Crows to you
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デフォルト:広瀬季都【ひろせ きと】烏野高校二年三組の帰宅部。嶋田マートをメインにヘルプ要員で色んなバイトをしている為、商店街に顔が広い。
最近の悩み:「バイト入れ過ぎて“友達居ないの?”ってよく聞かれるけど沢山居ますから!!」
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土曜日のお昼頃に補習終わりのヒナちゃんと影山君、東京まで車を出してくれる神様仏様冴子姐様をお見送りして、その翌日の今日に坂ノ下商店に戻って店番してたら滝さんがやって来た。何やかんやで来週の土曜日に大人に混じってバレーボールをする事になり、何だか目まぐるしい週末だったなぁと思いながら坂ノ下でのバイトに勤しんでいれば、あっという間に時間は過ぎて気付けば閉店時間になっていた。慌てて閉店の札を入口に掛け、レジ締めをしたり清掃をしたり連絡日誌を書いたりといつもの閉店作業を進めていれば、閉店札を掛けた引き戸が静かに開く。日誌から顔を上げれば、予想通りの人物……この店の店主であり、烏野高校男子バレー部のコーチでもある烏養さんが大層疲れた顔でのそのそと店内に入って来た。
「おかえりなさい!東京合宿お疲れ様でした!」
「おう……キト、店番ありがとな。何か困った事あったか?」
「いえ、問題無く終わりました。……あと日誌だけ書いたら帰ります。帰りバイクなので見送り要りません」
烏養さんが帰ってきたという事は、男バレの東京合宿が無事に幕を下ろしたという事だろう。合宿にはどんな高校が居たのか、どんなバレーボールが見られたのか、どんな選手が居たのかとか、烏野がどのくらい勝てたのか、今度こそ音駒に勝つ事は出来たのかとか色々聞きたい事は山程あったけど、今の烏養さんの疲れた顔を見ればそんな質問は直ぐに引っ込んだ。……考えてみれば、東京までのとても長い道のりを烏養さんと武田先生の二人で運転してきたのだ。バレーのコーチやって、その後長距離運転もしたら、きっと相当クタクタになってるはず。そう考えて、さっさと御暇しようと日誌を書くペースを上げていれば、烏養さんは欠伸を手で抑えながらも「……あー……なんか、悪いな……」と少し申し訳なさそうに視線を逸らした。私は全然気にしてないのに、烏養さんは本当に律儀な人だ。
「……つーかキト、聞かないのか?」
「え?」
「合宿の話」
「……それは、まぁ、めちゃめちゃ聞きたいですけど……烏養さん凄く疲れてそうだから、今日はいいです」
「…………」
「本当、お疲れ様でした。今日はどうぞ、ゆっくりお休みください」
烏養さんの鋭い質問に眉を下げながら笑って答え、必要最低限の連絡事項だけ書き終わったのでエプロンを外してリュックに突っ込む。軽く身支度を整えてから、バイクのキーとヘルメットを両手に店の外へ出た。
「戸締りだけ絶対忘れないでくださいね!では、おやすみなさい!」
「……へいへい。気ぃ付けて帰れよ」
お店の引き戸を閉めながら最後にそれだけ言うと、烏養さんはガシガシと頭を掻いてからその手をゆるくこちらに振った。大分お疲れのようだけど、本当に大丈夫かなと思いながらバイクのキーを回せば、少し遅れて扉を施錠する音が聞こえたので安心してバイクに跨る。車通りも人通りも全く無い道を走りながら、明日は前の席の西谷君に色々話聞かせて貰おうと静かに胸を踊らせていた。
▷▶▷
「西谷君おはよ!東京合宿どうだった?」
翌日の月曜日。朝の挨拶もそこそこに前の席の彼に本題を切り出せば、西谷君も「オス!」と軽い挨拶をくれた後体をこちらに向けてピカピカの太陽みたいな笑顔で話し出した。
「もうすッッッげぇ楽しかった!!凄ぇヤツいっぱい居たんだけど、やっぱ衛輔君が一番凄かったな!」
「モリスケ君?え、誰?」
「音駒のリベロ!ほら、ゴールデンウィークの練習試合で超格好良かった人!」
「……ああ、えーと……3番さん?」
「そうそう!」
突然会話に現れた人物に思わず首を傾げれば、西谷君は遅れて補足をしてくれる。どうやらモリスケ君というのはめちゃめちゃ凄いレシーブを披露していた音駒のリベロの人らしい。西谷君が君付けで呼ぶという事は、同い年なのかな?
