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デフォルト:葉山 果穂【はやま かほ】青葉城西高校三年三組。予備校通いの電車通学。
真面目で努力家ゆえに慎重過ぎるところがある。
最近の悩み:「同じクラスの花巻君との“デコボコフレンズ”というあだ名を何とかしたい。」
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学年集会が本日最後の授業だった為、体育館での現地解散となった。
第三学年ならではの進路の話や、将来のことを考えて今を大事にしなさい云々、最早耳にタコが出来るのではと心配になる程同じような話を聞かされて心も身体もすっかり凝り固まってしまった。
床に座ったまま思いきり上半身を伸ばし、あー疲れたと何度か首を回す。
この後予備校か、面倒くさいなぁと心の中でぼやいていると、友達のユリが「この後空いてる?」と期待混じりに聞いてきた。
「ごめん、予備校ある~」
「まじか〜、残念。どっか寄ってお茶しながら勉強しよ〜って言おうと思ってた」
「めっちゃ行きたい~。でも、ごめん~」
ユリの魅力的なお誘いに一瞬グラつくが、ここは理性的に考えて何とか踏みとどまる。予備校だってタダじゃない。
「葉山~」
ふいに背後から呼ばれて振り返ると、そこには背の高い花巻君がこちらに歩いて来るのが見えた。
「お前、この後何か予定ある?」
「え」
「あ~、花巻君ざんねーん。果穂、今日予備校だって~」
まさかの連続した友達からの誘い文句に思わず目を丸くすると、私ではなくユリの方が答える。
それを聞き、花巻君は大袈裟に衝撃を受けたような動きをした。
「まじか〜。あーあ、フラれた~」
「私もさっきフラれた~」
「いや、本当にごめんなんだけど、その言い方やめてよ」
「じゃあサボれよ」
「あいにく受験生ですので」
「そうなんだ、大変だな。中学受験?」
「花巻君とはもう口利かない。ユリ、帰ろう」
「ウソウソ、冗談です。そんな悲しいこと言わないで?」
「もっと誠意込めて、謝罪会見っぽく言って」
「この度は私の心無い発言の元、貴方様に多大な御迷惑をお掛けしてしまい、誠に申し訳無く思っております」
「許す」
「二人とも何なのwウケるんだけどw」
花巻君の冗談に少しカチンときたものの、いつものようにふざけて会話を流せば、可笑しそうにユリがふきだす。
最初のうちは、自分が大きいからって馬鹿にしやがってと反論していたが、花巻君の性格上、彼のそういう発言にいちいち腹を立ててはキリがないことに気が付き、今のようにふざけて流すワザを覚えたのだ。
余計な一言が多い人ではあるが、花巻君は友達として付き合っていてとても面白いので、何かと許してしまう所もある。
「で、花巻君は果穂に何言おうとしてたの?」
「ああ、この後俺ら部活なんだけど、今日は試合形式で練習すっからもしよかったら少し見てくかって提案しようとしてた」
「まじか〜、何それ面白そう~」
花巻君の話の内容に素直に残念に思っていれば、花巻君はなぜか私の方を見てニヤリと悪い笑顔を浮かべた。
「バレーしてる松川、めっちゃ格好良いのになぁ?本当、残念だなぁ?」
「え、ちょ、花巻く」
「え?なんで松川君?ちょっと、私何も知らないんだけど」
突如としてとんでもないことを言い出した花巻君に思わずどもってしまえば、途端に隣に居るユリの目がきらりと輝いた。
「松川君って、一組の松川一静君だよね?なに、果穂、どういうこと?」
「いや、別にどうもしないって。本当、花巻君が勝手なこと言ってるだけ」
「あれ?葉山お前、話してねぇの?」
「花巻君少し黙っててくれる?」
完全に盛り上がってるユリから顔を背けつつ、相変わらず余計な一言が多い花巻君をギロリと睨むものの、返ってくるのは可笑しそうに笑う顔だけである。
これではあまりにも分が悪い。
「......とにかく、私は予備校に行かないとなので、残念ですが帰ります」
