AND OWL!
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デフォルト:森 夏初【もり なつは】梟谷学園高校二年六組、園芸部所属。
極度の人見知りで仲の良い相手としか普通に話せない。頑張り屋と卑屈屋が半々。
最近の悩み:「男バレの先輩方のノリに上手くついていけない」
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「おーい木兎、お客さんだぞ~ 」
バレーボールを打つ音、靴の滑り止めがひっきりなしに鳴り響く朝の体育館に小見さんの声がスっと通った。
途端、一緒にスパイク練をしていた木兎さんの動きが止まる。
「え!?......なんだ男かよー!」
そわそわとした様子を隠しもせず木兎さんはそちらを見てから、認識した相手に自慢の頭を抱えて嘆く。
体育館の入口に小見さんと立っている見覚えのない男子生徒は「悪ィな、期待させて」と可笑しそうに笑った。
木兎さんとタメ口ということは、おそらく三年生だろう。
「いや、今のはコミヤンの言い方が悪い!」
「はぁ?お前が勝手に勘違いしたんだろうが」
「やぁだ~、あたしじゃ不満だって言うのぉ?ぼっくんてばヒドイ男ぉ~」
「オネェやめろ!全然テンションあがんねーよ!!」
木兎さんの反応にその先輩は口元に手を当てオネェ口調で体を張った軽口を返す。
隣に居た小見さん含め体育館の何人かがそのやり取りに笑いをもらした。
「悪ィあかーし、ちょっと行ってくる!」
「あぁ、はい」
木兎さんの背中を見送りながら、ちらりと来訪者である先輩を見る。
おそらく俺より背は低い、170半ばくらいの背丈に黒髪......わかりづらいが下の方を少し刈り上げているツーブロのヘアスタイル。
制服はやや着崩し気味、上履きのカカトは踏まれている。
先程の木兎さんとのやり取りを見た限り、あまり物怖じしないタイプだろう。
「.............」
人間観察が趣味という訳では無いが、気分の浮き沈みがかなり激しい木兎さんと一緒に居て、何となく癖づいてしまった。
特に木兎さんと直接話す人は、木兎さんの機嫌に何か関係しないかとつい鋭利的に観てしまう傾向がある。
ボールを拾いがてら木兎さんとその先輩を気にしていると、二人は割と呆気なく解散した。
「待たせたな!トス上げてくれ!」
「......あの、さっきの人何だったんです?この時間に来るなんて、余程急ぎの用事だったんじゃ......」
「え?いや、そういう訳じゃねぇけど......?」
意気揚々とコートに戻ってきた木兎さんに聞けば、木兎さんは元から丸い黄金色の目をさらに丸くして俺を見た。
しかしそれは数秒のことで、木兎さんは何かを思い出したような様子を見せる。
「あ、俺今日あかーしのクラス行かねぇから」
「え?」
言われた言葉に思わず間の抜けた声が出た。
昨日、同じクラスの森とのやり取りに散々盛り上がっていたというのに、一体どういう風の吹き回しだ。
「......もしかして、さっきの人と何か関係が?」
木兎さんが自分で考えを変えるとは到底思えないので、そうすると思考の行き着く先は自然としぼられてくる。
俺の質問に木兎さんは「すげぇな赤葦、よく分かったな」とお決まりの言葉を返してきた。
「あいつ立嶋っていうんだけど、夏初ちゃんの部活の先輩らしくて」
「......はぁ......」
「なんかさ、夏初ちゃんてだいぶ人見知りするタイプみたいで、あんま馴染みの無いヤツと話すのにスゲー緊張するんだってよ」
「......ああ、道理で......」
「え、赤葦気付いてた?俺全然わかんなかったわ!」
「......でしょうね」
以前からどことなくよそよそしい森の態度に何となくそんな気はしていたが、やはり人見知りする質だったらしい。
木兎さんとは正反対のタイプなので、溌剌とした脳天気な木兎さんが森のそれに気が付くはずがないのだ。
「そんで、ココ最近ずっと気ィ張ってるらしくて、部活でもかなり疲れてるらしいからちょっとそっとしておいてくれって」
「......そうだったんですか......」
木兎さんの話に相槌を打ちつつ、申し訳ないことをしたなと内心で反省した。
同じクラスの俺と喋るのもまだぎこちない所があるくらいだ。学年も上で何事にも物怖じしない木兎さんと話すのは大層しんどかっただろう。
「でもさ、俺夏初ちゃんにすげーバレー選手教えることになってるじゃん?」
「......それは......」
「で!さっき立嶋の奴と話して、今度の音駒との練習試合見に来てもらうことにした!」
「は?」
「そしたら俺が説明しなくてもわかるし、俺らの凄さを教えるにはうってつけじゃね?」
「.............」
ニコニコと機嫌良さそうに笑いながらさも名案とばかりに話してくる木兎さんだが、俺の感覚では逆に荒療治になるというか、人見知りをする森に負担を掛けてしまうのではないかと思ってしまう。
木兎さんの機嫌を損ねずにどうやって伝えようかと考えあぐねていると、木兎さんはまさかの提案をしてきた。
「立嶋が誘ってくれるらしいけど、赤葦同じクラスだし夏初ちゃんに声だけ掛けといてくれよ」
「え」
「立嶋はともかく、夏初ちゃんには格好良いとこ見せなきゃな~!ってことで赤葦、早くトスくれ!ヘイヘイヘーイ!」
「いや、ちょっと待ってください。それは本末転倒な気が......」
「ホンマツテントウ?」
「......そんなてんとう虫の種類みたいな発音で言わないでくださいよ......」
早くスパイク練がしたい木兎さんを押しとどめて、呆れの混じったため息を吐きながら話を整理する。
「......人見知りをする森を、知らない人ばかりの空間に行かせるのは酷......可哀想なんじゃないかって話です」
「え、でも立嶋も来るって言ってたぞ?俺らの試合、1回見てみたかったって」
「......なら、その立嶋さんと一緒であれば、森のストレスは軽減するということですか?」
「......うーーーん?よくわかんねぇけど、そうなんじゃねぇの?わざわざ夏初ちゃんのこと話しにきたくらいだし、夏初ちゃんの嫌がることはしないだろ」
「.............」
木兎さんの言葉に確かに一理あるなと納得し、スパイク練のモーションに移ると木兎さんは嬉々としてスパイカーの位置へ移動した。
「ヘイヘイ赤葦!いつでもいいぜ~!」
「はいはい」
待ちきれないとばかりに目を輝かせる木兎さんに極力丁寧にボールを投げれば、綺麗なレシーブを通してボールは返ってくる。
そのまま木兎さんの一番打ちやすいトスを上げれば、助走をつけた木兎さんの力強いスパイクが勢いよく決まった。
「く~~~っ!!やっぱ俺最強!!ヘイヘイ赤葦もう一本!!」
「はいはい」
今日はまた、木兎さんの機嫌も調子もすこぶる良さそうだ。
このままのコンディションで今週末の音駒との練習試合を迎えたいところだが......ちょっとしたことで著しくモチベーションを下げる木兎さんのことだから、今の調子が良くてもこの先どうなるかはわからない。
取らぬ狸の皮算用とまではいかないが、ひとまず俺の出来ることは一通りやっておくに限るので、木兎さんにトスを上げながらこの後どうやって森にこの件を伝えようかとゆっくり思考を回した。
人事を尽くして天命を待つ
(ダンバレ副主将の木兎ファースト)