DC 原作沿い


ちょっと行ってこいがまさか一年も帰ってこれないとは思わなかった。

久々の日本は、湿度が高い国だけどマレーシアよりもあっさりしてて息がしやすい。

飛行機からおりて大きく伸びをする。

キャンねぇとコルにぃは半年前に、キューちゃんは三ヶ月早く日本に帰ったから俺は一人で、お迎えを誰かにお願いするか、もしくは一人で帰るかしないといけない。

空港を出て太陽の光に一瞬目を閉じて、そうすれば向かいの車が窓を開けた。

「わんちゃん」

『ベルねぇさん!』

後部座席に座ってるベルねぇさんに手招かれ荷物を持って駆け寄る。扉を開けてくれたから隣に座った。

「おかえりなさい」

『ただいまー!』

「ずいぶんと長い任務だったわね。お疲れ様」

『ありがとー』

ふんわりと笑ってくれたベルねぇさんが俺の頭を撫でる。久々の優しい手つきにおとなしく撫でられていればじっとりとした視線を関じて、顔を上げれば見慣れない人が運転席から俺を睨んでた。

てっきりお迎えはアイくんかジンくんが来てくれると思ってたから驚きだ。

『はじめまして?』

「…はじめまして」

苦虫を噛みつぶしたみたいな雰囲気に俺は歓迎されてないらしい。不思議でベルねぇさんを見つめれば髪を梳かれる。

「ふふ、わんちゃんがいない間に入ったメンバーよ。名前はカルバドス」

『カルバドス?』

「ええ。キャンティとコルンと一緒のスナイパー」

『そうなんだー』

「それにしても…わんちゃん。またあなた髪伸びたわね」

『んー。切るのめんどくさかった』

顔を見るためかわけられた前髪。晒されただろう額にベルねぇさんが唇を落として微笑む。

「それならまたおめかししないとだけど、今日は疲れてるでしょうし、帰ってきて早々貴方を独り占めすると一年も待ってた面々が騒ぎそうだから帰りましょうか」

出してとベルねぇさんが合図すれば車が動き出す。

ベルねぇさんはサラサラと俺の髪を撫でて、時折指先を絡めたりして遊ぶ。

「マレーシアはたのしかった?」

『うん!ベルねぇさんにいっぱいお土産買ってきたよ!』

「ふふ、ありがとう。キュラソーとは仲良くできたのかしら?」

『んー?たぶん??』

「あらあら」

キャンねぇとコルにぃが居たときはそんな気にならなかったけど、キューちゃんとは三ヶ月前まで二人で一緒にいた。最低限の会話とお世話をしてくれたキューちゃんはとってもいい人ではあったけど、仲が良かったかと言われるとちょっと微妙だ。

『あ、でもキューちゃんの作ってくれた和食おいしかった!』

「それはよかったわ」

目を細めて笑うベルねぇさんは俺の手を引いて、体制を崩させる。なされるがままに体を横たえて、頭をベルねぇさんの腿の上に乗せた。

『?』

「三ヶ月一人じゃ寂しかったんじゃない?」

『うん』

「それなら今は少し休みなさい。帰れば休むどころじゃないわ」

『んー、でももうちょっとベルねぇさんとお話したい』

「あら、とても嬉しい。私もお話したいけど、貴方、とても眠そうよ」

いつの間にか用意されたタオルケットが口元に触れるようにかけられる。落ちてきた瞼とかすみ始めた意識にベルねぇさんが身を屈めて、さっきも触れた柔らかな感触が額を掠めた。

「おやすみ、わんちゃん。起きたらまたお話しましょう」

『ん…おやすみ…』

一年ぶりの柔くて甘い香りに包まれて、目を閉じた。


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