Crows to you
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デフォルト:広瀬季都【ひろせ きと】烏野高校二年三組の帰宅部。嶋田マートをメインにヘルプ要員で色んなバイトをしている為、商店街に顔が広い。
最近の悩み:「バイト入れ過ぎて“友達居ないの?”ってよく聞かれるけど沢山居ますから!!」
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「えっ、ホントにネコ来てんの?」
「ホントホント!ちょっと見て行こうぜ!」
「ちょっとな、俺これから配達だからな」
駆け足で階段を降りると、聞き馴染みのある声が聞こえてそちらへ顔を向ける。
確認すると、予想通りの相手である滝さんと嶋田さんだった。
「おはようございます!」
「オース、ちゃんと来たな~偉いぞ~」
「おはよー季都ちゃん、たっつぁんに付き合ってもらってごめんなぁ」
「それは全然なんですけど、嶋田さんもしかして仕事中です?」
「そ。そして拉致られた」
「人聞きの悪いこと言うなよ!だってネコだぞネコ!嶋田も見たいっつってたべや!」
嶋田マートのエプロンを付けたままの嶋田さんに思わず質問してしまうと、滝さんと嶋田さんの言い合いが始まってしまった。
仲がいいんだか悪いんだかな二人に苦笑していると、早々に折れた滝さんが私へ話題を移す。
「キトは先に中に居たのか?音駒見た?」
「あ、えーと......す、少しだけ......」
「どう?でかいヤツ居た?あとイケメン」
「なんか......赤かったです」
「まさかのユニフォームw」
滝さんの言葉にしどろもどろになりつつ答えれば、嶋田さんは可笑しそうにふきだした。
いや、でも、だって、あのプリン頭の人と目が合ったせいであまり長々見ることが出来なかったのだ。
イケメンが居たのかどうかもよくわからなかった。
「ま、今日はあの“ゴミ捨て場の決戦”の復活だからな。音駒も烏野もしっかり観てやる」
「でも、まさかこの歳で観ることになるとはなぁ......烏養のヤツに感謝だな」
「それもそうだが、試合取り付けたのは顧問の先生みたいだぞ?えーと、なんつったっけか?あの眼鏡の、人の良さそうな......」
「え、俺?」
「嶋田じゃねーよw」
「武田先生ですね。今年からの新任です」
「へぇ、そりゃすげーや。いい顧問に恵まれたなぁ」
嶋田さんの言葉にうんうんと滝さんが深く頷く。
事情はよくわからないが、二人の様子からおそらく他校に試合を取り付けるということは非常に手のかかることなのだろうということを何となく理解した。
スポーツというものは競技をやる選手だけではなく、烏養さんみたいな指導者とか、武田先生みたいなマネージャーとか、もちろんあの美人マネージャーの先輩とかも、色々な人が関わって成り立つものなんだなぁ。
改めてその大きさと大変さを考えて、たまらず小さく息を吐いた。
「じゃあ、そろそろ入るか」
滝さんの一言で、のろのろと球技場の方へ再び足を向ける。
先程利用した自販機を通り過ぎ、観音開きの大きな扉を先頭の滝さんが開ける。
一際大きくなるボールを打つ音、掛け声に二度目だと言うのに少し肩を竦ませる。
滝さん、嶋田さん、私の順に中へ入り、一番後ろの私が扉を閉め、二人の後に付いていこうと振り返った矢先、まさかの最前列まで階段を降りようとしていたので思わず驚きの声が出た。
「ちょ、え!?い、一番前まで行かなくても!」
「いいじゃんいいじゃん、誰も居ないんだし。スポーツ観戦は最前列に限るぜ?」
「何?季都ちゃんもしかして恥ずかしいとか?どーせすぐバレるぞ~」
「いや、でも、だからって......!」
どんどん階段を降りていく大人二人は私の言葉なんか聞く耳を持たず、ついに最前列を陣取ってしまった。
しかもわざわざ一つ席を空けて座り、私に真ん中へ座るよう指示してくる。
やだよ、余計目立つじゃんか!
