DC 原作沿い


俺にあるのは仕事だけ。

与えられた任務をこなして、たまに与えられる褒美に力を抜いて、夢も希望もないけど絶望もない。たぶん覚えてないけれど俺は昔からこういう平凡な人間だったんだろう。

同僚に比べたら感情の起伏は少なくていきなりキレたりもしないし、遊び感覚で危険物をぶっ放したりもしない。いたずらに他人の皮をかぶって買い物に行ったりもしない、強いて言うなら善人。

今日も任務が与えられるまで暇で仕方ないから、これまた与えられた自室の中で与えられたお菓子を頬張って時間がすぎるのを待ってた。暇で仕方ないけど、俺には済ませたい予定も趣味もないから時間を持て余すしかない。

そのうち、あまりにも暇すぎてお菓子を食べていた手を止めて机に置いた腕の上に頬を乗せる。目を瞑って、意識が朧気になったところでカチャリと硬質な音が耳元に届き、頬骨に冷たく丸いものがぐりぐりと押し付けられた。

『ん〜…つめて…』

「チッ。可愛げがねぇ」

「おはようございやす」

『おはよ…なに、任務?』

外された銃口に体を起こす。見慣れたふたり組に欠伸を溢しながらぼーっと二人を眺めれば離れたばかりの銃口で額を二回突かれて、片方に頷かれた。

「よろしくお願いします」

「俺の仕事を増やすんじゃねぇぞ」

『ういーす』

ピロリンと端末から流れた短い音に携帯を取って一緒に立ち上がる。鼻を鳴らして腰よりも下まで伸びた銀髪を揺らしながら先に出ていった人影に、もう一人はご武運をと短く挨拶を残して出ていった。

一人残されてやっと時間を使える予定ができたから内容を確認するために携帯を操作する。届いていたメールは指令書で、ターゲットの名前、現職、特徴。それから俺のする仕事を読み込んで最後に顔写真を確認する。

とりあえずまずはとクローゼットを開けて、起きた時からそのままだったパジャマから私服に着替えた。


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