DC 原作沿い


今日は休みの日と言われて自室でうたた寝をして時間を持て余す。

アイくんもキャンねぇもコルにぃも仕事。ベルねぇさんは海外。キーちゃんとキューちゃんは連絡先を持ってないから遊びに誘うのは難しい。志保ちゃんと明美ちゃんは今度遊び行くまで予定は合わない。

ウオくんもジンくんと一緒に居るだろうし、あと誰か居ないかなぁとぼーっとしていればノック音が響いた。

落ちてきてたまぶたに仕方なく目元を擦って立ち上がる。

扉を開ければ細身の男性がいて、首を傾げた。

『カルバドスくん?』

「…………」

むっとしてるカルバドスくんはここにいるのが大変不服そうだ。特に約束をしてた覚えもないしなぁと目を瞬いていればぎりっと歯が軋む音がした。

「お前、暇なんだろ」

『ん?うん、ひまー』

カルバドスくんはぎりぎりと歯をきしませて、目を細める。

「出かける」

『出かける?』

「…ベルモットさんが、お前の相手をしろって、言うから、仕方なく、仕方なくだ」

『ベルねぇさん?』

あんまりにも嫌そうな顔のカルバドスくんに嫌なら行かなくてもいいと思うけど、ベルねぇさんからの言葉は絶対遵守主義なのかもしれない。

嫌なことをしなきゃいけないのが社会人かと納得して、頷いた。

『一緒に出かける!』

「お、おう」

『どこ行くの?』

「あー…」

視線を彷徨わせたカルバドスくんは頭を掻いて困った顔をする。時間を見れば昼を過ぎたところで、遊びに行けても3、4時間くらいだろうか。

お腹の具合を考えて、首を傾げた。

『カルバドスくんお腹空いてる?』

「あ?普通に」

『じゃあ買い食いしにいこ!』

「あー、まぁ、それなら」

頷いたカルバドスくんに上着と帽子を取って部屋を出る。

カルバドスくんが運転してくれるらしく、デパートか観光地かと言われるから、少し考えてナビを操作した。ジンくんの真っ黒の車は目立つし、ベルねぇさんと遊びに行くときは高級レストランとかだからちょっと難しい。

アイくんはバイク移動で行けないから、行くんだったらここしかない。

『サービスエリアめぐり!』

「へぇ。いいんじゃね」

カルバドスくんがエンジンをかけた。ここから一番近く有名な大きいパーキングエリアに向かうことにして、車が動き出す。

外を眺めてぼーっとしてればカルバドスくんが機会を操作して、音楽が流れはじめた。流れてくる音は知らないものだけど、耳馴染みが良くて心地よい。

目を閉じて耳を傾ける。聞いたことはないはずだけど、すんなりと音が入ってきて、信号で車が止まったところで視線がこちらに向いた。

「知ってんのか?」

『ん?うんん、知らない』

「ハミングしてたろ?」

『あれ?ほんと?』

目を丸くしてしまった俺に、首を横に振ったカルバドスくんはまた前を見て車を動かす。

鼻歌をって言ってたけど、まったく自覚がなかった。歌えるくらい俺はこの曲をどこかで聞いたことがあったのか。

急にむず痒くなった腹に手をやって押さえて、眉根を寄せる。

『……――、』

間もなく目的地に到着いたします。

聞こえた電子音混じりの女性の声に顔を上げる。横を見れば車はサービスエリアまで後500mと看板が出ていて、カルバドスくんが車線を変更した。空いているスペースに車を止めて降りた。

『ついたー!』

「ついたな」

『カルバドスくん!美味しそうな匂いがする!あっち行こ!』

「あ、ああ」

鍵を締めて歩き出す。横長に広い建物へ沿うように並んだ露店を眺めて、目についたものを買っていく。肉巻きおにぎりにアジフライ、たこやきにメロンパンとチョココロネを買ったところでおいと声がかけられた。

