Crows to you
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デフォルト:広瀬季都【ひろせ きと】烏野高校二年三組の帰宅部。嶋田マートをメインにヘルプ要員で色んなバイトをしている為、商店街に顔が広い。
最近の悩み:「バイト入れ過ぎて“友達居ないの?”ってよく聞かれるけど沢山居ますから!!」
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ヒナちゃんと別れて教室へ戻ると、ウタちゃんは空いている西谷君の席に座り先にお昼ご飯を食べていた。
遅くなったことを詫びてから私も自分の席へ着き、お弁当を広げる。
「さっきの誰?一年生?」
「うん、男バレ一年の日向君。昨日男バレの練習試合見に行ったんだけど、覚えててくれたみたいで」
私の返答にウタちゃんは「ふーん」と相槌を打ちながら形のいい唇をニヤリと釣り上げた。
「やっぱりキト、試合見に行ったんだ?西谷はどうだった?格好良かった?」
「......先に言っておくけどねウタさん、私にその話させると長いよ?」
明らかに私をからかう意思があるウタちゃんに一先ず先手を打ったものの、彼女の方が一枚上手だったようで「いいよ、昼休み全部使って?」と攻撃の手を緩めなかった。
私がウタちゃんに口で勝てたことは一度もないんだけど、やっぱりちょっと悔しい。
「......東京の音駒高校との試合をね、烏野総合運動公園ってとこで見てきたんだけど......」
「え、東京?なに、わざわざこっち来てくれたの?」
「うん。向こうは遠征合宿中だったんだって」
お昼ご飯を食べつつゆるゆると昨日の男バレの練習試合の話を続ける。
烏野は音駒に勝てなかったが、バレーボールの試合が予想以上に凄く面白かったこと、ヒナちゃん達の超速攻がとんでもなかったこと、三年生の中にどう見ても社会人にしか見えない人が居たこと、音駒のコートになかなかボールが落ちず、また攻撃が多彩で目が追い付かなかったこと、そして勿論西谷君がとても格好良かったことも沢山話した。
「とにかくね、すっごく楽しかったんだよ。今度ウタちゃんも一緒に行こうよ」
「ん~、検討しておく」
私の言葉にウタちゃんは紙パックのアップルティーを飲みながらそんなつれない返事を返した。
私のプレゼンではあのドキドキ感とかワクワク感とかが上手く伝えられないなぁと自分のトークスキルにやきもきしていると、「......で、好きになったの?」と確認を取るようにウタちゃんに訊かれる。
ニヤニヤと笑うウタちゃんは本当に意地悪だ。
だったらこっちだって考えくらいあるぞ。
「......うん、好きになったよ、バレーボール!」
ウタちゃんの意地悪な問い掛けににっこり笑いながらそう答えると、ウタちゃんもなぜか笑い返してくれ、その後すぐに私の後ろへと目線を向けた。
「......だってさ。よかったじゃん」
「えっ」
明らかに私ではない誰かに話しかけている口振りに、慌てて後ろを振り返る。
視線の先には男バレの西谷君と田中君、そして黒髪の知らない男子が肩を並べてこちらを見ていた。
その顔は揃いも揃ってびっくりしたものだ。
うわ、これ、やられた!!
