回路に直ぐに嫌気が差して両手で顔を覆いながら唸ってしまうと、当然花巻君は驚いた声を上げた。
いや、でも、今のは無い。彼女でも何でもない私が、最近友達になったばかりの私が、そんな事を考えるなんて厚かましいにも程がある。
「.......うん、カラオケ行こう。花巻君今度いつ空いてる?都合のいい日ある?」
「え、あ、おお......ちょい待ち、部活の予定表確認する」
一頻り後悔してから、半ば無理やり気持ちを立て直す。
突然落ち込み、直ぐに通常運転に戻った私を戸惑いがちに見ながらも、花巻は自分のスマホのロックを解除した。
どうやら部活の予定表を撮っているようだ。
「んー......今週の土曜、の、16時以降は?体育館の都合で部活16時までなんだけど」
「土曜ね?えーと......予備校14時までだから、行ける!」
花巻君と同様に私もスマホで撮ってある予備校のスケジュールを確認すると、提案された日時で大丈夫そうだった。
顔を明るくしながら二つ返事で了承すると、花巻君も楽しそうに笑う。
「っし、じゃあ土曜の夕方で決まりな。部活終わったら連絡する」
「やった、待ってる~......って、花巻君は部活の後でも大丈夫なの?めちゃくちゃお疲れなんじゃない?」
「オイオイ、現役男子高校生の体力なめんなよ?超余裕だわ」
「え〜、すっご~い。じゃあ花巻君にはホルモン歌ってもらお~」
「おっ前ふざけんなよw殺す気かw」
花巻君の体調を心配したものの直ぐに大丈夫だと返ってきたので、緩い冗談をかましたら花巻君はおかしそうにふきだした。
ここで一時間目の教科担当の先生が入室した為、私も花巻君もいそいそと授業を受ける準備に入る。
「なぁ葉山、他のヤツも誘っていい?」
「いいよ、じゃあ私もユリ誘っていい?」
「お、花巻隊じゃーん。Pe●fumeでも歌うか」
「私はいいけど花巻君声出ないでしょw」
お互いに前を向いたまま会話を続け、花巻君の冗談に思わずふきだす。
私とユリと花巻君で歌うとかめちゃくちゃ面白いなと思いつつ、ふと頭をよぎった人物の名前を咄嗟に口に出した。
「あ、待った。松川君はダメね?」
私の言葉に花巻君はこちらに顔を向け、「は?なんで?やっぱ昨日何かあったか?」と再び勘ぐる。
「何も無いです。いや、だって、普通に恥ずかしいし......」
「えー?松川歌上手いよ?イケボだし?」
「いや、それは超聞きたいけど......でも、やっぱ無理。今はなりふり構わず歌いたい」
「歌えばいいじゃん」
「松川君居たら無理!絶対ドン引きされる!」
「しねぇって、多分」
「多分じゃん!絶対無理だから声掛けないでね!」
必死な私とは対照的に、花巻君はのらりくらりとした様子で「へぇへぇ、わかりました~」と答えながら前を向いてしまった。
「ちょっと!全然信用出来ないんですけど!?本当、土曜に居たら怒るからね!」
「わかったわかった。いいよ、松川には声掛けねぇよ」
思わず少しだけ声を荒らげてしまえば、前に座る花巻君は一向にこちらを向かないままヒラヒラと片手を振り、もうこの話は終わりだと言うようにそのまま頬杖をつく。
本当に大丈夫かな......と今度は私が花巻君を勘ぐりながらも、先生が授業を始めたことでこの話題は一旦強制終了させられるのだった。
▷▶︎▷
お昼休みに土曜日のことをユリに話せば「え、絶対行くよ!」と即答してくれ、花巻君にそのことを連絡した。
直ぐに了解の返事がきたのでとりあえずスマホを机の上に置き、お昼ご飯に手をつける。
「松川君も来るの?」
「来ないよ」
「え、なんで?昨日デートしたんじゃないの?」
「デートじゃないから!ラーメン一緒に食べただけ!」
「いや、十分でしょ。二人っきりの外出は全部デートだよ」
「......えぇー?それ、ちょっと暴論じゃん......?」
「そしたら花巻君と二人でファミレスとか行ったらもうデートになるじゃん」と話せば、「え?花巻君は女子だからデートにならないよ?」と真顔で返されて思わずふきだした。
なるほど。花巻君は女子なのか。花巻君には悪いけど、なんか凄く納得してしまった。
「でも、松川君と写真撮るとか頑張ったじゃん」
「.............っ、」
黄色いパッケージのレモンティーを飲みながらにっこりと笑うユリの言葉に、たまらず顔が熱を持つ。
