Crows to you
name change
デフォルト:広瀬季都【ひろせ きと】烏野高校二年三組の帰宅部。嶋田マートをメインにヘルプ要員で色んなバイトをしている為、商店街に顔が広い。
最近の悩み:「バイト入れ過ぎて“友達居ないの?”ってよく聞かれるけど沢山居ますから!!」
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
タイムカードを押し、商品の在庫確認を始めた所で名前を呼ばれた。
「季都ちゃん!待ってたよ!」
「うわ、テンション高っ......おはようございます」
在庫管理に必須の機器であるPOT片手に振り向けば、それはもうこれ以上ないってくらいの笑顔を浮かべた嶋田さんが素早く駆け寄ってきた。黒縁眼鏡の奥の瞳がきらきらと輝いている。
「おはよ!昨日の烏野ボーイズとの試合、もうめちゃめちゃ凄かったんだから!」
「へぇー、めちゃめちゃ凄かったんですか」
「“俺が居ればお前は最強だ!“とか“トスを呼んでくれ!エース!“とか名言出まくりで!あー、高校生いいなー!俺も戻りてー!ってなってさぁ!」
昨日の話だというのに嶋田さんは興奮冷めやらずという感じで、心底楽しそうに烏野男バレの話を続ける。
一年生二人の速攻が規格外に凄まじかったこと、特に一年生セッターの天才振りに圧倒されたこと、覇気にかけるがいいブロックをする眼鏡君がいたこと、その眼鏡君を補うかのごとく覇気に満ち溢れた力強いスパイカーの坊主君がいたこと(これはきっと1組の田中君だ)、リベロが正確で技術が高かったこと(西谷君のことだ)、キャプテンのレシーブの安定感が素晴らしかったこと、丁寧で打ちやすいトスを上げる三年生セッターがいたこと。
私はまた、男バレ部員の西谷君の知らないところで男バレ情報を知ってしまったようだ。
「それで、なんか色々諸事情があったらしいんだけど、昨日から復帰したエースのロン毛の兄ちゃんがまたいいスパイク打つんだな!完璧にパワータイプなんだけど、どこか繊細と言うか、こう、ドパーンと綺麗に打つんだよ!」
ボールを打つジェスチャーを交えながら話す嶋田さんは、歳上の人だけどなんだか少年のように見えた。
西谷君といい嶋田さんといい、バレー男子は本当にきらきらしてるなぁ。
「あと、マネージャーの子めちゃめちゃ美人だった」
「ですよね、美しいですよね」
ここでやっとわかる話題になったので相槌以外の返答をすれば、嶋田さんは満足そうに大きく息を吐く。
「今の烏野めちゃめちゃいいよ、本当に。まだまだちぐはぐな所は多いし危なかっしいとこばっかだけど、纏まれば絶対いいとこ行くと思う」
「わあ、好評価」
「いやぁ、昨日行けてよかった!本当ありがとう!季都ちゃんのおかげでめちゃめちゃ楽しかったよ!調子乗ってジャンプフローターサーブなんか打っちゃったし......」
「別に、私バイト好きですし。お礼なんていいですよ......ああ、そうそう」
楽しそうに話す嶋田さんの勢いにうっかり忘れかけてしまったが、ジャンプなんちゃらサーブという単語が出てきたことにより西谷君の言伝を思い出すことが出来た。
「同じクラスの西谷君......えっと、リベロ?の男子が、また来てくださいって言ってました。嶋田さんのそのサーブ、受けたいって」
「リベロ......ああ、あの髪の毛ツンツンしてる子か。あの子ちっさいけどレベル高いよな~。こっちのチーム入ってもらったんだけど、何度助けられたことか。ブロックフォローとか本当痺れたよ」
「ああ、なんか、めちゃめちゃ特訓したって聞きました」
本人からではなくて、ママさんバレーのマダムからだけど。
私の言葉に嶋田さんは腕を組みながらうんうんと大きく頷いた。
「だよなぁ。あんな神業、一朝一夕で出来るもんじゃないべ。鬼のように練習しても、その1回出来るか出来ないかだ」
「はぁ~、そうなんですね......」
ブロックフォローというものを実際に見たことがないので何となくのイメージしかないが、バレーをやってる大人がそう言うのだからきっと凄く技術のいることなのだろう。
私はバレーに関してにわか知識しかないが、同じクラスでよく喋る友達が大人に褒められるというのは何となく嬉しいというか、誇らしく思ってしまう。
「まあ、ぜひともまた練習覗き行きたいし、試合とかあったら応援兼ねて見に行きたいと思ってるから、リベロの子にはそうお伝えください」
「はーい、かしこまりましたー。その時も私バイト入るんで、宜しく御願いしまーす」
了解の返事と共にちゃっかりシフト増やしてねのお願いをすれば、嶋田さんは少しだけ目を丸くした後眼鏡をかけ直しながら長いため息を吐いた。
「はー......季都ちゃん本当、天使かよ......」
「人間でーす」
「............なぁ、季都ちゃん」
いつも通りのよくわからない冗談を口走る嶋田さんに笑いながらいつもの答えを返し、さてそろそろ仕事しようかなと棚に向き直れば、なぜか少しだけ落とした声で名前を呼ばれた。
一瞬にして様子が変わった嶋田さんに驚き、戸惑いつつも再びそちらへ顔を向ける。
「......これはあくまで俺個人の相談であって、決定権は季都ちゃんにあるから、別に断ってくれても一向に構わないんだけど......」
「え......なんですか、それ......」
先程の嬉々とした態度とは一変し、真剣な様子で紡がれる言葉に思わず一歩後ずさる。
完全に気圧されてる私を真っ直ぐ見ながら、嶋田さんはゆっくりと相談事を打ち明けた。
風が吹けば桶屋が儲かる
(烏が飛べば、何になる?)