「ちょっとウタちゃん!!なんで教えてくれないの!?」
「え?私も今気が付いて?」
「絶対うそ!絶対うそ!!やだもういつから!?」
「なんか、速攻がどうのこうの辺り?」
「結構前!!ていうかウタちゃん確信犯じゃん!!ひどい!!」
「だってキト、楽しそうに話してるから言いづらくて......」
「絶対うそ!絶対うそ!!」
男バレが居る前でめちゃめちゃ男バレの話をしてしまった恥ずかしさから頭が混乱し、私を嵌めたウタちゃんに文句を言うも効果はいまひとつのようだ。
羞恥心でどうにかなりそうになっていれば、後ろから誰かに肩を叩かれた。
ぎくりと身体を強ばらせながらもゆっくり振り向くと、そこにはなぜか涙ぐんだ田中君が居た。
「......広瀬お前......めちゃめちゃいい奴じゃねぇか......!」
「え、え?なに?なんで泣いてるの?」
「俺は感動した!お前がそんな真剣に俺らの試合を観てくれたなんて......ありがとなァ!」
「お、おー......?」
男泣きという言葉がしっくりくる泣きっぷりを見せる田中君にあたふたしつつ西谷君と黒髪の男子を見れば、二人は苦笑に近い笑いを浮かべる。
「おい、田中。広瀬さん困ってるから泣くのはやめとけ」
黒髪の男子がやんわりと田中君にそう伝え、私へ視線を戻すと優しく笑った。
「4組の縁下です。西谷達と一緒でバレー部なんだけど、いきなりなんかすみません」
「え、あ、広瀬です。私こそなんか変な事言っててすみません......」
よくわからない状況の中でも至極落ち着いた挨拶をされ、思わずこちらもつられてぺこりと頭を下げる。
そうか、この人......縁下君も男バレの人だったのか。昨日の試合だけじゃ覚えきれなかったな。
「広瀬さんと昨日の試合の話がしたいって西谷と田中が言って聞かなくて、ストッパーで俺もついて来たんだけど......なんか、実際色々聞くと照れるもんだね......」
「いや、あの、本当、失礼しました......!」
「あれ?キト、話すと長いんじゃなかったっけ?昼休みまだ時間あるけど?」
「ウタちゃんちょっと黙ってて!」
縁下君の言葉にいたたまれなくなっていると、元凶のウタちゃんは相変わらずニヤニヤと笑いながら煽ってきた。
他人事だと思って完全に楽しんでるな......!
「ごめんね、盗み聞きするつもりはなかったんだけど......ちょっと気になっちゃって」
「え、あ、いや、これはウタちゃんが悪いので!縁下君達は全然!」
「えー?声かけなかった時点で男バレも悪くない?」
「ウタちゃんは黙ってて!!」
いちいち茶々を入れてくるウタちゃんに腹を立てていると、男バレ三人は可笑しそうにふきだした。
私はちっとも楽しくないのでかなり複雑な心境だ。
眉を下げながら椅子に座りなおすと「あ。西谷の席借りてるよ」とウタちゃんが今更ながらも断りを入れていた。
そんなウタちゃんにまた笑いながらも、西谷君は近くのクラスメイトの席へ腰を下ろす。
「今日一緒に飯食おうぜ!で、次は歌津も見に来いよ!」
「ん~、検討しておく」
「前向きにな!前向きに!」
「西谷、無理強いはすんなって......」
「大丈夫、私がいつかウタちゃん連れてくから!」
「そんな、広瀬さんまで......」
「けどよ、やっぱ女子が来てくれるのっていいよな......次はぜひ“田中君頑張ってー♡”とかの応援ヨロシク!」
「おお、それいいな!俺も“きゃー♡西谷君ナイスレシーブ!”とか言われたい!」
「え、えぇー......?うーん、咄嗟に出るかなぁ......」
「じゃあ、失敗したら大声で野次飛ばしてあげる」
「「え゛っ」」
「選手側から声援強請ってどうするよ......」
「ウタさん、流石にそれはやめて差し上げて......」
ウタちゃんの言葉に西谷君と田中君は顔をひきつらせて固まっている。
縁下君はそのやりとりに呆れた顔を見せ、そのまま近くの席に腰を下ろした。
男バレ二人が座ると田中君も適当な所へ座り、各自お昼ご飯を食べながらバレーボールの話で盛り上がる。
バレーにまだ馴染みのないウタちゃんは大丈夫かなとちょこちょこ様子を窺ったものの、同い歳だけど精神的にずっと大人なウタちゃんは男バレ三人と上手い具合に話してくれていた。
臆することなく誰とでもさらりと会話出来てしまう彼女のこういう所が本当にすごいと思う。
「......で、キトは誰が一番格好良かったんだっけ?」
「「えッ!?」」
「ちょっと!?誰が一番とかそんな話してなくない!?みんな格好良かったよ!!」
訂正。ウタちゃんのこういう所が本当に腹立たしく思います!!
烏野高校二年生の日常
(ウタちゃんの本名は歌津恵理です。)