調子に乗ってしまったというどうしようも無い恥ずかしさと、だけど自分のスマホに松川君との写真がある嬉しさで気持ちがずっとこんがらがってる状態だ。
実を言うと昨日の夜からずっと少し見ては閉じ、また少し見ては閉じるという行為を繰り返していてるのだが、あまりにも自分の行動が変態のソレに思えてしまい、周りに人がいる時は必要時以外スマホには触らないようにしていた。
「松川君、やっぱ超イケメンだよね~。写真映り良過ぎというか、普通に格好良過ぎ」
「っ、そう!そうなの!格好良過ぎて本当に困る......!」
私のスマホを机に置き、二人で昨日の写真を見ながら松川君の格好良さについて話す。
背ぇ高いしスタイル良いし顔小さいし、切れ長の目とか、少し下がり気味の眉とか色気が凄いし本当に格好良い。
つい力説してしまう私に対し、ユリは楽しそうに笑った。
「......でも、私と全然同い年に見えなくてつらい......」
「あ~......果穂、小さいもんね~。で、松川君は大き過ぎ」
「......傍から見るとこんなに身長差あるんだなって思った......友達というか、ここまでくるともう兄妹っぽくない......?」
「兄妹wウケるw」
松川君との写真を見て思ったことを素直に話せば、落ち込む私とは他所にユリは明るい笑い声を響かせる。
だけど、本当に憎いほどの身長差だ。
多少の差なら可愛いものだが、おそらく30センチ以上となるとまるで大人と子供のようである。
その上さらに松川君は歳の割にとても大人っぽいことも合わさって、余計に差が開いているようにも見えた。
「.......もっと大人っぽくて、綺麗な人になりたい......」
思わず零れた思考と共に大きなため息を吐く。
私がもっと可愛くて綺麗でスタイルも抜群であったなら、ここまで酷い劣等感を抱くことはなかっただろう。
.......ああ、もう。恋愛って本当に厄介だ。
「果穂は十分可愛いと思うけどなぁ〜?」
「.......身内の意見は聞きません......」
「......でも、果穂が頑張るんなら、私も頑張るよ~!」
「え?」
ガッツポーズを見せるユリに目を丸くすれば、にっこりと可愛らしい笑顔が返ってきた。
「果穂今日何もなかったよね?だったら今日からレベル上げ頑張ろ~!」
「れ、レベル上げ......?」
「あと、松川君のリサーチも大事ね~。どんな感じの子が好きかとか、好きな食べ物とか。バレー以外で何が好きかとかも知りたいところ」
「.............」
元々恋多き友人であったが、ここに来てユリがこんなに頼もしく見えるなんて、本当、人生どうなるかわからない。
恋する乙女って本当に逞しいんだな......。
「.......ていうか......今更だけど、松川君って今、彼女居ないのか、な......?」
ここでふとした疑問が浮かび、思わずそのまま口にしてしまうと今度はユリが目を丸くした。
「え、居ないでしょ?居たら一緒にご飯行ったりしないでしょ?」
「......で、でも、あんなに格好良いのに、本当に居ないのかな......」
「大丈夫なんじゃない?ほら、前に体育館で果穂のことハグしてたじゃん?彼女持ちなら流石にアレはでないでしょ?」
「.............っ、」
さらりと言われた言葉にこの前の事を思い出し、露骨に顔が赤くなる。
で、でも、海外の人とかはああいうの普通に挨拶でするし、もしかしたら松川君にとってはそんなに大した事じゃないのかもしれない。
もしそうだとすれば、私だけあたふたとしてしまって本当に恥ずかしい。
「......ねぇ、やっぱり土曜日誘えば?歌う松川君とか、絶対格好良いじゃん」
「え、無理!私が歌えなくなる!」
「えー?歌ってる果穂、可愛いけどなぁ~?」
「だからっ、身内の意見は聞きませんので!」
恥ずかしさから少し大きめの声を出してしまえば、クラスメイトの何人かが何事かとこちらを見てきた。
それがさらに恥ずかしくて「ちょっとトイレ行ってくる......」と逃げるように立ち上がれば、ユリは「いってらっしゃ~い」と返事をしながらもにっこりと可愛らしく笑った。
青葉城西高校三年三組の日常
(さわやか三組とか、絶対ウソじゃん)