「OK、じゃあリスケしよ!花巻君、近日で練習試合とかないの?」
「その行動力今は発揮しなくていいから!」
「今週の日曜日、練習試合あるよ~。しかもうちで」
「え」
三十六計逃げるに如かず。
その言葉通りにとっとと撤退しようとすれば、新たな声がこの場に聞こえてたまらずぎくりと身体を固くする。
私より先にそちらへ振り向いたユリは、その大きな目を更に丸くして口を開いた。
「あ、及川君」
「やっほーユリちゃん♪あれ、もしかして前髪変えた?」
「え、すごい!よくわかったね!」
颯爽と登場したのは六組の及川君で、瞬く間にユリとの会話に花を咲かせている。
「......なんてことしてくれたの花巻君......」
「いやいや、俺呼んでねぇよ?アイツが勝手に来たんだって。俺何もしてなかったじゃん」
なんで六組の及川君がここに......と考えると同時に花巻君を睨むと、花巻君は心外だ!とでも言うような顔をする。
でも、花巻君と及川君は同じバレー部で仲も良いし、先日の件もあるのでどうにも疑いが晴れない。
「そんなことより、葉山は日曜空いてんの?」
「.......予備校ある」
「何時まで?」
「.......14時までだけど......」
「じゃあその後来ればいいじゃん」
「.............」
「どうする~?果穂が行くなら私も行くよ~。夜バイトだから早めに帰るけど」
「えぇー......?」
「葉山ちゃん、絶対見といた方がいいよ。まっつん超格好良いから」
「及川君少し黙っててくれる?」
「あ、勿論及川さんも超格好良いからね☆」
「あ、花巻さんも超格好良いからね☆」
「.............」
「果穂w顔w」
きゃるん☆なんて効果音が聞こえてきそうな勢いで片目を瞑り、ピースサインを向けてくる男バレ二人にたまらず白けた顔を向けると、ユリがまた可笑しそうにけらけらと笑う。
もしかして男バレはアホばっかりなんじゃ...と軽く目眩を覚え目元を抑えて俯くと、「痛ッ!」という及川君と花巻君の短い悲鳴が同時に聞こえた。
何事かと思って直ぐに顔を上げれば、二人は後頭部を両手で抑えて長身を屈めている。
その後ろに両手の拳を握った短い黒髪の男子生徒...5組の岩泉君が呆れたような顔をして仁王立ちしていた。
「何やってんだお前ら。人様困らせてんじゃねぇ」
「~~~イッタイよ岩ちゃん!殴るならもう少し加減して!?」
「いや、そもそも殴んないでほしい......マジ痛ぇ......」
岩泉君の登場に及川君と花巻君は途端に勢いを失くし、涙目で岩泉君に不服を訴えるが「うるせぇ」の一言で一蹴されていた。
男バレ三人のやり取りを流し聞きしつつ、私とユリは思わず顔を合わせる。
「......果穂、本当にどうする?ていうか時間、大丈夫?」
「割りともう出たいとこだけど......ユリ、本当に来られるの?私、日曜も予備校14時まであるんだけど......」
「大丈夫大丈夫。私バイト19時からだから、じゃあ15時に正門待ち合わせとかでいい?」
男バレ三人がわいわいと騒いでる横でユリと打ち合わせし、若干気乗りしないところもあるが一先ず小さく頷いた。
「ねぇ、見に行く時って制服の方がいいの?それとも私服でOK?」
「ああ、私服で大丈夫だよ。公式戦じゃないしね」
よく気の回るユリは服装のことを確認してくれて、それに及川君が答えてくれる。
制服じゃないとダメなら予備校も制服で行かなければいけなくなるから、私服OKなのは非常に嬉しい。
「てか、ユリちゃんも葉山ちゃんも日曜来てくれるんだね!ありがとう!俺めっちゃ頑張るよ!」
「いや、葉山は松川見に来んだから及川君はオマケよ、オマケ」
「ねぇ、本当にそういうのやめて!」
「あははw及川君ドンマーイw」
「マッキーうっさい!じゃあユリちゃんは俺のこと応援してくれるよね?」
「えー?そうだな~」
会話の途中で私が怒るも、花巻君と及川君は少しも気にとめずユリと話している。
何ですか、私の声は聞こえないんですか?