「音駒は全体的にやっぱレシーブ上手くてさぁ!相変わらずガンガンボール上げてくんだけど、でも、梟谷ってチームのキャプテンがすんげぇ威力のスパイク打ってくるから流石に苦戦してたな!兎に角凄ぇ重いからボール受けると暫く腕がビリビリすんだけど、あ、しかもそのキャプテン、全国5本の指に入るエースらしくて!あ、あとサーブは生川ってとこがマジで凄かったぜ!一人じゃなくて全員めちゃくちゃヤバいサーブ打ってくんの!で、別の意味でヤバいのが森然ってとこで、そこのコンビネーションがマジでこう、全員がバラバラに動くのに何故か最後ビシッと攻撃が決まるんだよ!誰が打ってくるか最後まで見ないと分かんないから、モーション入るのどうしても少し遅れるんだ。それで衛輔君に予測の仕方聞いたら、俺とはちょっと違う所があって……」
昨夜烏養さんから聞けなかった東京合宿の話を西谷君は勿体振らずに次々と喋ってくれて、わくわくしながら耳を傾け相槌を打つ。烏野が一度も勝てなかった音駒の他に、全国で5本の指に入るエース、全員が凄いサーブを打つチーム、多彩なコンビネーションを披露するところもあったらしい。うわぁ、何それ、いいなぁ!見たかったなぁ!一体どんなプレーだったんだろう、練習試合だと、烏養さんとか清子さんも流石に録画とかしてないのかな?
東京合宿のお宝情報満載の話にうんうんと楽しく相槌を打っていれば、今まで勢いよく話していた西谷君の口がいきなりぴたりと止まった。一瞬、担任の先生が来たのかと思って教室の前を見るも、先生の姿はまだ無いようで教室内はクラスメイト達の雑談で明るく賑わっていた。
「────今のままじゃ、駄目だと思った。」
「!」
それでも、西谷君の発した言葉に教室のざわめきが瞬間的に遠のく。いつもの明るい声と違い、少し固い低い声で零された言葉に思わず目を丸くしてしまえば、西谷君は視線を下に向けて静かに話を続けた。
「武ちゃんがさ、言ってたんだ。あの合宿の中で、俺達が一番弱いって」
「ッ、はぁ!?何それ!?」
先程までの楽しい話から一転、思いもよらない展開に反射的に大きな声が出た。突然飛び出した私の文句に教室内の視線が一時的に集まるが、私は一切気にしないで西谷君に詰め寄る。
「そんな事無いし!烏野強いじゃん!弱くなんか無いよ!絶対違う!」
「あー、悪い広瀬。今のは別に悪口じゃなくて、何ていうか、こう、キャッカンテキニ?見て、そうだって話でさ」
「でも、そんなのさぁ!」
「だからこそ、伸びしろがあるんだって。ただの“敵”じゃなくて、ソイツらの技を吸収して、ソイツらを“師”と見て強くなれって言われた」
「!」
まるで「烏野が弱い」という事を全面的に認めているように聞こえて、そんな訳あるか!と憤慨していた私に、西谷君は至極落ち着いた口調でそんな言葉を寄越した。そのままこちらを真っ直ぐに射るような強い目で見つめられれば、私の拙い怒りなんてあっという間に鎮火されてしまう。
「……それで、俺ら全員オッシャーやってやる!ってなったんだけどよ」
「……それなら、まぁ、うん……」
「日向と影山が、昨日ど突き合いになって」
「…………ん?」
怒りで少し上がっていた頭の中の温度が少しずつ正常値まで戻っていく最中、西谷君からさらりと言われた内容が上手く理解出来なくて、堪らず聞き返してしまった。……ヒナちゃんと影山君が、何だって?