「お前そんなに食うのか?」

『ん?うんん!一緒に食べる!』

「あー、そういうな…」

目を細めたカルバドスくんは俺の持つ食べ物を眺めるから首を傾げる。

『カルバドスくん他に食べたいのある??』

「特には」

『おっけー。じゃあ一回食べて足りなかったら買い足そーね』

近くにあるフードコートの席に食べ物を並べて座る。カルバドスくんも向かいに座って、近くのアジフライを取ったから俺も肉まきおにぎりを持って齧った。

『おいしい!』

甘じょっぱいタレのからまったおにぎりは目が覚めるくらい美味しい。もちもちしたお米もすごくあっていて、頬を緩めた。

『カルバドスくんカルバドスくん!!おいしいよ!!!』

「ん、あ?」

『食べて食べて!』

「お、おお、」

渡したおにぎりを仕方なさそうに受け取って口に運んだカルバドスくんは咀嚼してふーんと頷く。

「まぁうめぇんじゃねぇの」

『おいしいね!』

「お、おう、」

おにぎりをそのままカルバドスくんにあげて、たこやきに串を刺して一個食べる。とろりとした中身が思ったよりも熱くて泣きそうになりつつ、空気を含みながら飲み込んだ。

『あつい!おいしい!!』

「ったく、冷ましてから食えよ」

『ありがとー』

仕方なさそうに差し出された紙ナプキンで口元を拭う。

カルバドスくんも同じようにたこやきを取って、皿に乗せると半分に割ってから口に入れた。

今度はアジフライをかじって、カルバドスくんはたこやきをもう一つ口に入れる。しょっぱいものから食べていって、さてとメロンパンを手に取った。

オレンジ色で合間に生クリームの挟まったメロンパンを両手で持って、大きく口を開け頬張った。

『んん!ふわふわ!なにこれすごいおいしい!』

「随分テンションたけぇな…」

『これ!すごいおいしい!カルバドスくん!カルバドスくん!!食べて食べて!!』

「食ってやるから落ち着け」

口元に差し出したパンを受け取ったカルバドスくんが同じように頬張る。目を丸くして、それからうまいと零して目尻を下げた。

『おいしいね!連れてきてくれてありがとう!カルバドスくん!』

「…………おう」

一瞬目を丸くして、それからそっぽ向いたカルバドスくんはメロンパンをそのまま食べ進める。

テーブルの上のものを一通り片したところでカルバドスくんがお手洗いに立ったからその場で待つ。

揺れた携帯を確認すればベルねぇさんから楽しんでるかとメールが入っていたかれとってもと返して、ついでにお土産を渡していいかと質問をくっつけておいた。

「おい」

『ん?』

いつの間にか戻ってきたのかカルバドスくんが持っていたものを差し出してる。目を瞬いてから受け取った。

プラスチック製のカップの中に冷たい飲み物と、上にたっぷりのホイップが鎮座し、チョコレートソースがかけられたそれを目視してカルバドスくんを見据える。

「さっきの食い物、ほとんど俺が食っちまったから飲め」

『いいの?ありがとー!』

カルバドスくんがくれたのは期間限定のポスターが飾ってあったカフェのフラペチーノだろう。

ささっている少し太めのストローに口をつけ啜ればふんわりとしたいちごの甘みがして、生クリームを掬って口に運ぶと今度はチョコレートの甘さが舌に広がった。

『んんー!おいしい!』

「そーか」

『カルバドスくん!ありがとー!』

「んー」

元のとおりに向かいに腰掛けたカルバドスくんは最初の頃ほど鋭い目を向けては来ない。アイくんやコルにぃほどではないけど、なんとなく暖かさを感じる視線に、頬を緩めた。

『カルバドスくん、面倒みが良くておにいちゃんみたいだねー』

「ああ?お前みてーな甘ったれ兄弟俺にはいねぇわ」

『そうなんだー?』

フラペチーノをすすって首を傾げる。カルバドスくんは少し眉根を寄せてすぐに元に戻すと俺を見た。

「そろそろ戻んぞ。なんか他に買いてーものはねぇのか」

『もう帰るの?』

「あ?お前そろそろ門限だろ?」

『んー、そうだけどせっかく楽しかったのに…』

カルバドスくんが言うこともわかる。なんでか知らないけど、門限を過ぎるとジンくんに怒られる。一緒に居るのがベルねぇさんとアイくんの時以外は帰る時間を計算しないといけない。

携帯を見れば移動時間的に出ないと部屋につくのがぎりぎりの可能性が高い時間で、仕方なく肩を落とせばカルバドスくんは頭を掻いた。

「んな露骨にテンション落とすなよ。また来りゃいいだろ」

事無しげに言われて目を瞬く。

『…また連れてきてくれるの?』

「んだよ。いやなのか?」

『うんん、カルバドスくんがやだと思って…』

「………………」

きゅっと眉根が寄って、息を吐かれる。右手が俺の頭に乗せられてがしがしと左右に動かされた。

「別にこのぐらいまた来てやんよ。………まぁ俺がどーにも暇で、ベルモットさんからのお願いがあればだけどな」

『カルバドスくん…いい人だね』

「はっ。判定がばがばじゃねぇか」

鼻で笑ったカルバドスくんの手が離れる。おら、行くぞの声に翻った裾を掴んだ。

『ベルねぇさんにお土産買う!』

「え、ここでか??」

『うん!』

「ベルモットさんにサービスエリアでお土産ってお前なぁ…」

『ベルねぇさんにはいつもお土産買っていくからここでも選ぶの!カルバドスくんも手伝って!!』

「ええ…まじかよ…」

戸惑い混じりのカルバドスくんは仕方ねぇと諦めたみたいについてきてくれるようだから笑った。

『ありがと!うれしい!』

「……ベルモットさんのためだっつーの」

『ベルねぇさんが喜ぶもの見つけよーね!カルバドスくん!』

「…………ん」

頷いたカルバドスくんと一緒にお土産コーナーへ向かい、品物を物色する。

食べ物か日用品かで悩みまくって、最終的に選んだものを袋に入れてもらい急いで車に戻った。

『ベルねぇさん喜んでくれるかなぁ』

「さぁな」

『早く渡したいねー』

膝の上にのせてしっかりと抱える。カルバドスくんは運転のためか視線を逸らすことはないものの、適度に相槌をくれていて、行き道のときより和やかな空気が流れてた。


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