Crows to you
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デフォルト:広瀬季都【ひろせ きと】烏野高校二年三組の帰宅部。嶋田マートをメインにヘルプ要員で色んなバイトをしている為、商店街に顔が広い。
最近の悩み:「バイト入れ過ぎて“友達居ないの?”ってよく聞かれるけど沢山居ますから!!」
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「西谷君、なんか今日機嫌良い?」
帰りのホームルーム、配られたプリントを前の席の西谷君から受け取る際、つい尋ねてしまった。
「お、わかるかー?わかっちまうかー!」
「うん、だって今日1回も寝てない」
「なるほどな、名推理だぜ広瀬」
大体私と同じくらいの背丈である西谷君は、人懐こい猫みたいな笑顔を浮かべて私の方へ身体の向きを固定する。
「昨日久々に部活で試合してな~」
「それ、相手町内会の人だったでしょ」
「おう、なんで知ってんだ?」
「嶋田マートの人から聞いた」
配られたプリントには目は向けず、担任の話もBGMにしながら西谷君と話を続ける。
私の言葉に西谷君は大きい目をさらに大きくしたが、思い当たる節があったようでぱっと顔を明るくした。
「嶋田......ああ、あのジャンプフローターサーブの人か!あれすげーよな!着地点がこう、ギュンッ!て変わってよ!あれ、俺もめちゃめちゃ受けたかったんだけど、時間なくって出来なかったんだよな~」
「ふーん?そなんだ?残念だったね?」
「広瀬の知り合いならまた来てくださいって声かけといてくれよ!」
「うん、いいよー」
相変わらず高めのテンションで喋る西谷君の話は半分くらいわからないが、心底楽しそうに話す彼の様子は見ていてこちらも楽しくなる。
西谷君は背丈は無いけど、髪の毛立ててるし髪色独特だし、つり目だしで見た目少し怖い印象を受ける。
だけど実際話してみると「よく喋りよく笑う、漢気熱い兄さん」だということがよくわかる。
以前学校の花瓶を割ったとか教頭先生を突き飛ばしたとかで少し前まで謹慎処分と部活参加禁止になってたが、それは西谷君のこの熱い性格故に生じてしまった事件であり、そして彼が愛するバレーが原因ということもあり、私も周りも西谷君に対する態度は変わらず非常にフランクだった。
「話が逸れちまったが、ずっと休んでたエースがやっとふっ切れてくれてさ!今日からまた復活すんだ!しかも一年共がまた面白いヤツらばっかで、あとコーチも着いたし!」
「ああ、烏養さんでしょ?坂ノ下商店の」
「なんで知ってんだよ!?」
「だから嶋田マート経由だって」
大きく驚く西谷君にたまらずふきだしてしまい、貰ったプリントで口許を隠しながらくすくす笑う。
ご機嫌な西谷君に水をさしてないかちらっと頭を過ぎったが、前に居る彼の表情を見る限り大丈夫そうだったので存分に笑わせてもらった。
「......でも、よかったね。エースの復活、ずっと待ってたもんね」
「え、......あー、まぁ、な」
楽しい気分のまま話を続ければ、西谷君は途端に歯切れが悪くなった。
若干挙動不審になる彼を見て、予想外の反応に思わず首を傾げる。
「あれ?違った?西谷君、エースの愚痴めちゃめちゃ言ってた割にママさんバレーでブロックフォロー?ずっと特訓してたって聞いたから、てっきりそのエースの為だって......」
「ちょっと待てなんでそんなことまで知ってんだ!?」
「嶋田マートお得意様のマダム達からお聞きしました」
「また嶋田マートか......」
にこにこと笑う私とは対照的に、西谷君は口角をひくりと引き攣らせる。
地元の噂の巣窟であるマダム達と仲良くなると、それはそれはとても沢山の情報が耳に入ってくる。
悪用する気は更々ないが、こうやってびっくりされるのは少し面白い。
西谷君と話している内に帰りのホームルームは終わりを迎え、担任の締めの挨拶と共にみんな各々に動き始めた。
「じゃ、また明日な!」
嬉々とした様子で素早く席を立つ西谷君に「部活頑張ってね」と伝えようとしたが、彼の場合もう既にめいっぱい頑張っているのを知っているので少し言葉を考えた。
「部活、楽しんできて」
自然と出てきた言葉に、我ながら感心する。
これはなかなか的を得た言葉を掛けられたのではと思っていると、西谷君から眩しいくらいの笑顔を向けられた。
「おう!!」
君が笑ってくれるから
(いつもより少しだけ、はしゃいじゃうんだ)