「喧嘩はちゃんと龍が殴って止めたんだけどな。日向のヤツ、変人速攻の時に目ぇ閉じたくないって言い出して……」
「ちょ、ちょっと待って、ちょっと待って!?」
「ん?」
「え、え?……ヒナちゃんと影山君が、喧嘩?」
「おう」
「……そ、その、理由が……変人速攻の時、ヒナちゃんが目を閉じたくないから、って……?」
「おう」
「…………」
西谷君と視線を重ねたまま、衝撃のあまり言葉を失くす。だ、だって、土曜日に送り出した時は全然そんな風に見えなかった……いや、口喧嘩はしてたけど、あれはもう戯れてるだけというか、そんな本気の喧嘩じゃないって思っていたのに。しかも、日を跨ぐ程の大きな喧嘩だなんて。
楽しい東京合宿の話を聞くはずが、予想に反して酷く不安を掻き立てるものに発展してしまった。もしかして、昨日烏養さんがとても疲れていたのは、二人の喧嘩の事も関係していたのかもしれない。とりあえず、もう少し詳しく話を聞こうとした私だったが、担任の先生が教室に来た事により強制終了されてしまうのだった。
▷▶▷
半日待ち侘びたお昼休みに、男バレ二年生5人とウタちゃんと私で三組の教室に集まり、一緒にお昼ご飯を食べながら先程の話の詳細を聞いていた。男バレにあまり興味の無いウタちゃんは途中で抜けてしまったものの、今はどうしてもその話が気になり、彼等の話をお昼休みいっぱい使って聞かせてもらっていた。
「んで、昨日は途中から日向と成田が交代して、その後日向は出なかったな。コーチが言うには、新しい速攻やるとなりゃ“打たされてる”感覚捨てないとダメだろって」
一組の田中君の話に、色んな衝撃が走る。ヒナちゃん、頑張って補修受けたのに、途中から出られなかったんだ……。ヒナちゃんは確かミドルブロッカーってポジションだから、交代する時は基本的に同じポジションの人になる訳で……
「…………思う所は、沢山あるけど…………成田君のバレー、見たかった……」
「え」
食べ終えたお弁当を片づけ、ぐるぐると思考を回しながらぽろりと溢れた言葉に成田君がきょとんと目を丸くした。「だって成田君、背ぇ高いからツキシマ君とか東峰先輩とかと三枚ブロックしたらもう鉄壁じゃん。最強じゃん」と羨みながらそう言えば、成田君は形の良い坊主頭を掻きながらふいと視線を逸らしてしまった。
「ちなみに縁下も木下も山口も出たぞ」
「えー!?何それ烏野フルコースじゃん!ずるい!見たい!そもそも何で東京でやるの?宮城でやればいいじゃん!」
「残念だけど、俺らは参加させてもらってる立場だから……」
ニヤニヤと楽しそうに笑う田中君の言葉に堪らず文句を返してしまうと、縁下君が苦笑しながら私を宥めに掛かった。でも、そうは言っても見たいものは見たい。でも、東京まで見に行くには時間もお金も掛かり過ぎる。というかまず、帰宅部がバレー部の遠征合宿を見に行くなんて多分前例の無い事態だろう。だから、今回は仕方無い。現実、何事もそう上手くはいかないものである……なんて、そんな所まで考えて、ふと疑問に感じた点を男バレ二年生5人に尋ねた。
「……あの、さ?ヒナちゃんのその“目を開ける”っていうのは、やっぱり難しいの?こう、スパイクのコースの打ち分け?見極め?が出来るようになったら、めちゃめちゃ攻撃力上がるじゃんって私は思うんだけど……」
私の質問に、5人の表情は一気に渋いものになる。その変わりように、ああやっぱり難しい事なんだなぁと説明を聞くより先に悟ってしまえば、縁下君が小さくため息を吐いてからゆっくりと口を開いた。
「……おそらく、かなり難しいと思う。根本的にあの速攻は、影山によるピンポイントのセットアップが成してる技から、目を開けてる日向の“ほんの少しのズレ”がきっと“致命的なズレ”になる」