「あれ?もしかして広瀬?」
「!!」
なかなか踏ん切りがつかず足踏みしていると、コートの方から名前を呼ばれて思わず肩がビクついた。
そろりとアリーナを窺うと、明るいオレンジ色のユニフォームを着た西谷君が目を丸くしてこちらを見ている。
「え、なんでここに居んだ?」
「え、あ、えーと......」
西谷君が声を掛けてきたと同時に烏野男バレの何人かがなんだなんだとこちらを見てくる。
次々と集まってくる視線に羞恥心と焦りと緊張がどんどん高まり、知らず知らずのうちに後退りしてしまうと、後ろの扉がひとりでに開いた。
「おー、やってるやってる」
驚いて後ろを振り向くと、見知った顔が扉から現れる。
「あ?なんだ、季都ちゃんじゃねぇか。おはよーさん」
「え、あ、おはようございます......」
「あ~、大野屋さんこっちっス~」
「オース」
現れたのは烏野商店街のおじ様方で、私に軽く挨拶してから滝さん達の方へのんびりと歩いていく。
「たっつぁんほかにも声かけてたのかよ」
「だって久々の“ゴミ捨て場の決戦”だからな!も少し人集まると思うぜ」
「皆仕事しろよ、俺もだけど」
「息子の運動会見るみたいなモンだから良いんだよ!」
「.............」
あ然とする私を他所に、滝さん達大人組は楽しそうに笑いながらギャラリー席最前列に座る。
「.............」
その姿を見ていたら、なんだか先程までの焦燥感とか緊張感とか居心地の悪さとかが全て吹っ飛んでしまった。
「何やってんだキト、早く来いよ」
滝さんに呼ばれて、ひとつ深呼吸してから足を動かす。
指示された座席の前に着いてから、先程よりもずっと近くなったアリーナを見下ろすと、また西谷君がこちらへ顔を向けた。
一瞬ドキリと心臓が跳ね上がるが、今度は後退りせずその場に留まる。
「......か、勝手に来てごめん!滝さん達に話聞いて、なんか気になっちゃって、来てしまいました......」
騒がしいアリーナにいる西谷君に聞こえるように大きな声を出したが、段々恥ずかしくなってきて結局尻すぼみになってしまう。
燃えてしまうのではないかと思うくらい顔が熱いので、きっと今の私は茹でタコさながら真っ赤でみっともない顔をしているに違いない。
西谷君以外の男バレの人達も目を丸くしてこちらを見ている。
「あ、あの、気が散るようならすぐ帰るので!あの、本当、すみません!」
「オイオイ、なんでキトが謝ってんだよw」
「つーか俺らが帰らせねぇからw」
「ちょ、滝さん達は黙ってて!」
必死な私を面白がって大人二人は茶々を入れてくるが、上手くいなせる程の心の余裕が今はこれっぽっちも無いため、勢いのまま怒ったらケラケラと笑われた。
全っ然笑い事じゃないんですけど!?
「広瀬!!」
「!!」
面白可笑しく笑う滝さんと嶋田さんにむかっ腹を立ててれば、ふいにアリーナから大声で名前を呼ばれて慌てて振り向いた。
「応援よろしくな!!」
「.............」
私を呼んだ西谷君は、明るい色のユニフォームにも負けないくらいの明るい笑顔でそう返してくれた。
その後すぐに烏野男バレ何人かに「西谷くんカッコイイ~!」等とからかわれていたけど、でも、確かに今の西谷君の返しはめちゃめちゃ格好良かったと思う。
西谷君の一言だけで、本当に救われた。
「さっすがリベロ......大事なところは落とさない、ってか?」
「いやぁ、今のはマジで格好良かった......男の俺でもグッときたわ」
「もしかして、季都ちゃんの彼氏かい?」
「え、マジで?付き合ってんの?早く言えよな~」
「友達です!!めちゃめちゃ感動してたのに台無しなんですけど!!」
集え!烏野男バレ応援団!
(......というより、烏野商店街の集い?)