いっそのことこのまま帰ってしまおうかと本気で考えていると、隣りにいるユリがにこにこと笑いながらするりと腕を組んできた。
「.............」
もしかして、考えを読まれて先手を打たれたのかもしれない。
ユリはほわほわしてるようで周りの様子をよく見ていて、特にヒトの感情の機微によく気が付くところがある。
強行手段は取らせないぞということかなと思っていれば、私より少し背の高い彼女は楽しそうに口を開いた。
「ここはやっぱり、男気溢れる岩泉君かな~」
「え」
「ナイスジャッジ。私も岩泉君めっちゃ応援する~」
ユリの返答に及川君は目を丸くし、対して私は少し機嫌が直って隣りのユリにくっ付いた。
友達同士でイチャつけるのは、おそらく女子の特権である。
「試合、頑張ってね~」
「楽しみにしてるよ~」
「おう、サンキュ」
「ちょっと岩ちゃん!そうやって美味しいとこだけ持ってくのやめてよ!」
「は?お前の人徳がないだけだろ。あと指差してくんなうぜぇ」
「そこまで言う!?あるよ!少しは!」
「及川必死かwウケるw」
「言っとくけどマッキーは俺と大差ないからね!?」
私とユリが岩泉君に向けて話していると、及川君が眉間に皺を寄せて岩泉君を摘発したが、ものの見事に返り討ちにあい狭い立場を更に狭くしていた。
その様子を見ていた花巻君が可笑しそうにふきだす。
男バレ三人の仲良いんだか悪いんだかなやり取りに笑いつつ、ちらりと時計を確認するともう学校を出た方がいい時間になっていた。
「じゃあ私、そろそろ行かないとだから。部活頑張ってね」
わいわいと騒ぐ三人に別れを告げると、「じゃあまた明日なぁ」と同じクラスの花巻君が代表して返してくれる。
体育館の出口へ向かうとユリも一緒に来てくれて、そのまま一緒に帰ることになった。
「ねぇ、帰りながらでいいんだけどさ~」
「ん?」
「松川君との話、聞かせてくれます?」
「.............」
にこにこと楽しそうに笑うユリの質問に、どうやって誤魔化そうか回避策を探すも良案はヒットせず、結局松川君との話を洗いざらい喋ることになったのでした。
▷▶︎▷
「なんで三人集まってんの?」
三組の女子二人がこの場から離れて少ししたところで、一組の松川がこの場にやって来た。
「松川来んの遅ぇよ」
「葉山ちゃん達もう帰っちゃったよ~」
松川の登場に花巻と及川は同時に責めるような発言をしたが、耳馴染みの名前を聞いた松川は「えー、葉山さん居たの?」と少し残念そうな顔をする。
「でも、今週末の練習試合見に来るってさ!やったネまっつん!」
「え、マジで?」
「マジで。松川君、いい所見せないとw」
「大丈夫、俺いい所しかないから」
「オイw」
「それ言って許されるの松川くらいだよな」
「え、岩ちゃん俺は?」
「言ってみろ、秒で殴る」
「差別だ!!」
「妥当な評価だろ」
淡々としつつ自信満々な松川の発言に花巻が笑う一方、松川の姿勢に感心する岩泉には及川が絡み、相変わらず釣れない態度を取られていた。
「そういやさ、びっくりしたんだけど葉山のやつ、お前とのこと友達に何も話してないらしい」
「あ、それ俺も思った。葉山ちゃん、ユリちゃんとめっちゃ仲良いし、相談のひとつでもしてると思ってたけど、まさか何も言ってないとはね~。今頃めちゃめちゃ問い詰められてるんじゃない?」
「......ふーん......」
花巻と及川の会話を聞きながら、松川は小さくため息を吐き、長い腕を胸の前で軽く組む。
「......やっぱり俺、あんまり意識されてないのかな......?」
「いやいや、めちゃめちゃされてるからwそこは心配ねぇよ」
「そうそう、だから意外だなって思ったんだもん」
松川の発言に花巻と及川は楽しそうに笑いながら訂正を入れる。
それにしても、こういうコトには手馴れていそうな松川が、同い歳の女子に少し手を焼いているなんて、花巻と及川にとってはこっちも意外なニュースだなと内心で驚いていた。
「なぁ、松川と葉山ってなんかあったのか?」
この場でただ一人、事情を知らない岩泉が素直に疑問を口に出すと、他の三人は一瞬黙って岩泉を見る。
「うーん、岩ちゃんにはまだ早い......?」
「バカヤロー、岩泉だってもう高三だぞ?心身ともに立派なオトコだって」
「及川、あんまり避け続けてると将来大変なことになるかもよ?岩泉だって立派なモンついてんだから」
「そうなんだけど、でも......」
「......とりあえず、すげぇ馬鹿にされてることだけはわかった」
突如として井戸端会議のような会話を神妙な顔つきで話し出した三人に、岩泉は額に青筋を立てる。
機嫌を損ねた彼が真っ先に鉄槌を下したのは言わずもがな幼なじみである及川で、「なんで俺だけ!?」と騒ぐ及川へ二発目のゲンコツが落ちるのにそう時間は掛からなかった。
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(なんか、俺の為に?どうもありがとう。)