「…………」
「……日向が腕を振るタイミングとか、ジャンプの高さとか、全部計算して影山はトスを上げてるから……それ通りに日向が動かなくなると、変人速攻はまるっと機能しなくなると思うよ」
「……そんなぁ……」
縁下君に続いて成田君も説明してくれて、その分かりやすくも厳しい内容に堪らず情けない声が漏れた。隠しもせず、目に見えて落胆する私に追い打ちを掛けるように田中君と木下君が厳しい現実を突き付けてくる。
「つーか、新しい速攻を練習する時間が殆ど無ぇんだよ。春高の一次予選、来月だしなァ」
「あ……そ、っか……」
「日向の気持ちもよく分かるけど……今回は時期的にもう、影山に賛同せざる得ないっていうか……」
「……三年生……最後だもんね……」
二人の言葉に頷きつつも、やっぱり何処か煮え切らなくてただただ肩を落としてしまう。……あの超速攻は凄い。初めて見た時は本当にびっくりしたし、何これ最強じゃん!って思った。でも、攻略された。あの時、ヒナちゃんは目を閉じてたから、三枚ブロックに捕まっている事に気付かなかった。
……もしあの時、ヒナちゃんが目を開けていたら。スパイクのコースの打ち分けが出来たら。ツキシマ君みたいにフェイントしたり、東峰先輩みたいにブロックアウトにしたり、また別の事が出来たかもしれない。
……でも、あの速攻はコンマ一秒でもタイミングがズレれば、崩壊する。まさに諸刃の剣のようなもので、攻撃力が高い分リスクも大きいように思える。だから、影山君はヒナちゃんを止めてるんだ。今の烏野の中でも攻撃力の高い武器を、大事な大会前に手放したくないから。影山君の考えは、確かに最もだ。
「……でも、本当に日向がソレ出来たらマジで最強だろ……あー!何か良い手無ぇかな……!」
ガシガシと乱暴に頭を掻く西谷君の悔しそうな言葉に、何かを提案できる人は私を含めて誰も居なかった。
▷▶▷
「おはようございます!烏養さんごめんなさい、ちょっとホームルーム長引いちゃ、って…………ヒナちゃん!やだ、怪我してる!痛い?大丈夫?」
放課後になり、少し伸びたホームルームの後慌ててバイト先である坂ノ下商店へ行くと、店主の烏養さんと制服姿のヒナちゃんが店内で向かい合っている姿が見えた。体育館の点検とやらで今日は部活が無い事は西谷君達から聞いていた為此処に居る事には驚かなかったが、ヒナちゃんの口元には痛々しい絆創膏が貼ってありそちらに酷く動揺してしまった。
「……キト先輩、ちわっす!大丈夫です!」
「…………!」
思わず駆け寄ってヒナちゃんの顔を見ると、ヒナちゃんは一瞬顔を伏せてから直ぐにニコリといつものように笑った。その顔を見て、途端に頭が冷える。……ああ、心配させまいと無理して笑ってる。そんな顔をさせたくて、声を掛けた訳じゃないのに。
「……キト。来て早々悪いが日向連れてちょっと出てくる。引き継ぎは日誌に書いたが、分かんなかったら連絡くれ」
「……はい、分かりました。直ぐ着替えてきます」
無理して笑うヒナちゃんに言いようのないショックを受けて、固まりそうになっていた私を、烏養さんがフォローしてくれた。……そうだ、ここで私が狼狽えてどうする。心の中で自分を叱咤して、ヒナちゃんに笑い返してから店の奥で制服を着替え、髪を一つに結ぶ。身支度を整えてから再びお店に出ると、烏養さんはどうやら車を出すようで店内にはヒナちゃんと私だけになっていた。
「……今日も暑いね。東京も暑かった?」
「……はい。暑かったです」
「西谷君達に聞いたよ。合宿、音駒以外にも超凄くて超強いチームといっぱい試合したって」
「……はい。音駒と、梟谷と、生川と、森然っていう高校でした」
「私も見たかったな~。なんか、あれでしょ?全国で5本の指に入るエースが居たって。やっぱ東京凄いよね~。本当に見たかった!でも、行くにはちょっと遠いんだよな~」
いつも通りのようで、やっぱり全然違うヒナちゃんと他愛も無い会話をしながら、烏養さんの車を待つ。私の話にヒナちゃんは笑ってくれるけど、その笑顔は何処か苦しそうで、見ていてとても悲しかった。……影山君との喧嘩は、私が思ってるよりずっと大きな影響があるようだ。あの超速攻は、ヒナちゃんと影山君にしか出来ないもので、二人の意志が完全に揃わないときっと威力を発揮しない。でも、今はそれがブレ始めてしまった。どちらが悪いとかじゃなくて、二人とも、今よりもっと強くなりたくて、もっともっと、烏が高く、飛ぶ為の……
「…………ああ、もう!ヒナちゃん、ちょっと待ってて!」
「え?」
ぐるぐると考えていたものがボカンと一度爆発して、私は店内にある商品……スポーツ飲料とおにぎり、ぐんぐんバーを手に取って光の速さでお会計をし、袋詰めしてからヒナちゃんに差し出す。
「はいコレあげる!受け取って!」
「え、え?キト先輩?」
「ヒナちゃん!いいから受け取る!」
「ハ、ハイッ!」
突然の私の奇行に当然ヒナちゃんは驚いて、ぽかんとした顔を向けてきた。だけど私の圧に押されて、殆ど反射的に袋を受け取る。たじろぐヒナちゃんを見て、ちょっと可哀想だとも思ったけど……帰宅部の私が彼に出来る事なんて、精々このくらいしかないのだ。
「…………ヒナちゃん、凄く悩んでるのに、力になれなくてごめんね……」
「!!」
橙色の大きな目をパチクリと瞬かせるヒナちゃんに、我ながら心底情けないと思いながら自分の力量不足を詫びる。出来るものなら、気の利いた事を言ったり、励ましたり、何か手助け出来るような事をしたい。悩んでるヒナちゃんの力になってあげたい。
……でも、この状況で、必死に努力した事も無い私が、一体どんな言葉を掛けていいのか……どんなに考えても、一向に答えが出ないのだ。
────だから。
「……だけど、ごめん。知らない振りするのも、嫌で……だから、その、コレ貰って!」
「…………」
「……あの、私、ゴールデンウィークの、ヒナちゃんのバレー見て、バレー面白いなって思ったの。沢山動いて、いつも本気で、全力で、格好良くて……私も頑張らなきゃってなるし、あんな風になれたらって、いつも思うよ」
「────」
だから、せめて、ヒナちゃんのバレーが好きだって事は伝えたい。影山君との変人速攻だけじゃなくて、ひたむきで、真っ直ぐなヒナちゃんのバレーの全てが好きだから。
部外者の私には応援する事しか出来ないけど、でも、本当に、心の底から応援してるんだ。
「日向ァ、行くぞー」
「!」
ガラリとお店の引き戸が開き、烏養さんがヒナちゃんを呼ぶ。どうやら車の準備が出来たらしい。烏養さんはひと声かけると直ぐにまた外へ出て行ってしまった。もしかしたら急いでいるのかもしれない。
「じゃあ、またね、ヒナちゃん。行ってらっしゃ……」
「キト先輩」
烏養さんが声を挟んだことで少し冷静になると、ちょっと熱くなりすぎたかもと今更ながら羞恥心が出て来て、誤魔化すように笑いながらお見送りしようとすれば名前を呼ばれた。そろそろと視線を寄越すと、ヒナちゃんはまるで掬い取るようにして私と視線を重ね……今度こそ、ちゃんとした笑顔でニッコリと笑う。
「ありがとうございます!行ってきます!」
「!」
「うん、行ってらっしゃい!」
上昇気流の一部になれたら
(私は何も出来ないけど、君のバレーが大好きなんだ。)